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【実践サバイバル投資術】暴落に脆弱な投資スタイル

バブルもショックも乗り越えて

【実践サバイバル投資術】暴落に脆弱な投資スタイル

「何かイイ株知ってる?」

 株価が堅調になってメディアがはしゃぎ出すとこういった質問を受けることが増える。相手が業界関係者なら思いつくままに銘柄を挙げても気にならないのだが、投資経験が少ないと思われる場合には回答に困ってしまうことが多い。といっても、私が「確実に儲かる銘柄」を知っていて出し惜しみをしている訳ではない。
 本来きちんとした投資アドバイスをするには、保有している不動産や骨董などを含めたの全資産の額、そのうち株式や国債、債券、預貯金などの流動性が高い金融資産の額、これから運用したいと考えている資金の性質(余裕資金か数年先に使うお金か)、年齢、株式やFXといったリスク投資の経験、経済・税制に関する知識の程度、当人の性格(特に損失を抱えた時にどの程度ストレスを感じるか)、どの程度のリターンを期待しているのか、などの情報が必要になる。
 例えば、某社の株式がいくら割安に放置されていたとしても、必ず上がるかどうかは誰にも分からないし、分かると断言するのは詐欺師だけだ。また、市場で評価されるまでに10年かかり、その間に相場全体が暴落すれば半値になる時期があるかもしれない。こういう投資対象がピッタリの方もいれば、値動きが気になって夜も寝られないという方もいる。つまり、ある人に「良い投資対象」であっても他の人にとっては「ありえない投資先」となる。

自分の投資スタイルを知るべし

 運用のプロなら、運用対象は自分の得意分野だけで、他の市場参加者に対して優位性が少しでもありそうな投資手法を持っている(あるいはそう主張している)ことが多い。そうでなければ、株価指数に連動させることだけに徹して低コスト運営を売り物にすることになる。
 運用対象をとってみても、株式、債券、外国為替、原油や金などのコモディティ、不動産、不良債権など様々だ。さらに、同じ株式運用の場合でも、日本株、米国株、中国株などに分かれているし、その投資手法となると、数年単位でじっと待つものから、株価指数の銘柄入れ替え等の市場の歪みだけを狙って裁定取引を行うもの、企業を買収して事業再編によって価値を高めるもの、株価指数先物や個別株の売買フローの極短時間の歪みを超高速取引で狙うもの、株式そのものではなくデリバティブ取引を行うものなど様々だ。
 同様に、個人投資家といっても、プロトレーダーから超初心者まで千差万別。そして高いパフォーマンスを続けている方ほど、自分のやり方(投資スタイル)を明確に意識しているように見受けられる。

暴落に脆弱な投資スタイルの
3つのパターン

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 下記のような個人投資家にありがちな3つの投資スタイルは、一般に暴落への耐性が低い。もし、該当してしまっていたら、近い将来に起こるかもしれない次のバブル崩壊で泣きをみないためにも、今からの準備が必要と思われる。
◎ダボハゼ・塩漬け投資

 投資初心者はまずここからスタートするので、誰でも通る道といえる。マネー雑誌等で紹介されている銘柄にすぐに飛びついたり、銀行や証券会社の店頭で勧められるままに投資信託を購入してしまったりする。また、“私は直感が強いほうだから、きっと上手く行く”となぜか妙な自信を持っているのがこのタイプの特徴でもある。ちなみに、冒頭の「何かイイ株ない?」と聞いて回り、自ら検証することなく投資してしまうのはこのタイプだし、“誰でも儲かる上げ相場”で有頂天になり、天井で買ってしまったり、大底で投げ売ってしまったりするのもたいていこのタイプだ。投資家の中では常に多数派、投資家の大部分がこれに属するので、「大衆は常に間違う」などと言われる所以でもある。
 バブル崩壊や自然災害などによる突発的なショックなどの暴落に対して、このタイプは全く備えができていない。その結果、ほぼ間違いなく株価指数より少し悪い損失を蒙る。確たる理由なく無節操に売買した場合、当人が丹念に銘柄を選んでいるつもりでも10銘柄ほども保有していると相場全体の値動きに近いポートフォリオになる。これにコストが高い投資信託などを買わされている分がマイナスされる。たとえばTOPIXが40%下落した時に45%~50%下がっているような状況だ。
 このタイプが暴落に備えるのであれば、まずここに属してしまっている現実を認識し、自分の投資手法をしっかりと定めることから考えてみることが不可欠といえる。

◎毎月積み立て投資のみ

 いろいろな投資手法を試してみたが結局上手く行かず、投資のための時間もあまり使いたくないので、毎月コツコツ投資信託に積み立て投資を行っているタイプだ。
 投資判断に主観を入れず、投資タイミングを図ることは不可能と割り切り、“平均点をとればよい”と考えている点において、投資スタイルは確立されている。このため、戦略不在のダボハゼ・塩漬けタイプよりは好結果となることが多いし、投資に手間を掛けないので時間を投資以外のことに使うことができる。
 なお、このグループに属している投資家は、“長期間続けていれば絶対に勝つ”といった強い信念を持っていることが多いが、実はその根拠はかなり薄弱である。現実には、この投資スタイルで成功するためには、投資対象が長期間に亘って上昇し、かつ投資にかかるコストが安い必要がある。つまり、どこの平均点を取りたいのか、そのためのコストをできるだけ安くできるのか、ということだ。
 図は日本、米国、中国(香港)、インドの主要な株価指数の推移を相対的に示したものだ。日本株(紫チャート)を見ると、2015年4月に1996年の水準にようやく戻っただけだが、同じ20年弱の投資期間で、中国株なら2.5倍、米国株なら3.3倍、インド株なら9.6倍にもなっている。その中国株(赤チャート)にしても過去10年をみると投資元本にも戻っていない。つまり、10年単位の長期投資を考えるなら、どこに投資するかが極めて重要で、人口動態からみて、次の10年、20年間の投資先として日本や中国はおそらく有望ではない。
 この投資スタイルでは、相場がクラッシュすれば必然的に株価指数と同程度の損失を蒙る。備えるというよりは、“投資のことは忘れる”しかないし、突発的な支出があれば暴落の底値でも売らざるを得ない。対処法としては、手元に常に十分なキャッシュを残す、他の投資手法を併用するといった対策が効果的だろう。
◎最大損失を管理しない
 短期トレーディング

 FXや株価指数先物、個別株などに、過去の値動きのパターン分析や需給解析、イベント狙いなどの手法で、数時間から数日程度の短期トレーディングを行っている個人投資家も多い。総じて投資にかける時間も労力も多いので、お金に稼いでもらうというよりは、お金と労力を使って稼ぐ手法となる。
 ポジションを保有している期間が短いので、暴落には意外と強そうだが、最大損失の管理ができていない場合にはいずれ市場から退出させられることになる。相場のクラッシュに備えるためには、FXや先物ならロスカット注文を必ず入れておく、上場オプションの売りポジション(相場急変時に甚大な損失を蒙る可能性がある)は絶対に採らないといった最大損失を管理する投資規律が必要不可欠である。

(念のため付言すると、上記は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではない。)


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土居雅紹(どい まさつぐ)
eワラント証券株式会社COO。CFA協会認定証券アナリスト、証券アナリスト協会検定会員。1964年静岡県生。88年一橋大学卒業後、大和証券入社。証券アナリストとして活躍。93年米国ノースカロライナ大学経営学大学院にてMBA取得。大蔵省財政金融研究所などを経て、ゴールドマン・サックス証券へ。00年同社でeワラントを開発・導入。11年8月より現職。時代に合った投資方法を研究、その分析力には定評がある。

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