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【トレンド・プレス】世界が認めた国産ラム酒「ナインリーヴズ」にかける想い ~たった一人の蒸留所~

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【トレンド・プレス】世界が認めた国産ラム酒「ナインリーヴズ」にかける想い ~たった一人の蒸留所~

世界中のラム酒を厳選し、101銘柄をピックアップしたフランスのラムガイドブックに、日本で唯一掲載された国産ラム酒がある。
滋賀生まれのラム酒「ナインリーヴズ」だ。初出荷から2年余りでテレビ、新聞、雑誌、ウェブを問わず、国内外のメディアに取り沙汰されること40回以上。
数々の賞も受賞し、都内の一流ホテルもこぞって入荷、少量生産のため、売り切れも続出している。
話題のラム酒とはいかなるものか、その造り手を訪ねた。

異業種からの挑戦“完成品”への憧れを求めて

_MG_0765 2015年9月にベルリンで催されたラム酒の国際品評会、ジャーマン・ラム・フェスティバル2015のホワイトラム部門において、日本の「ナインリーヴズ」がカテゴリ最高賞のゴールドを受賞した。同酒の国際品評会での受賞はこれで5度目。世界で唯一のラムアンバサダーであるIan Burrellには、「とにかく、その香りと味が素晴らしい。他のホワイトラムとは明らかに別物であり、価格が数倍する価値がある」と称された。
「一から十まで責任を持って自分の手で造った『完成品』を、お客さんに届けたかったんです」
 滋賀の山間にある小さな蒸留所でそう語ったのは、ナインリーヴズの生みの親、竹内義治氏。発酵や蒸留などの製造工程だけでなく、ボトリングやラベル貼りまでたった一人で行っている。その受賞歴からは信じられないが、本格的にラム酒造りを始めて、まだ3年足らずである。
「もともとは家業である大手自動車メーカーの下請けとして、車の部品を作る会社で経営に関わっていました。しかし長年モノづくりに携わっていると、部品ではなく全てを自分の手で作るモノづくりをしたいと思うようになるんですね。でも、全く新しいことをやるには無理がある。今までの技術や知識を生かせるものを探し、ラム酒に行きつきました」
 自動車部品とラム酒の何が共通しているのかと思えば、自動車の樹脂製品も蒸留酒も、化学に基づいて造られている。製造管理も工程管理と同じノウハウが生かせる、ということらしい。とはいえ誰もができることではない。酒造り、引いてはモノづくりに対する真摯な姿勢と一定の見識があればこそ成せる業だろう。海外でのナインリーヴズの評価からは、竹内氏が本業であった部品製造でどれほどのものを培ったかが窺い知れる。

ジャパニーズクオリティを追求したこだわりの原料と製造工程

 日本で“ホワイトラム”と聞いて、それが長期間熟成させない無色のラム酒を指すと知る人は、酒に関わる職業かよほどの酒好きでない限り、あまり多くはない。それほどラム酒は、国内ではマイナーな酒といえるが、数ある蒸留酒の中で竹内氏はなぜ、ラム酒を選択したのか。
「ウイスキーは最近メジャーになってきて、蒸留所も国内にたくさんあります。はじめから世界進出は視野に入れていたので、ウイスキー以外で考えて、日本では少ないけれど世界的に需要の高いラム酒を選んだのです」
 今までも国内でラム酒を製造しているメーカーはあったが、小笠原諸島や沖縄などの離島に限られていた。原料となるサトウキビや黒糖が容易に手に入る環境だからだろう。竹内氏が滋賀に工場を構えたのは、もう一つの原料にこだわったからである。それは「水」だ。
 ナインリーヴズに使われている水は、日本でも一箇所でしか採水することのできない、地下50メートルから汲み上げた長石鉱山から湧き出す貴重な硬度12の超軟水。
「日本のモノづくりは、海外を目指すことで発展してきました。ナインリーヴズも味に関して言えば洋酒を目指しています。だけど欧米の猿マネはしたくなかった。どうやって日本らしさを出そうかと考えたときに、原料と製造法で違いを出そうと思ったんです。水を含め、原料には徹底的にこだわっています。黒糖は沖縄から仕入れていますし、酵母ももちろん国産です」
 製造工程も海外にはない独自の方法。竹内氏の造るナインリーヴズは、正真正銘のジャパニーズ・ラムだ。蒸留の基本は、国産ウイスキーの雄、イチローズモルトで有名な株式会社ベンチャーウイスキーの秩父蒸留所で学んだ。わずか3日間の研修であったが、3日で勘所を押さえられないようでは駄目だというのが、自動車業界で培った竹内氏の持論。試作品を作ったのが2012年2月のこと。それからたった1年で、酒造免許を取得し、イメージする味を再現するのに適したウイスキーと同じタイプの蒸留釜をスコットランドより取り寄せ、工場を建設し、翌年の3月に初仕込みを行った。

「ピュアなモノづくり」を目指すマイクロディスティラリー哲学

_MG_0845 初出荷から2年余りで数々の賞を受賞したことも手伝い、今ではイギリス、フランス、ドイツ、イタリア、オーストラリア、デンマークと世界6カ国に出荷するまでになった。その他の国からも、問い合わせが来ているという。本人はこの状況をどう思っているのだろうか。
「賞は確かに嬉しいのですが、それを狙って造っているわけではないので(笑)。マイクロディスティラリー(小さな蒸留所)の存在意義を考えると、たとえばワインのように毎年味わいが違うというような、ユニークな側面にあるのではないかと考えています。本当にいい賞を獲ろうと思ったら、いろんな品評会に出品して、味を安定させなきゃいけない。僕の技術ではそれはできないし、それをやってしまうと、マイクロディスティラリーの意味がなくなってしまうと思うんです。そもそも生産量を増やして拡大しようとは思っていません。経営の話になるとすぐ量の話になりますが、中小企業とかニューカマーが目指すものは、もう少しバリエーションがあってもいい。量ではないビジネス、言い換えるなら“ピュアなモノづくり”がしたいんです。食っていける範囲で、愛情と丹精を込めて、このペースでやっていきます。大手にしかできないことがあるように、小規模でなければできないことをやっていきたいですね」
 一つ一つの言葉を淀みなく、力強く話す竹内氏。その気になれば多少の事業拡大は容易いだろうが、従業員が増えれば、その経費を捻出するためにそろばんを弾かなければならない。よきモノづくりのために、今後も人を雇う予定はないという。どんな物にも、造り手の人柄が大小問わず現れる。ナインリーヴズを今度ゆっくり味わってみたいと、竹内氏の人柄は素直に思わせてくれる。
 最後に、改めて今後の目標を尋ねると、笑顔でこう答えてくれた。
「特にないですね。皆さんに楽しんでいただければ、それが一番です」
 日本の酒造業界の新たなブームを予感させるナインリーヴズ。その造り手は、これっぽっちも気取ったところのない、まったく快活な御仁であった。


竹廣株式会社 ナインリーヴズ蒸留所
www.nine-leaves.com

文|志馬唯

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