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【実践サバイバル投資術】極意19 グローバル量的緩和バブル

バブルもショックも乗り越えて

【実践サバイバル投資術】極意19 グローバル量的緩和バブル

今回も周回遅れの日本

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 多くの市場関係者の今年最大の関心事は「米国の政策金利の引き上げがいつ始まるか」である。ただ、現実に米国での利上げが始まっても、おそらく経済専門紙の一面に出るだけで、一般紙では一面トップ記事ではなく地味な扱いになるだろう。しかし、これが既にパンパンに膨らんでいる世界的な超巨大バブルの“終わりの始まり”となる可能性が極めて高いのだ。
「えっ!どこがバブル?消費税と食料品の価格が上がっただけでしょ」
 というのが大部分の日本の生活者の実感かもしれない。実際、株価が持ち直したといってもその恩恵を受けてホクホクなのは都会に多い富裕層、それも高齢者ばかりだし、地方経済は少子高齢化の荒波を跳ね返す勢いがなく、ちょっとは景気が上向いているといえるのは一部の中核都市だけだ。
 だからといって、日本の事情だけを見て、「これから景気が良くなるはず」と楽観的に考えることはできない。「失われた20年」でも何度となく繰り返されたように、米国株が暴落すれば世界中の株価が下げる。それに加えて、日本の東証一部上場銘柄を動かしているのは未だに海外の投資マネーなので、米国株が下がって日本株だけ例外的に下げ渋ることは想像しがたい。そして、その米国株のこれからの動向を左右するのが米国の政策金利の引き上げなのだ。
 現状を把握するために、今世界で起こっている前代未聞の金余りの状況を見てみよう。図1は米国、ユーロ圏、日本のベースマネーの相対的な変化を表したものだ。ベースマネーとは金融機関が中央銀行に預けているお金と市中に出回っている紙幣や硬貨の残高の合計のこと。かなりざっくりした説明になるが“これが増えると世の中のお金の量が増える種銭”と考えてよい。
 各国のベースマネーの推移を見て際立っているのが、2008年末から米国(米連銀)とユーロ圏(欧州中央銀行:ECB)のベースマネー増加の突出ぶりだ。これは2008年秋の世界恐慌直前とまで言われた危機的な状況に際して、欧米の中央銀行がお金をジャブジャブにして景気浮揚を狙う量的緩和政策を始めたためだ。
 一方の日本は、興味深い動きをしている。まず、2001年から2006年にかけて日本のベースマネーがちょこっと跳ね上がっている。これは日銀が世界に先駆けて量的緩和政策を“発明”し、実施した時期だ。皮肉なのは量的緩和を“発明”した日銀が2008年末の危機に際しては極めて緩慢にしか量的緩和を行わなかったことだ。この結果、欧米との“紙幣増刷競争”に出遅れた日本だけが極度の円高となり、世界の不況を引き受けることになったのは記憶に新しい。
 その日本も、2012年末から始まったアベノミクスの一環として日銀が2013年4月に打ち出した異次元緩和以降、ようやく周回遅れで輪転機のスピードを上げてどんどんベースマネーを供給することになった。
 いつの時代でも金余りはバブルの主因だ。お金は同時に重要な経済の血液でもある。これを減らすとどうなるかは、2012年後半からベースマネーを縮小し、お金を市場から引き上げたユーロ圏がどうなったのかをみれば分かる。すぐに景気が失速しデフレ目前となって、2015年3月から以前より大規模な、国債買い入れによる量的緩和政策を導入せざるを得なくなった。それほど中央銀行がお金をジャブジャブにするか、引き締めるかは景気にとって重要なのだ。


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土居雅紹(どい まさつぐ)
eワラント証券株式会社COO。CFA協会認定証券アナリスト、証券アナリスト協会検定会員。1964年静岡県生。88年一橋大学卒業後、大和証券入社。証券アナリストとして活躍。93年米国ノースカロライナ大学経営学大学院にてMBA取得。大蔵省財政金融研究所などを経て、ゴールドマン・サックス証券へ。00年同社でeワラントを開発・導入。11年8月より現職。時代に合った投資方法を研究、その分析力には定評がある。

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