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ゲームもネットワークの時代へ

photo: ロイター/アフロ

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 9月、倉木麻衣がベストアルバム『ALL MY BEST』をすべてのメディアでリリースしたというニュースを読んで、ちょっとした感慨に浸った。CD以外に携帯電話向けのmicroSDメモリーカード、パソコン向けのUSBメモリ、MiniDisc(MD)、そしてカセットテープにアナログ・レコードLP盤。microSDメモリーカードにオリジナル待受画像、USBメモリにオリジナル・デスクトップが特典として付いているのは想定内だが、カセットテープにオリジナルカラオケ4曲が付いていると知って、“胸がキュン”とした。長々と紹介したのは、音楽の分野でいかに私たちが“モノ離れ”をしているかを実感するためだ。気になる歌手や音楽はダウンロードして聞く、というスタイルがすっかり定着した。このネット配信がゲームの世界でも主流となりそうだ。

新サービスの潮流

 11月1日、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)は携帯ゲーム機PSP(プレイステーション・ポータブル)の新機種PSPgoを発売した。ゲームをネットからダウンロードするという新しいスタイルを採用したのが、最大の特徴だ。従来機では、UMDという光ディスクに入ったゲームソフトを購入するのが一般的だったが、PSPgoはUMDを使わず、PlayStation Storeというネットワーク上の店舗から直接ダウンロードする。10月にSCE自身から発売されたPSP向けソフト「グランツーリスモ」も、もちろんダウンロードできる。PSPは無線LAN環境さえあればどこでもインターネットにつながる。PlayStation Spotというマークがある店でもインターネットにつながるし、自宅に無線LAN接続環境がない場合や、もっと速くダウンロードしたいという場合には、Media GoというソフトウェアをPCにインストール。PCでダウンロードしたゲームソフトをPSPgoに転送すればいい。Media Goがあれば音楽や映像の管理もできる。

 PS Storeには新作ゲームの体験版など無料のものもあるが、有料コンテンツについてはクレジットカードなどで決済する。SCEは販売手数料を差し引いて、ゲームソフトメーカーに代金を渡す。ここだけ見ると、SCEが従来ソフトメーカーからロイヤリティとして受け取っていた分が販売手数料収入となるわけで、縦のものを横にしただけと思えるかもしれないが、とんでもない。ネット配信だと、初代PSなど懐かしのゲームの販売も容易だし、ゲーム用の追加アイテムも売りやすい。ゲーム以外のコンテンツ、例えばアニメやミュージッククリップのビデオ“レンタル”(ダウンロードするだけなので返却不要)もある。12月からはコミックの配信も始まる。

 ネットワークサービスはコンテンツの販売にとどまらない。みんなで遊ぶ楽しさも味わえる。元々PSPは、ゲーム機とソフトを持ち寄れば簡単に複数人数で通信プレイできるのが人気の原因だったが、「アドホックパーティ」を利用すれば、据え置き型ゲーム機PS3を間にはさんで、全国のプレイヤーと対戦や協力プレイができる。
 さらにPS3ユーザー限定だが、PlayStation Homeという仮想空間もある。空間内には自分の部屋があり、家具や壁紙等は好みにあわせて選択できる。部屋の外に出れば、アーケードゲーム、ボウリング等がプレイできるし、動画コンテンツを観ることもできる。アバター(自分の分身)の顔や性別、洋服などを好みにあわせてカスタマイズし、チャットなどで他の人のアバターとコミュニケートする。 気に入った相手がいたら「フレンド登録」し、自分の部屋に招待。ホーム内からPS3ゲームを起動すれば、フレンドと一緒にオンラインゲームへ参加することもできる。至れり尽くせりだ。

ネットワークゲームの魅力

 どこがすごいの? どこが面白いの? ゲームをやったことのない方は、心の中でそうつぶやいているかもしれない。
「ネットワークゲームあるいはオンラインゲームとは、インターネットの向こう側の何人かと一緒に、完全にリアルタイムでゲームのプレイヤーになって遊ぶ、というものです。自分があるキャラクターとなってゲームの中に入っていくと、他のユーザーも入ってきます。そして、力を合わせてモンスターをやっつけたりするのです。ゲーム内で、チャットでコミュニケーションを深めることもできます」(阿久津氏)

 ただ最近、ネットワークゲームの問題点が指摘されている。
「ゲームの世界にどっぷり浸かってしまって会社に行かない、学校にも行かない、食事もインスタントラーメンで済ませてプレイを続ける。そういう、ゲームにハマって日常生活を営めなくなった人たちがいて、『ネトゲ廃人』と呼ばれています。
 僕も、ネットワークに一度入るとなかなか抜けられない、そういう気持ちがわかることはわかるんです。ネットワークゲームが盛んになる前に、ネットワークの囲碁をやったことがあるんですよ。年配の方や時間のある方は別ですが、サラリーマンだとなかなか碁会所に行けません。そこで帰宅後にネットワークの中に入って、対戦相手を見つけるわけです。対局して終わった時に『もう1回やりましょう』と言われ、勝ち逃げするのも悪いな、と思い付き合う。すると、お互い止められなくて、延々と続いてしまうんです。それがネットワークの対戦ゲームの面白さなんですが、怖さでもありますね。
 要は、相手がいるから抜けられなくなってしまうのです。仲間が集まってチャットが盛り上がっていると、その輪からなかなか抜けられない人もいます。インターネットやモバイルの世界の中にコミュニケーションを求めるという、現代の問題を投影しているのかもしれません。
 一方で、遠方に住む人や、老若男女を問わず、通常なら知り合えない人と知り合えるのもネットワークの魅力です。ネットワーク囲碁で、顔も知らない若い人と対戦したことがありますが、子どもの頃に父親に教えてもらって以来でルールをよく覚えていないというので、私が教えてあげながら対局しました。相手の方は恐縮していましたが、ネットワークを通してその人の子ども時代や生き方まで伝わってくるようで、とても新鮮に感じたのを覚えています」(阿久津氏)

ゲームソフトの未来は?

 大ヒットシリーズの最新作でPS3向けの「ファイナルファンタジーⅩⅢ」(12月17日発売)を制作したスクウェア・エニックス・ホールディングス社長・和田洋一氏は、雑誌のインタビューに答えて、いずれ「実質的なプラットフォームは端末ではなくネットワークにな」ると思う、と述べている(週刊東洋経済8月29日号)。ゲーム機の未来はさておき、ゲームソフトのオンライン化、ネットワークサービス強化の流れは不可避のようだ。一ゲーマーとしては、ネットワークサービスのさらなる充実を楽しみにしたい。


阿久津幸宏氏
阿久津幸宏氏:
アニメディア編集長、劇場用アニメ『ビーストウォーズ』などのプロデューサーを経て、現在ゲームソフト企画開発会社・株式会社ガイア取締役プロデューサー。七会静名で近著「よくわかる『世界の死神』事典」(廣済堂あかつき刊)

株式会社ガイア
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渡辺麻実

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