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コラム/Column
魅惑の万年筆
10 職人技を追求するカランダッシュ (全10回)
モノづくりの国スイス
前身である「エクリドール鉛筆製造所」が1915年に設立された時から、カランダッシュはスイスの西端の都市ジュネーブを本拠地としている。1974年に工場とともにジュネーブ郊外へ移転したものの、スイス人の心の中では、今でもカランダッシュ=ジュネーブだ。ジュネーブといえば、ケルトの時代まで遡ることのできる歴史ある街でありながら、現代においても、国際連合欧州本部や赤十字国際委員会の本部などが置かれる国際都市。だが、ブアイソー世代が胸をときめかせるのはやはり、時計産業の聖地としてのジュネーブに、かもしれない。ジュネーブには、パテック・フィリップ、ヴァシュロン・コンスタンタン、ロレックスなど世界中の時計ファンが憧れる高級時計メーカーが集う。「国際高級宝飾時計展」はジュネーブ・サロンという通称が示す通り、ここジュネーブで毎年開催される。
さて、パテック・フィリップ等の高級時計メーカーが、特別な顧客に対して、しばしばエクリドールの万年筆を贈っていることをご存知だろうか。その理由の1つに“ジュネーブつながり”があることは想像に難くないが、もちろんそれだけではないだろう。おそらく、伝統的で緻密なクラフトマンシップ(職人芸、職人技)を追求する会社同士が互いに抱く特別な感情、これがより本質的な理由ではあるまいか。
そのことを実証するため、エクリドールの製造工程を見てみよう。まず、筒型の真鍮(しんちゅう)を、切削と圧縮により六角形に成形する。これがエクリドールのボディの軸だ。成形した軸を1つ1つ、規定のサイズどおりに仕上がっているか検査し、傷や歪みなどの変形がないかチェックする。
OKが出たボディだけにメッキ加工を施す。ゴールドのエクリドールは「ギルデッド」。スイスの法律では、3ミクロンから「ギルデッド」と呼ぶことが許されるが、エクリドールは、18金を4ミクロンの厚さでメッキ加工を施す。厚いメッキをかけることにより、表面は傷つきにくくなり、メッキ剥がれを起こしにくくなる。特殊な測定器を使い、メッキの厚さが規定通りかどうかチェックする。
次に、ボディに彫刻を施す。彫刻には最新コンピュータ制御の機械も使われるが、一気に彫るわけではない。1面ずつ彫刻するのだ。1面終わったら、ボディの角度を変える。それは手作業で行われる。エクリドールは六角形なので、5回変えることになる。シルバーのエクリドールは、さらに、酸化による褐色や傷つきを防ぐため、ロジウムをコーティングする。
検品後、同様に検品済みのクリップをボディに取り付ける。これも、機械と手作業のコラボレーションだ。
そして、ボディを1本1本丁寧に磨き上げる。熟練した職人が丹念に磨き上げると、金属本来の輝きに、さらなる輝きと美しさが加わる。最後に人の目で1本1本検品。厳選された素材と、職人の卓越した技術、何重もの厳しいチェックにより、こうして、高級感があると同時に耐久性にも優れた、世にも稀な万年筆が誕生するのだ。
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