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【Digital Library】『あの実況がすごかった』

記憶を呼び起こす、アナウンサーの名言の数々

日本中を熱狂させたオリンピックから国民的英雄の引退試合、W杯の悔し涙まで。われわれの記憶に残る名勝負の陰には、必ず「優れた実況報道」があった。その舞台裏と、われわれが感動してしまう理由を、スポーツ番組の放送作家が明快、詳細に解説。今夜からスポーツ中継が何倍も楽しくなる、渾身の「実況」評論!

 こんにちは、“Reader Store”の店長・加藤です。この号は8月初旬に皆さまのお手元に届くと聞いています。その頃には“Reader Store”は、“Reader”、“Sony Tablet”に加え、ソニーモバイルコミュニケーションズの『Xperia』シリーズスマートフォン向けにもサービスを開始しているようになっています。好きなときに好きな本を手に取り、読み始める。今以上に本が身近になると思いますので、『Xperia』をお持ちの方はぜひとも“Reader”アプリを無料でダウンロードしてお楽しみくださいませ。

 少しだけ“Reader Store”の宣伝を書かせていただきましたが、この号がお手元に届く時、世間はスポーツのニュース一色でしょうか。日本中が一体となり、歓喜の雄たけびを一つでも多くあげられていれば、必ず日本は元気になっていますね。そのような夏を期待したいです。
 今回はこの夏にぜひともご一読いただきたい一冊をご紹介します。
 いつもは2冊ご紹介しているので、2冊を選んで書き始めたのですが……これからご紹介する本について伝えたいことがあまりに多く、文字数のことも考えて、この一冊に絞らせていただきました。それくらい、感動した本です!
 その本のタイトルは『あの実況がすごかった』(伊藤滋之著/メディアファクトリー)です。スポーツの歴史の中でも有名なシーン、そしてその中でも「実況」に焦点を当てた一冊。「ヒーロー達のデビュー戦」「オリンピック」「サッカーのワールドカップ/予選」「冒頭の名文句や劇的な幕切れの名文句」などなど……とても印象深いシーンがたくさん詰まった作品となります。
 個人的にはこの本を読みながらお酒を飲んでいたら、いつの間にか涙が流れていました(少しだけ)。その時の記憶が蘇ったり、そして記憶には残っていないのですが、今、この年になってからそのシーンを知り、その背景を理解することで感動したりと。一気に読了し、そして余韻にも浸ることができる一冊でした。

最高のフィナーレを演出した“人を動かす言葉”

 この本では、先述の通り、いくつもの実況例が紹介されているのですが、その中でも有名なのは、アテネオリンピックでの男子体操団体が金メダルを獲得したシーンです。「伸身の新月面が描く放物線は栄光への架橋だ!」というNHKの刈屋富士雄アナウンサーのコメントはあまりにも有名ですが、実はこのコメントが出た放送席では、以下のようなやりとりがありました。
 解説者はソウルオリンピックで団体銅メダルを獲得したメンバーの一人、小西裕之さん。ジュニアの強化にも携わってきた小西さんは感極まり、途中から嗚咽をし続けます。
 そこで発せられた刈屋アナの言葉、「小西さん、どうぞ泣いてください」。
 小西さんのこれまで重ねてきた取り組み、想い・責任、そして人柄……すべてを理解して受け止めることができたからこそ発することができた、『スポーツ中継としてはある意味で非常識』なこの一言。この本の中でこのシーンに触れた時、自然と涙がこぼれていました。

 また、この本ではさらに著者なりの推測が書かれています。解説者が号泣するという、実況担当にとっては想定外な出来事。これは本当に想定外であったのか? ということへの推測です。刈屋アナは冨田洋之選手が最後の鉄棒に向かうシーンの実況で「小学校の頃、ソウルオリンピックを観て、自分もオリンピックでメダルを獲りたいと夢をもった冨田」と伝えているのです。
これは、純粋に視聴者に届けた情報なのか? それとも「あなたの活躍を見てオリンピックを夢見た少年が、いよいよ金メダルに挑みますよ」(本文から)というメッセージを小西さんにも伝えようとしたのか? そして……小西さんの感情の昂りを呼び込むための伏線だったのか? この疑問に対する回答は刈屋アナしか知り得ないものですし、もしかしたら刈屋アナですら、今となっては本当の答えはわからないかもしれないですね。
 ご紹介したように、アナウンサーという言葉を扱う職人が、人を動かす言葉を連ねていき、最高のフィナーレを演出する例がいくつも紹介されているこの本を読むことで、より一層スポーツを観ることが楽しみになると思います。
 スポーツが好きな方も、これまであまりスポーツ中継に縁がなかった方にも楽しんでもらえる一冊だと思いますので、ぜひともご一読くださいませ。

おすすめ作品
★光
道尾秀介(著)光文社
親友の慎司は手先が不器用で、お人好し。宏樹は自慢話ばかり。清孝は哀しいことがあって、少しだけ大人びた。慎司の姉の悦子は、まだ「男友達」だった――。都会から少し離れた山間の町で、小学四年生の利一は、仲間とともに、わくわくするような謎や、逃げ出したくなる恐怖、忘れがたい奇跡を体験する
★10年後を後悔しない君へ
藤巻幸大(著)ディスカヴァー・トゥエンティワン
人生には、それぞれの時期になすべきことがある。面倒なことを避け、適当な20代、30代を過ごした人に、引く手あまたな40代は訪れない。しかしがむしゃらに生きた時間の先には、充実した40代、50代が待っている。10年後に笑っているか、後悔しているか!? それは、今のあなたがどう生きるかにかかっている。
★のりりん(1)
鬼頭莫宏(著)講談社
大人の青春は自転車から始まる!――自転車乗りを頑なに拒む青年・丸子一典(まりこ・かずのり/28歳・彼女なし)が出会ったのは、キュートな女子高生ロードレーサー・織田輪(おだ・りん)。危うくリンを車で轢きそうになってしまったノリに、彼女は自転車に乗ることを勧めようとするが……

加藤 樹忠(かとう しげのり)加藤 樹忠(かとう しげのり)
2001年ソニーマーケティング株式会社入社。2010年から 電子書籍のビジネスを担当し、同年12月、ソニーの電子書籍リーダー“Reader”(リーダー)の日本発売に合わせ、電子書籍ストアReader™ Storeを立ち上げる。現在、店長として当サイトを運営する

電子書籍ストアReader™ Store
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