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【Digital Library】重松清「流星ワゴン」「明日があるさ」

流星ワゴン
流星ワゴン

重松清(著) 講談社
死んじゃってもいいかなあ、もう……。38歳・秋。その夜、僕は、5年前に交通事故死した父子の乗る不思議なワゴンに拾われた。そして――自分と同い歳の父親に出逢った。時空を超えてワゴンがめぐる、人生の岐路になった場所への旅。やり直しは、叶えられるのか――? 「本の雑誌」年間ベスト1に輝いた傑作。

 こんにちは。ソニーの本屋 Reader™ Storeの店長、加藤です。
 最近は、電子書籍というビジネスを通して、紙の本と電子書籍の違いを考えたり、本を読むという行為自体を改めて見つめ直したりしている毎日です。本を読む時には、読んだ後の結果や手に入れる情報を想定してから読むこともあれば、本に向かい合っている時間自体を楽しんでいることもありますよね。紙の本には紙の本の良さがあり、電子書籍には電子書籍の良さがあり、それぞれの形で自由に使い分けてもらえるとうれしいなと思います。
 さて、2回目の今回紹介するのは、私の大好きな作家・重松清さんの作品、2冊です。もちろん自宅の本棚には紙の本が並んでいますが、電子書籍としても、いつも近くに置いておき、ふらっと立ち寄るような形でページを開いたりしています。
 まず1冊目は、『流星ワゴン』(講談社)です。「死んじゃってもいいかなあ、もう……』そんなことを呟いたあるサラリーマンが、5年前に交通事故死した父子が乗る不思議なワゴンに同乗して時空を超えたドライブを始めます。そして、自分と同い歳の父親に出会い、人生のターニングポイントになっていた地点をめぐる……これだけを書くと、とてもファンタジーな内容に思えますが、これは重松作品。私自身、そして隣のあの人にも、いつ起きてもおかしくないような家庭問題がいくつも描かれていきます。
 そして小説のラストも、とても印象的です。ラストシーンに至るまでに直接的なメッセージは少なく、本を閉じ、目を閉じた時に“自分事”に置き換えて考えさせられる、そんな小説だと思います。

明日があるさ
明日があるさ

重松清(著) 朝日新聞出版
少年犯罪、家族のあり方、教育問題、本や映画や音楽、少年時代の思い出など、家族をテーマに作品を書き続ける直木賞作家・重松清の原点が分かる著者初のエッセー集。現代社会を生き抜く少年少女と悩める大人たちへの、温かいメッセージ

 そして2作品目は『明日があるさ』(朝日新聞出版)です。一転、こちらは短編エッセー集となります。特に私が好きなのは、冒頭作品『マンモス西を探して』です。
 このエッセーはこんな始まり方をします。「たいせつな相棒の、最後の——真っ白な灰になって燃え尽きるための試合に、立ち会うことのかなわなかった男がいる。」作品のタイトル通り、『あしたのジョー』の主人公・矢吹丈ではなく、脇役の男、マンモス西に思いをはせるエッセーです。“真っ白い灰になった男”と“灰になれず燃えかすを抱いたままの男”。その後者にスポットを当てる、とても重松さんらしい視点だなと感じます。
 そしてこのエッセー内では自身の小説についても触れています。「ぼくの書くお話には必ず『余り』が付いてしまう。」「お話の表面に置いた出来事にはとりあえずケリがついても、根本的な問題は残ったまま、という構図ばかりだ。」「『余り』を抱えた人たちの、その『余り』の部分に届いて、共振してくれれば、と願っている」などなど。
 このエッセーを読んでから『流星ワゴン』やその他の重松作品を読む、逆に『流星ワゴン』を読んでから、このエッセーを読む。そうするとより作品に共振できると思います。

おすすめ作品
★絵で見る十字軍物語
塩野七生(著)新潮社
現代にもつながるキリスト教vs.イスラム教、その対立の原点。聖地イェルサレム奪還のための遠征はどう始まり、どう戦われ、どう破綻したのか――。美しい挿絵とともに壮大な物語へと誘い出す。
★聖☆おにいさん(1)
中村光(著)講談社
世紀末を無事に越えたブッダとイエスは、東京・立川でアパートをシェアし、下界でバカンスを過ごしていた。近所のおばちゃんのように細かいお金を気にするブッダ。衝動買いが多いイエス。そんな“最聖”コンビの立川デイズ。
★憂鬱でなければ、仕事じゃない
見城徹(著)藤田晋(著)講談社
「極端」こそわが命。憂鬱なことが三つ以上ないと不安になる見城徹と、たぎる情熱をクールなオブラートに包んで激しくスウイングする藤田晋――。ふたつの魂が交錯した瞬間、とてつもないビジネスマンのバイブルが誕生した!

加藤 樹忠(かとう しげのり)加藤 樹忠(かとう しげのり)
2001年ソニーマーケティング株式会社入社。2010年から 電子書籍のビジネスを担当し、同年12月、ソニーの電子書籍リーダー“Reader”(リーダー)の日本発売に合わせ、電子書籍ストアReader™ Storeを立ち上げる。現在、店長として当サイトを運営する

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