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【世界の知財から】第7回 知財の統一と未来のシナリオ

【世界の知財から】第7回 知財の統一と未来のシナリオ

欧州統一特許制度

 世界の知財を語るとき、「世界で統一された特許制度はないのですか?」という質問を受けることがしばしばある。第1回で触れた国際特許出願(PCT出願)は手続の途中を束ねるものではあるが権利の付与までは統一化していない。各国特許庁の審査制度を調和させる動きは加速しているが、完全な統一にはまだ至らない。まして権利を付与した後の裁判制度は各国独立である。
 かかる状況の中、欧州にて「欧州統一特許制度」がついに誕生した。欧州内で単一の権利により権利化され、そして一つの裁判所で訴訟が行われる統一裁判所が確立し、欧州単一特許制度が遂に実現した。1973年の欧州特許誕生以来期待されてきた制度であり、2012年12月11日の欧州議会投票及び2013年2月19日の各国署名を経て,40年とも言われる長期の議論を経た歴史的合意である。
 従来の欧州特許は出願と審査を行い、権利付与の許可が出た後に各国別々に手続をし、権利は各国個別に存在した。権利行使のための裁判も各国別々であった。
 欧州単一特許では、権利を取得するための出願から審査までの手続は、従来の欧州特許と同じであるが、特許付与後、権利の有効化の際に、欧州単一特許参加25ヶ国をまとめて権利化できる。そして、欧州統一特許裁判所は、全参加国について一つの判決を下す。すなわち、特許発明を勝手に模倣して行う侵害への訴訟も、特許を取り消そうとする取消訴訟も一つの判決は全参加国に効力を有する。第一審中央部はパリに、また中央部の支所が技術分野別にパリ・ミュンヘン・ロンドンに置かれる。第二審に該当する控訴裁判所はルクセンブルクに設置される。
 単一特許制度参加国が25ヶ国であるのは、現在EU(欧州連合)が27ヶ国であるところ、イタリアとスペインが参加していないためである。欧州単一特許の公式言語は、従来の欧州特許と同じく英語・ドイツ語・フランス語であり、スペイン語・イタリア語は入っていない。このことがこの2ヶ国の不満であるともされ、CJEU(欧州連合司法裁判所)に提訴している。ただし欧州統一特許裁判所の枠組みにはイタリアは署名を行った(2013年2月)。両国の動きに注目すべき所である。
 かかる多数の国が、国境と各国の制度の違いを超えて一つの権利を持ち、さらに、一つの裁判で複数ヶ国に有効な判決が出る枠組みは世界の知財において他に存在しない。もしもこのようなモデルを発展させて、日本と米国も参加できる三極モデルができると知財の世界地図は変わるであろう。そして、中国・韓国を含む五極モデルはあり得るのか、または日中韓でアジア統一モデルができるのか、はたまた環太平洋で統一モデルができるのか、まだ未来は見えていない。

世界の特許出願件数の増加

 全世界の特許出願件数は増え続けている。2011年には初めて二百万件を突破した。2009年経済危機で減少に転じたが、その後2年連続7%超の伸びを示しており、かかる伸び率が連続していることは1995年以来初めてである。結果として1995年に約百万件であった特許出願件数は、2011年までに約2倍に増加した。


竹下敦也(たけした あつや)
CABINET PLASSERAUD(キャビネ・プラスロー、フランス・パリ)所属。日本国弁理士。東京三菱銀行(中小企業融資)、NASA/JAXA国際宇宙ステーション開発(エンジニアJAMSS所属)、三菱商事(宇宙航空機本部)、科学技術振興機構(大学の海外特許出願・技術移転)を経て2009年より現職。技術と事業の両面を理解する弁理士として、日本顧客サービスグループを設立し、日本企業の欧州での知的財産全般の権利化・訴訟を支援している。1996年東京大学工学部航空宇宙工学科卒、私立灘高校出身。

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