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06 相手に合わせたやる気の盛り上げ方 (全10回)

部下を指導している時に、なかなか部下のやる気を盛り上げることができずに困ったことはありませんか? 「最近の若者は……」と愚痴る前に、自分のやり方が相手に合っていたのかを振り返ってみましょう。

2010/11/25

文:戸部克弘

前回、武藍さんから「部下のやる気(Will)と能力(Skill)を把握し、うまく関わっていくためのコツ」を聞いた磯さん、その後は優先順位をつけながら、部下の面倒をしっかりと見ているようです。どうやら今も、3年目の三田さんと打ち合わせの最中のようですね。ちょっと様子をうかがってみましょう。

磯主任(磯) ……とまあ、A社の件はこれからも色々と大変だろうけど、また明日からしっかり頑張ってな。

三田(三) はい……。まあやってみます。

 なんか元気ないな、大丈夫か?

 いえ、別に……でも、あんまり意味ないと思うんですよ、A社に対して頑張っても。あそこはとにかくコスト重視だから、うちが今の製品をベースにいくら良い提案書を作っても、見込みないと思うんですよね。

 そんなことないって。これまでも三田が頑張ってくれたおかげで、うちの製品に対しても、随分興味を持ってくれてるよ。

 でも……。まあいいです。とりあえずやっておきます。

 うん、よろしく。頼りにしてるよ。(うーん、困ったなあ……。武藍さんに相談してみるか)

(その日の夜)

武藍室長補佐(武) あ、磯。最近どうだ? この間会った時は、六車が元気ないって言ってたよな。

 おかげさまで六車は元気になりました。でも、悩みが1つ片付くとまた1つ、って感じなんですよね。

 そうか。どうしたんだ?

 前にもお話した、3年目の三田ってやつのことなんです。最近、新規顧客の開拓をやっているんですが、なかなかモチベーションが続かなくて。

 あれ? この間は確か、「聞く力」と「伝える力」を教えたら良くなってきたとか言ってなかったか?

 ええ、あの時は良かったんですけど、しばらく経つとまたやる気を失っちゃって。

 なんかあったのか?

 いえ、特に。でも、基本的に飽きっぽくて、なかなかやる気が続かなくて。まあ、典型的な今どきの若者って感じなんですよね。もともと、理系で数字にも強いし、やればできるやつだと思うんですけど、何をやる時もどことなく冷めているんです。

 そうなのか。

 もちろん僕なりに、頑張って褒めたり、励ましたりしているんですけど……三田にはあまり効かないんですよね。飲みに誘ったりすると、露骨に嫌そうにするし。

 なるほどな。

 大体、僕らの世代は、いつも上司に叱られてばっかりで、褒められることなんてほとんどなかったんですけど、それでも頑張ったもんですけどね……。でも、今の若いヤツらは、こっちが少しでも厳しく言おうもんなら、すぐにあれこれ文句を言ってきたり、逆に、激しく落ち込んでしまったりするんですよ。

 すっかりおっさんの愚痴みたいだな。

 あ、すいません。

 うーん、磯が言っていることもわからんでもないが、でも、今回のケースは本当に、彼が若いから、ってことなのか?

 そうだと思いますけど……違いますか?

 どうだろうな。例えばさっき、褒めたり励ましたりしている、って言ってたけど、それが効くかどうかなんて、相手次第なんだぞ。

 うーん、確かにそうかもしれませんが……。でも普通、褒められたら嬉しいもんじゃないんですか?

 もちろん、多少はそうだろうが、褒められると伸びるタイプもいれば、逆に冷めてしまうタイプもいるだろう。

 うーん……そうなんですかね。

 まあ、やる気の盛り上げ方を考える時には、相手のタイプがざっくり言っても4種類くらいはあるから、まずはそれを意識した方がいい。

 え、そうなんですか?

相手に合わせたやる気の盛り上げ方 まず1つ目は、明確な目標を示してやると、やる気になるタイプ。ゴールの方向さえはっきり見せてやれば、思いっきり走り出すけど、やっていることの意義がわからない間はもやもやしているタイプだ。

 あ、確かにいるかもしれませんね。

 こういうタイプを盛り上げる時のポイントは、目標をわかりやすいキーワードにすることだ。

 キーワードですか?

 例えば、「我々の目標は、とにかく『今年度中のシェア20%奪還』だ。だからこそ、君にはぜひ、今月中にA社へのアタックを成功させてもらいたい」といった感じだ。

 なるほど。キャッチフレーズみたいなもんですね。

 そうだな。そして2つ目は、やっていることの面白さや新しさを説明し、知的好奇心を刺激することが効くタイプ。このタイプは、基本的には頭が良いので、納得がいかないと、色々と理屈をこねて反対したりする傾向がある。

 あ、三田はそのタイプかもしれません。

 そうかもな。でも、こういうタイプは、一旦納得してしまえば、細かく指示しなくても動いてくれるもんだぞ。だからこそ、最初にうまく納得させて、やる気を引き出すことが重要だ。

 へえ、三田にもそういう面があるのかな……。

 3つ目は、自分が出してきた結果をちゃんと評価してもらうことで、どんどんやる気になってくるタイプだ。出した結果に加えて、上司には見えない途中のプロセスについてもしっかりと評価してあげれば、さらにやる気になる。だから、時には「実際はどうだったんだ?」と尋ね、部下の苦労話に耳を傾けてあげることも効果的だぞ。

 なるほど。そういったことは大事ですよね。

 そして最後は、人間関係がやる気を生むタイプだ。例えば、上司を慕って「この人のために頑張りたい」と感じたりするのは、このタイプだな。

 うーん、なるほど。でも、そう思わせるのはなかなか難しそうですね。

 そうだな。当たり前だけど、常日頃から「頼りにしてるぞ」とか、「助かったよ」というように声を掛けてやるなど、色々な気配りがあってこそ、人間関係が築けたり、部下から慕われたりするんだからな。

 そういえば、武藍さんも結構慕われてますよね……きっとうまいんですね。

 まあ、俺はともかく、色々なタイプがいるってことだ。要は、何事もワンパターンだと駄目だってことだ。

 ええ、わかります。

 ともすれば、自分が好きな方法を「こうされると誰でもやる気になるはず」と信じて、それだけをやってしまいがちだからな。

 ああ、そういう傾向はありますよね。

 結果として、同じタイプの部下のことを「あいつはやる気がある」とかわいがるようになり、自分と違うタイプの部下のことは、「あいつは俺がこんなにしてやっても、全然やる気にならない、駄目なヤツだ」と考えるようになってしまう。

 う……言われると確かに、三田をそうやって見ていたかもしれません。反省です。

 まあ、気にしてもしょうがないさ。それよりも、これからどうしたらいいと思う?

 うーん、これまでは確かに、頑張って褒めたりとか、声を掛けてやったりとか、さっきのタイプでいうと、3つ目や4つ目ばかりやっていたような気がするのですが……。

 まあ、磯らしいな。

 でも、さっきも言いましたが、三田は知的好奇心に訴える方が効くかもしれない、ってことですよね。とすると、今の仕事が、どう面白いのか、とか、三田にとってどういった経験になるのか、とか、そういったことを、論理的に説明すればいいんですかね?

 うん、そうかもしれないな。

 うーん、実際には難しいですね……でも、ちょっとやってみます。ありがとうございました!

いかがでしたか? 前回見ていった、WillとSkillのうち、Will(やる気)を向上させるためのヒントはつかめましたか? 武藍さんが言っていたように、「自分の好きな方法をやってしまいがち」ということを意識して、効果的な動機付けができるように、相手のタイプを見極めながら、色々と試してみてください。

次回のテーマ
「相手に合わせたスキルの教え方」
なるほど思考術---戸部克弘戸部克弘(とべ・かつひろ)

企業受験ゼミナール 講師。東京大学大学院 工学系研究科 物理工学専攻修了(工学博士)。 マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク・ジャパンを経て、株式会社NTパートナーズ代表取締役に就任。株式会社NTパートナーズが運営する企業受験ゼミナールにて、就職活動に取り組む大学生、大学院生に対する支援、プログラム(講習会、個人面談など)を実施

http://www.kigyo-juken.com/

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