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コラム/Column
なるほど思考術
04 議論の相手に正しく理解させる「伝える力」 (全10回)
取引先や他部署との議論の際、一生懸命伝えているのに、相手をイライラさせたり誤解させてしまったりしたことはありませんか? そんな時、「伝える力」を身につけていれば、議論の相手に正しく理解させることができていたのかもしれません。
2010/08/25
文:戸部克弘
医療機器メーカー向けの営業活動がうまくいかずに悩んでいた磯さん、元上司の武藍さんに誘われて、行きつけの焼き鳥屋で一杯飲みながら話をしています。
武藍さんから、商談などにおける議論の際には「聞く力」が重要だと教わりましたが、まだ続きがあるようです……。
(前回からの続き)
武藍室長補佐(武) つまり、「体」で相手の話を聞いていることをちゃんと示し、「頭」で考えた正しい質問で相手を巻き込み、「心」で空気を読んで柔軟な対応を心掛ける。これらの「聞く力」によって、議論の相手を味方にすることができるはずだ。この時点で初めて、「伝える力」が活きてくる。
磯主任(磯)え!? 「伝える力」もあるんですか?
武 ああ。たとえ、磯の「聞く力」によって相手がちゃんと聞く気になってくれたとしても、うまく説明していかないと、思った通りに理解してもらえないだろう。
磯 ええ、特に苦手なお客さんの場合、僕の説明がうまくないからかもしれませんが、相手に誤解されて、時には、話を途中で遮られてしまうこともありますね。
武 それで結局、話が逸れていって、大事なことをちゃんと伝えられなかったりとか?
磯 さすが武藍さん。おっしゃる通りです。
武 まあ、よくあるパターンだな。ところで磯は、相手に何かを伝えようとする時、どんなことを意識してるんだ?
磯 えーっと、昔、武藍さんから教わった通り、できるだけ結論から話そうとしています。それでも、なかなかうまくいかなくて、相手をイライラさせたりすることがありますね。
武 他には?
磯 うーん、どうでしょうか。とにかく、できるだけ丁寧に説明しようと心掛けています。
武 そうか。
磯 あ、でも、こういうと言い訳っぽくなっちゃうんですが、せっかくちゃんと説明していても、お客さんが聞いてくれていないことも多いんですよ。例えば今日も、まずは納期について説明し、次に価格について説明したんですよね。そしたら、その直後に、「えーっと、あれ、納期はいつまでになるんでしたっけ?」って言われてしまって。明らかに、話を聞いてくれてなかったんだな、って時も多いです。
武 そうか。でも、どうしてそうなると思う?
磯 うーん、難しいですね。やっぱり僕の説明が下手なんでしょうか。
武 まあ、そうかもしれないけど、いくら磯がうまく説明できていたとしても、肝心な所で相手がぼーっとしていたり、違うことを気にしていたりすると、うまく伝わらないだろう。
磯 まあ、それはそうですね。
武 だからこそ、相手の興味をしっかりひきつけ、要点を理解してもらえるようにコントロールすることが大切だ。
磯 それが「伝える力」のポイントですか?
武 そう、「伝える力」も「体」「頭」「心」それぞれ意識すべきことがある。まず「体」では、背筋を伸ばした自信いっぱいの姿勢で、相手に話しかける時には少しだけ前のめりになるくらいがいい。
磯 なるほど。
武 そして、活き活きとした表情を作って、重要な所では目ヂカラを使うことも大切だ。
磯 目ヂカラ、ですか。たしかに武藍さんは目ヂカラが強いですよね。僕はあんまり自信がないんですけど。
武 いや、目ヂカラの強さそのものというわけではなく、特に強調したい部分でしっかりアイコンタクトをとる。そのメリハリで「ココは大事ですよ」ということを訴えるんだよ。そうすれば、相手はそれに気づき、磯が伝えたかった部分がどこなのかをはっきりと認識するはずだ。
磯 なるほど。ここぞという時に目ヂカラを使うわけですね。
武 そうそう。そして次に、「頭」を使って、常に結論と話の位置付けを明確にすることを考えるんだ。
磯 えーっと、結論はわかるんですが、話の位置付けというのは何ですか?
武 例えば、説明する前に「こちら、あくまで議論のたたき台として持ってきた仮案ですが……」と言うか、「事前に頂いたご意見をほぼ反映したものなので、基本的にこちらを前提に契約条件を詰めたいのですが……」と言うかによって、相手も、まずはリラックスして聞けばいいのか、それとも詳細にまで注意して聞かないといけないのか、といったことがわかる。つまり、そうすることで、相手の意識や集中力をうまくコントロールしていけるというわけだ。
磯 なるほど。そうやって位置付けを確認しておけば、変なところで突っ込まれたりすることも少なくなりそうですね。
武 あと、細かいことだが、質問を受けた時には、最初に相手の質問をそのまま繰り返して、それに答えていることをはっきりと示すのも一つのコツだ。どういうことかというと、例えば「納期はどれくらいでできるの?」と聞かれた場合には、「はい、納期につきましては……」と話し始める。
磯 なるほど。でも、どうしてですか?
武 相手に対して、「私はあなたの質問をちゃんと聞いて、それに答えようとしていますよ」ということがはっきり伝わるし、質問を勘違いして答えようとしている時には、それを指摘してもらえる。そして、自分ではっきり言うことによって、自分自身の発言が逸れていくことを防げるというメリットもある。
磯 ああ、なるほど。
武 人はみんな、自信がない時ほど色々と言い訳から入りがちで、そうすると、相手の質問にちゃんと答えないまま、無意識のうちに話が逸れていってしまうんだよ。だからこそ、相手の質問には真っすぐ答えることを意識した方がいい。
磯 たしかに、言い訳から入ると、結局相手をさらにイライラさせてしまいますもんね。
武 そうだな。そして最後に、「心」をとにかく落ち着かせ安定感を保つこと。そして、常に相手の理解や関心を確かめつつ、ゆっくりと話すことを意識する。
磯 そうですね。たしかに、落ち着かないといけないですよね。
武 例えば、大事なポイントで相手がメモを取るために下を向いていれば、一瞬沈黙してみる。そして、相手が顔を上げたところでしっかりと念押ししてから先へ進む、くらいの余裕があればいいと思うぞ。
磯 なるほど、沈黙するんですか。難しいですね。でも、いずれにせよ、焦って早口で話しすぎちゃいけないってことですね。
武 そうそう。まとめると、「体」では自信いっぱいの姿勢と表情を保って目ヂカラを使い、「頭」で結論と話の位置付けを明確にすることを考え、「心」を落ち着かせてゆっくりと話す。これらの「伝える力」によって、議論の相手の興味や意識、集中力をコントロールし、正しく理解してもらうことができるはずだ。
磯 うーん、「聞く力」と「伝える力」、色々とあって大変ですが、早速明日から気をつけてみます。
武 そうだな。こういったコミュニケーション力は、一朝一夕に身につくものじゃないから、少しずつ改善していこう、と思うことが大切だ。
磯 はい、わかりました。
武 それに、同時に色々なことを意識することはできないから、まずはどれか一つを意識してみる。そうすれば、そのうち自分にとっての自然な動きとなってくるはずだ。
磯 ああなるほど。きっとゴルフと一緒ですね。コーチからは肩がどう、肘がどう、手首がどう、腰がどう、と、色々と言われますが、一度に全部はできない。
武 ははは。磯にしてはいいこと言うじゃないか。まあ、いろいろと言ったけど、あまり表層的なテクニックばかり気にしていたらダメだぞ。肝心なのは、相手が考えていることや感じていることに気を配り、自分本位にならないように話していくことだ。それを忘れないようにな。
磯 はい、わかりました。気をつけます。
武 さてと、そろそろ勉強は終わりにして、もう一杯飲もうか。
磯 はい!
いかがでしたか? 議論を成功させるためには、前回の「聞く力」に加えて今回の「伝える力」を発揮することで、議論の相手に正しく理解させることができると思います。「聞く力」「伝える力」の要素すべてを一朝一夕に身につけることはできませんが、ぜひ一つずつ意識してみてください。

「様々な部下への賢い接し方」
戸部克弘(とべ・かつひろ)企業受験ゼミナール 講師。東京大学大学院 工学系研究科 物理工学専攻修了(工学博士)。 マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク・ジャパンを経て、株式会社NTパートナーズ代表取締役に就任。株式会社NTパートナーズが運営する企業受験ゼミナールにて、就職活動に取り組む大学生、大学院生に対する支援、プログラム(講習会、個人面談など)を実施
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