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アジア女子を取り込め スマートフォンの新市場 ニッセイ基礎研究所 久我尚子研究員に聞く
日本のスマートフォン市場は2010年末から急拡大し、利用者が1000万人を超えました。そして今年の夏からは女性をターゲットとしたスマートフォン商戦が活気を帯びています。女性向け商品として第一の特徴は端末の外観です。スマートフォンが登場した当初、色はブラックのみでした。その後しばらくしてホワイトが市場に出ましたが、今年の夏からはピンクの端末が多く登場し、カラーバリエーションが増えました。小型軽量化も進みました。NTTドコモのCMでは堀北真希さんが「わたし、片手でいいんです」とフィーチャーフォンと変わらない操作性をアピール。女性を意識したスマートフォン端末が一気に市場に溢れました。
女性向けとして、タッチパネルの感応性も鍵となります。静電式の場合、肌から出る弱微電流に反応するため、ネイルが長いと操作しづらくなります。圧力で反応する感圧式であればネイルの先でも操作ができますが、感圧式はマルチタッチができないというデメリットもあります。そうした操作性の工夫も女性を取り込むためには必要でしょう。
微妙な色合いや小型軽量化、操作性の工夫は日本メーカーの得意とするところです。たとえば美容家電を得意とするパナソニック。電動歯ブラシ「ポケットドルツ」の大ヒットの理由はカラーバリエーションと小型軽量化にありました。マスカラを意識して小型化し、口紅を参考に多様なピンクのバリエーションを展開したのです。マーケティング担当者の話では、カラーを増やすにあたって製造側との折衝がかなり大変だったそうです。
外国メーカーは、コストに見合う儲けがないという理由で細かな形状の変更やカラーの多様化を好みません。そうした点をきちんと努力できるのが日本メーカーの大きな強み。今後スマートフォン市場でも同様の動きが見られるのではないでしょうか。男性は概してハイエンドモデルを好みますが、女性は細やかな操作性やデザインを重視します。その点で日本メーカーは優位にあると思います。中国や韓国など東アジアや東南アジアでは日本のファッションやキャラクターが高い支持を得ていますし、かわいいものが好きという女性の嗜好が似ています。日本メーカーによる、女性の嗜好を研究しつくしたデザインや操作性が受け入れられ、日本製の女性向けスマートフォンが広まる可能性が高いと思います。
現在、フィーチャーフォンの新機種の感覚でスマートフォンに乗り換えるユーザーが確実に増えており、スマートフォン市場はますます拡大するでしょう。スマートフォンのメインユーザーは20~30代。高齢者層や若年層への普及には、高価格な通信料と端末料金が課題です。特に高齢者に対しては価格と操作性の両方が求められるでしょう。らくらくホンなどのシニア向け携帯がありますが、「価格が妥当で使いやすければハイエンドモデルを持ちたい、という60代の方の意見もよく耳にしますので、シニア層への市場拡大の可能性は高いでしょうね。高齢単身世帯数は急激に増加しており、2030年には全体の約15%を占めるようになります。見守りや生活支援などのサービス需要が増え、そのゲートウェイとしてのスマートフォン利用が期待されています。中国や韓国では高齢化が急速に進んでいます。シニア層向けにも何かヒントがあるかもしれません。
久我尚子(くがなおこ)
ニッセイ基礎研究所研究員。消費者行動、ITメディアマーケティングを専門とする。2001年株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社。2007年独立行政法人日本学術振興会特別研究員採用。2010年より現職。日本消費者行動研究学会、日本マーケティング・サイエンス学会等所属。修士(工学、学術、技術経営)
聞き手、文:本丸達也、羽田祥子(編集部)
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