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【Digital Library】『オービタル・クラウド』『蒼き鋼のアルペジオ』

春から初夏に差し掛かかりました。気持ちいい日が続き、個人的に1年間で最も好きな季節です。「個人的に好き」といえば、私が好きな本のジャンルは「SF」です。他のジャンルに比べて、なかなか手を出し難いという人も多いSFですが、昨今、良作も多く、SFが盛り上がっているのでは? と感じています。ということで今回は、「SF初心者でもはまるSF」2作品をご紹介します。

一気読み必至!
『オービタル・クラウド』

『オービタル・クラウド』(藤井太洋/早川書房) 電子時代の俊英が近未来のテクノロジーをリアルに描く、渾身のテクノスリラー巨篇!

『オービタル・クラウド』(藤井太洋/早川書房)
電子時代の俊英が近未来のテクノロジーをリアルに描く、渾身のテクノスリラー巨篇!

 まずご紹介したいのが、近未来SF『オービタル・クラウド』(藤井太洋/早川書房)です。「第35回日本SF大賞」にも選ばれました。
 主人公の木村和海は、流れ星の発生を予測するWebサービス〈メテオ・ニュース〉を運営するフリーランスのWeb制作者。彼は、衛星軌道上の宇宙ゴミ(デブリ)の不審な動きを発見します。その“不審な動き”には、とても大きな陰謀が潜んでいて、その陰謀を軸に物語は展開されます。主人公をはじめとする登場人物たちは、それぞれ何かしらのプロフェッショナルで、それぞれの持ち味、強み、立場をもって、その“陰謀”に相対していきます。
 この物語のキーとなるのが、少しだけ未来の「宇宙技術」と「ネット技術」です。それらが著者ならではの丁寧さで描かれており、物語にリアルさと説得力が与えられています。テクノロジーがこのまま発展し続けた先、人々はそのテクノロジーをどう扱うべきなのか。どう付き合うべきなのか。著者の読者に対する問いを感じる作品でした。
 シーンひとつひとつのイメージが即座に思い浮かび、「映像化してほしい」と心から思えるエンターテインメント作品なので、SFをあまり読んだことのない方にもおススメです。一気読み必至なので、寝不足に注意してください。

実は骨太のSF海洋戦記
『蒼き鋼のアルペジオ』

『蒼き鋼のアルペジオ』(Ark Performance/少年画報社) 人類が“霧の艦隊”になす術無く敗戦し、海上に出る事が出来なくなってから17年後、なぜか「霧」の潜水艦イ401に乗り込んだ千早群像とその仲間たちは、イ401の人体化(メンタルモデル)のイオナと共に、“霧の艦隊”に戦いを挑む……。

『蒼き鋼のアルペジオ』(Ark Performance/少年画報社)
人類が“霧の艦隊”になす術無く敗戦し、海上に出る事が出来なくなってから17年後、なぜか「霧」の潜水艦イ401に乗り込んだ千早群像とその仲間たちは、イ401の人体化(メンタルモデル)のイオナと共に、“霧の艦隊”に戦いを挑む……。

 次にご紹介するのが、SF海洋戦記コミック『蒼き鋼のアルペジオ』(Ark Performance/少年画報社)です。
 突然、世界各地に出現し人類を海上から駆逐した、謎の戦艦群「霧の艦隊」。その17年後、「霧」の潜水艦イ401に乗り込んだ主人公である千早群像とその仲間たちは、イ401の人体化(メンタルモデル)のイオナと共に、「霧の艦隊」に戦いを挑みます。
 昨今、「ミリタリー」×「萌え」な作品が多いですが、この作品もその系譜といえるかもしれません。これらの作品は、「萌え」要素はさることながら、ミリタリーの部分もしっかり「骨太」に仕上げられているのが特長といえます。そして、この作品も例外ではなく、しっかり「骨太のSF戦記モノ」に仕上がっています。
 実は個人的に「萌え」要素が苦手で、書影から受けるイメージでこの作品に手を出していませんでした。とあるきっかけで読み始めたのですが、ずるずると世界観に引き込まれ、どっぷりとはまってしまいました。
 ストーリーはもちろん、画の迫力も素晴らしいのですが、個人的には、登場人物たちが放つセリフに名言が多く、そこを魅力に感じています。
『相手を信用するには力が必要なんです』(中略)『人間の言葉ではそれを「自信」というんだ』(『蒼き鋼のアルペジオ(10)』)
 ……前後の流れがないと伝わりにくいですが、非常にぐっとくる言葉でした。
 連載中の本作品。まだまだ謎が多く、先が見えませんが、これからもっと盛り上がること間違いなしです。

 さて今回は、「SF初心者でもはまるSF」を2作品ご紹介いたしました。普段読まないジャンルの本に手を出して良作に出会えた時、本当に嬉しいですよね。皆様にとって、今回の作品がそんな作品になれば、幸いです。


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情報サイト/情報誌を運営発行する会社で商品企画を経験し、2012年にソニーマーケティング株式会社に入社。同年5月から、電子書籍ストア“Reader Store”の店長として、サービスを運営する

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文|前田国敏

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