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【実践サバイバル投資術】内閣支持率と株式相場を分析してみたら

バブルもショックも乗り越えて

【実践サバイバル投資術】内閣支持率と株式相場を分析してみたら

内閣支持率40%割れは暴落の前兆か?

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「アベノミクスの3本の矢」という掛け声がいつの間にやら聞こえなくなり、「日銀の追加緩和」による日本株一段高シナリオが怪しくなってきた。そんな折、7月にはギリシャのユーロ離脱騒ぎと中国株の暴落があり、株式市場の為替市場も乱高下した。これに新国立競技場の財源不足問題と安保法制整備をとらえた革新ロビーの巻き返しもあって、安倍政権の内閣支持率は次第に低下してきているようだ。
 これに対して、一部の市場関係者から「内閣支持率40%割れ」を危惧する声が聞こえはじめた。なぜこれを気にするかと言うと、これが外国人の日本株売りにつながり、その結果、株価が大幅下落すると考えられているからである。
 図1は2000年1月からの内閣支持率と調査時点のTOPIX(各月1,2週の平均値)だ。まず言えるのは、内閣支持率はどの内閣でも最初は高いが次第に下がることと、途中で断続的に戻したり、下げ渋ったりすることはあっても、上昇トレンドになることはないということだ。長期政権となった小泉政権でさえ下げ止まりが精一杯なので、現政権の内閣支持率低下ペースは歴代内閣でもかなり高水準で保たれている部類といえる。とはいえ、“注意水準”とされる40%にそろそろ差し掛かりつつある。
 オレンジ色の横線が内閣支持率40%の水準で、TOPIXチャート(青線)上の黄色とオレンジの矢印で示した点が、歴代内閣支持率が40%割れとなったタイミングである。自民党政権下の黄色の矢印では、2000年6月の森政権や2007年6月の第一次安倍政権のようにその後しばらくして株価が急落していることもある。一方、同じ自民党政権下の内閣支持率40%割れでも、2002年6月の小泉政権時の一時的な低下局面や、2008年5月の福田政権、2008年12月の麻生政権の支持率急落時のように、世界的な株価同時下落の最中であったため日本の内閣支持率が関係しているとは言い難いときもある。
 一方、オレンジ矢印の3地点に示す民主党政権時の内閣支持率40%割れの後では、短期的な反発とはいえ株価は上昇している。そうなると、少なくとも内閣支持率40%割れが株価暴落の前兆とはなっていなかったことになる。
 とはいえ、「株価下落→景気が悪い→自分たちは悪くない→政府が悪い」と国民が考えるのは世の常だ。そこで、株価の騰落率と内閣支持率の関係を統計的に調べてみた。その結果は、「TOPIXが前月比で1%下がると内閣支持率はどうやら0.31%程度低下する」(信頼度95%)ことと、「内閣支持率が30%割れとなるような状況では、それ以外の時に比べてTOPIXが前月比1.78%程度下落している」(信頼度90%)ということが分かった。これには2007年から2012年まで続いた株価の暴落・低迷と6連続の短命内閣の影響が大きいと想像されるものの、内閣支持率が40%を大きく下回って30%に届きそうな状況だと日本株投資には良い投資タイミングとはいえないようだ。しかし、因果関係がこれだけでははっきりしない。

外国人投資家の立場で考えれば内閣支持率は極めて重要

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 例えば我々がインド株に投資しようと考えた時、現在のようなビジネス推進派のモディ政権で国民の支持が厚い状況と、経済発展に後ろ向きなリーダーでかつ政治的な基盤が弱い状況では、どちらがインド株に投資したいと思うだろうか? 同様に、インドネシア、フィリピンでも、現在のように強固な政治基盤を持っているリーダーが構造改革と経済発展を志向している方が、かつての不安定な政治状況よりも、我々が“外国人”としてそれらの国の企業への投資を考えた場合には好材料となる。
 そうであれば、数字として分かりやすい内閣支持率は、日本国内にいて多くの情報を得られる我々よりも日本株投資を行う外国人投資家が重視していることは容易に想像できる。まして、外国人投資家の日本株市場の存在感は大きく、売買フローで東証一部銘柄の6割を占めているのだから、内閣支持率が外国人による日本株投資額に影響を与え、結果として株価も左右している可能性は高い。
 図2は過去10年間の内閣支持率と外国人投資家の東証一部銘柄の売買動向の推移を見たものだ。
 これを見ると、薄い青線の海外投資家の売買動向が概ね内閣支持率と重なっている。つまり、新政権発足直後で内閣支持率が高いときは外国人が日本株を買い進め、内閣支持率が落ちてくると外国人投資家は次第に売り転じることになる。それが大きく乖離しているのは図中の緑の矢印の地点のように、内閣支持率が大きく下がっているのに外国人の日本株買いが急増しているところだ。しかし、これは2009年7月の麻生政権末期と2012年末の野田政権末期なので、政権交代・新内閣誕生を見越して行動していたものといえるだろう。
 ちなみに海外投資家売買動向と内閣支持率の関係を統計的に分析したところ、「内閣支持率が1%上がるとその月の外国人の日本株買い越し額が約160億円増加する」という結果が得られた(信頼度99%)。
 ここで気になるのが、「結局のところ、内閣支持率40%を下回ったら日本株への投資は手仕舞いするべきか否か」という点だ。

内閣支持率は41%が重要なシグナルか?

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 図3は2005年1月から2015年6月までの期間で、内閣支持率を投資シグナルとして使った場合の投資試算だ。TOPIXに連動するETFや投資信託などで運用していたと仮定して、毎月上旬に公表される数値が一定の値以下で月末にポジションを全て手仕舞い、再び一定数値以上になったら月末に買いポジションを採るという前提となっている(売買手数料、税金、配当金は考慮せず)。
 その結果は、内閣支持率が41%以下になったら月末にポジションを全て手仕舞うという戦略のパフォーマンスが最も良好であった(緑線)。同期間のTOPIX(黒線)が約1.5倍となっていたのに対し2.5倍にも増えていたので、極めて良好なパフォーマンスといえる。ちなみに市場関係者で噂されている内閣支持率40%をシグナルに使ってもそれに準じた良好なパフォーマンスであった。
 内閣支持率はどの内閣でも時間が経てば下がる傾向にあるので、それより小さな値を投資シグナルにするということは、それだけ長い期間ガマンしてポジションを維持することになる。ところが内閣支持率が29%以下になるまで頑張ってしまうと投資パフォーマンスはガクンと落ちてしまう(オレンジ線)。これが24%以下になるともう一段パフォーマンスが落ち、20%ともなると(赤線)ポジションをほったらかしていたのと大差がない結果となっている。
 ちなみに安倍政権の2015年7月の内閣支持率は41%まで低下しているので、ちょっと気がかりな状況だ。一旦41%以下にまで低下した内閣支持率が再び大きく戻した事例は、2002年に北朝鮮訪問を成功させた小泉内閣と2010年に党内抗争を勝ち抜いた菅内閣ぐらいしかない(ただし菅内閣の高支持率は極短期で再下落)。となると、これから数ヶ月の内閣支持率を注視し、さらに低下するようであれば内閣支持率41%あるいは40%程度を日本株の投資シグナルとする手法を利用するのも一案と思われる。

(念のため付言すると、上記は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではない。)


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土居雅紹(どい まさつぐ)
eワラント証券株式会社COO。CFA協会認定証券アナリスト、証券アナリスト協会検定会員。1964年静岡県生。88年一橋大学卒業後、大和証券入社。証券アナリストとして活躍。93年米国ノースカロライナ大学経営学大学院にてMBA取得。大蔵省財政金融研究所などを経て、ゴールドマン・サックス証券へ。00年同社でeワラントを開発・導入。11年8月より現職。時代に合った投資方法を研究、その分析力には定評がある。

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