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東京・丸の内のビジネスパーソンに聞きました「2010年、あなたが愛読した本は?」

『日本辺境論』 内田樹著、新潮社刊

『日本辺境論』 内田樹著、新潮社刊

H・M氏 三菱東京UFJ銀行
40代、女性、日本

 大手中学受験進学塾の保護者会で紹介されたのがきっかけで読みました。ある名門中学の国語の入試問題になっていたそうで、「小学6年生がこんな難しい文章を読んで理解するのか」と感心しました。
 文中、丸山眞男の「私達はたえず外を向いてきょろきょろして新しいものを外なる世界に求めながら、そういうきょろきょろしている自分自身は一向に変わらない」という件(くだり)を引用しているのですが、私はまさに「きょろきょろ」派。今までそれは、自分が転校続きだったため自然に身に付けた処世術だと思っていたので、日本人の基本特性という指摘に驚きました。それ以外にも、本書で述べられている内容には、私は思い当たる点多数でしたが、異論もあるようです。例えば、著者がこの本でなぜ「ぼく」ではなく「私」という一人称を採用しているのか、について述べている個所があるのですが、この部分について理系の友人は「文意が全く理解できない」と言っていました。面白いですね。

『日本辺境論』 内田樹著、新潮社刊

日本人とは辺境人である――「日本人とは何ものか」という大きな問いに、著者は正面から答える。常にどこかに「世界の中心」を必要とする辺境の民、それが日本人なのだ、と。丸山眞男、澤庵、武士道から水戸黄門、養老孟司、マンガまで、多様なテーマを自在に扱いつつ日本を論じる、日本論の金字塔

『ジャパナメリカ 日本発ポップカルチャー革命』 ローランド・ケルツ著、永田医訳 武田ランダムハウスジャパン刊

『ジャパナメリカ 日本発ポップカルチャー革命』 ローランド・ケルツ著、永田医訳 武田ランダムハウスジャパン刊

V・S氏 クランチロール株式会社
40代、男性、アメリカ

 友人に薦められて読みました。アメリカ人がアメリカ人向けに書いた本ですが、日本語翻訳版も出ています。
 クランチロールは世界で一番大きなアニメ・ソーシャル・ネットワークを運営し、日本のアニメを中心とするアジアのコンテンツを世界に配信するベンチャー企業です。私の会社はその日本法人で、08年に設立されたばかり。新丸の内ビルにある日本創生ビレッジにオフィスを置く若い会社です。私の仕事は、人気のタイトルを日本での放映後すぐインターネット配信できるよう、ライセンサーと交渉し、正式契約まで持っていくこと。ただ、私自身はアニメファンというわけではないので、「最新のエピソードをいち早く見たい!」という熱心なファンの気持ちを理解するために、この本を読んだのです。
 単に、日本のマンガやアニメが“クール”だという話だけでなく、日本のアニメがアメリカでどんなふうに受容されているか、日本の文化がアメリカの文化にどんな影響を与えてきているかにも触れており、なかなか面白かったです。

『ジャパナメリカ 日本発ポップカルチャー革命』
ローランド・ケルツ著、永田医訳 武田ランダムハウスジャパン刊

『ガッチャマン』『ポケモン』『トトロ』から『ハルキ・ムラカミ』まで――日本のポップ・カルチャーはクールだ! なぜ、今、マンガとアニメがアメリカで受けるのか?浮世絵、禅に続く、日本文化偏愛の「第三の波」を、日米の最前線からリポート

『どんな人にも大切な「売る力」ノート』 津田晃著、かんき出版刊

『どんな人にも大切な「売る力」ノート』 津田晃著、かんき出版刊

Y・Y氏 東京海上日動火災保険
40代、男性、日本

 会社の上司からの薦めで読みました。著者は、野村證券で当時の社長から“営業の鑑”と言われ、43歳の若さで最年少役員に抜擢されたという人物。著者は20代の頃から、仕事で気づいたノウハウや生きる術などを即メモし、反省と未来への糧として、日々の生活に役立ててきたのだそうです。40年にわたりコツコツと書き続けてきた、その「備忘ノート」から、今のような厳しい時代を生き抜くために絶対に必要となる「売る力」のノウハウを抽出したのが本書です。
 内容は、日々営業職に携わる中で、私自身も当たり前のように感じている事柄や考え方が多く、とくに目新しいというわけではありません。しかし、それらのポイントを「77の気づきメモ」の形式で整理しているため、非常に読みやすく、また、著者の実際の経験に裏打ちされているため、とても共感しやすいものとなっています。

『どんな人にも大切な「売る力」ノート』 津田晃著、かんき出版刊

これからますます不景気が進むと予測される中、スペシャリスト以外はすべて営業に関わる仕事になる。そこでは、営業発想ができるか否かで、プロになれるか、アマで終わるか、が決まる。野村證券の営業畑で実績を上げ、当時、最年少の役員となった著者が、プロとなるために必要な、気力・体力・根性のさらに上に位置するノウハウを明かす

『阪急電車』 有川浩著、幻冬舎刊

『阪急電車』 有川浩著、幻冬舎刊

I・S氏 三菱電機、30代、女性、日本

 地方勤務の時は、本といえば、海外出張の長距離移動の際に長編エンターテインメントをイッキ読みするものでしたが、勤務先が丸の内に変わり、本を読む環境が片道10分の通勤電車の中となりました。そのため、最近は朝、細切れで読むのにふさわしい本を選んでいます。本書もその1つで、今放映中のテレビドラマ『フリーター、家を買う。』の原作者が書いたと知って、この本を選びました。
 阪急電車は関西に実在する私鉄ですが、この本はその中でもわずか8駅という今津線のある日の情景を、オムニバス形式で綴ったものです。往復して16駅。駅の名前がタイトルになっています。住宅街をのんびり走る電車の中で、たまたま乗り合わせた人に、ふとかけられた言葉で人生前向きになったり、車窓の景色をきっかけにして恋が生まれたりする物語です。袖触れ合うも何かの縁というけれど、たまたま居合わせた人たちが、ほんの少し暖かい気持ちや正義感を持ったことで生まれた素敵なエピソードに、10分の電車の中で毎朝楽しい気持ちになりました。読んだ人はたぶんみんな、阪急電車の小林駅に住みたくなります。

『阪急電車』 有川浩著、幻冬舎刊

恋の始まり、別れの兆し、そして途中下車……関西のローカル線を舞台に繰り広げられる、片道わずか15分の胸キュン物語。大ベストセ ラー『図書館戦争』シリーズの著者による傑作の連作集


構成:渡辺麻実

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