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【実践サバイバル投資術】“NISAの5年”が意味するところ

【実践サバイバル投資術】“NISAの5年”が意味するところ

NISAの売れ筋と懲りない面々

 一人100万円(制度改正後は120万円)まで5年間に限り株式や投資信託の譲渡益と配当が非課税というNISA(ニーサ:非課税投資口座)が、2014年6月末で712万口座、投資総額1兆5600億円と好調な伸びとなっている(出所:金融庁)。投資先は66.5%が投資信託、株式が31.7%で、ETF(上場投資信託)とREIT(上場不動産投信)はそれぞれ0.9%しかない。合理的な投資行動であればもう少しREITやETFが多くてもよさそうなものだが、どうも流されやすい投資家が多いようだ。
 証券会社などが発表している投資信託のNISA売れ筋ランキングを見ると、「毎月分配(決算)型」、「海外REIT」、「好配当」、「ハイ・イールドボンド」、「プレミアム」、「通貨選択型」といった名前が付いているものが多い。NISAは最長5年と決まっているので、投資資金をすぐに引き出し始める「毎月分配型」の方が気分がよいというなら、通常の投資ほどデメリットが大きい訳ではない。しかし他には問題がありそうだ。まず「海外REIT」が大人気だが、REITも暴落時には株式と同じように下がり、海外ものは円高なら損失が出ることを知っているのかどうか。それが「好配当」ということは、取引量が少ないとか、運営企業の実績が少ないとか、物件が余り良くない、といった可能性がある。理由もなく他のREITより利回りが高い「オイシイ」話は無い。
「ハイ・イールドボンド」とは低格付け債券、つまりBB以下の“ジャンク債”といわれるもので倒産確率が高い代わりに利回りが高い。サブプライムバブルの原因となった低所得層への高金利住宅ローン債権と同じ類だ。リーマンショックで分かった事は、この手の高金利債券はクラッシュ時に理論より多く共倒れになることだった。最高格付けのAAAだったものが破綻したのはほんの7年前、子供なら大昔だが、業界のプロにとってはちょっと前の出来事で覚えていないはずはない。
 そして極めつけが「プレミアム」、「インカムプラス」、「通貨選択型」といったもの。名前の“プレミアム”とはアイスクリームと違って高級品のことではない。ブラジルレアルやトルコリラ、ロシアルーブルといった新興国の通貨が暴落した時に損失を被るオプションを売る代わりに、貰う前金のことだ。これで当面の利回りをアップする仕組みになっている。いうまでもなく、バブルが崩壊すれば新興国通貨は大きく売り込まれる。ついでに言えば、これらの投資信託はヘッジ先の欧米の巨大銀行にガッツリ手数料を取られているはずだ(本来受取るべきお金が少ないだけなのでオプションに詳しくないと分からない)。次にバブルが崩壊すれば、知らないうちに売っていた新興国通貨オプションによる損失が表面化することになるだろう。


土居雅紹(どい まさつぐ)

eワラント証券株式会社COO。CFA協会認定証券アナリスト、証券 アナリスト協会検定会員。1964年静岡県生。88年一橋大学卒業後、大和証券入社。証券アナリストとして活躍。93年米国ノースカロライナ大学経営学大 学院にてMBA取得。大蔵省財政金融研究所などを経て、ゴールドマン・サックス証券へ。00年同社でeワラントを開発・導入。11年8月より現職。時代に 合った投資方法を研究、その分析力には定評がある。

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