ホーム / Business / 企業 / ~in their own ways 彼らの選択~「不登校をチャンスと思うくらいがちょうどいい」作家・ジャーナリスト 小原田泰久(後編)
~in their own ways 彼らの選択~「不登校をチャンスと思うくらいがちょうどいい」作家・ジャーナリスト 小原田泰久(後編)

~in their own ways 彼らの選択~「不登校をチャンスと思うくらいがちょうどいい」作家・ジャーナリスト 小原田泰久(後編)

作家・小原田泰久は、最近自身のブログなどを通じ、不登校問題に積極的に発言している。「不登校バンザイだ」「(不登校児は)自分の道を歩んでいける才能のある子」など、そこには不登校への肯定が並ぶ。見方によっては不謹慎と捉える人もいるかもしれない。だがそれらすべては自らが〈不登校児の親〉を経験した上で発せられた言葉なのだ。

作家・小原田泰久の著書に『わがままなあなたがいちばん』という作品がある。家に引きこもってしまった少女が、ある不思議な経験を通して自分を見つめ直し、少しずつ生きる力を獲得していくという物語だ。同作は1999年に出版されたが、ほどなく発行元の経営が行き詰まり、お蔵入りとなってしまう。それを昨年、小原田は自社から再出版した。
15年の時を経て、なぜ今この本を世に送り出したのか。そこには作家としての「せっかく書いた物語」という気持ち。そしてもう一つ、この間、自分が〈不登校の子を持つ親〉となり、「この本に僕自身が救われた」という経験から、「今、この本を必要な人がいるかもしれない」という思いがあったからだ。
「この本を書いて、読者の方から不登校に関する相談を何度か持ちかけられた。その度に『お子さんを信じてください。大丈夫です』と答えていた。ところがいざ自分の子が学校に行きたくない、行けないという状況になったとき、『この子はどうなってしまうんだ』と、自分でも想像しなかった大きな恐怖心や焦りが襲ってきた」と当時の様子を振り返る。
朝、お腹が痛いと言って学校を休もうとする娘に「甘ったれるな」と時に怒り、叱咤する。もちろんベースにあるのは娘を思う親心。だが状況は何も変わらない。
学校への相談、環境を変えるための引越し、フリースクールやチャレンジ校といった多様な教育機関を調べ、実際に訪ねる。そんな風に当事者として問題と向き合っていく過程で、小原田は自分たち親の問題という視点から不登校を考えていくようになる。
「不登校の子は親が思っている以上に罪悪感を感じている。それでも行くことができない、行かないと決めた子どもたちの覚悟を僕ら親はちゃんと受け止めているだろうか」

子どもたちは想像以上にたくましい

最初の出版から15年を経て自ら再発行した著書『わがままなあなたがいちばん』。子ども向けに書かれた本だが、読者には不登校児を持つ親なども多い。ホームページでは自身の体験談を通したコラムなどを読むこともできる。 www.irukanogakko.jp

最初の出版から15年を経て自ら再発行した著書『わがままなあなたがいちばん』。子ども向けに書かれた本だが、読者には不登校児を持つ親なども多い。ホームページでは自身の体験談を通したコラムなどを読むこともできる。
www.irukanogakko.jp

たとえば学校というコミュニティに居場所を見つけられない子どもの内には、皆と同じでいることに対する違和感があるのかもしれない。「視点を変えればそれは独自性や創造性じゃないか」と小原田は指摘する。
「大学を出てやりたいことが見つからず、漫然と就職する。結果、数年で離職する若者も多い。それは“皆と同じ”ように生きる中で、自分をみつめてこなかったからかもしれない。僕の娘がそうだったように、不登校を機に自分と向き合うことで、子どもが得るものはすごく大きい。不謹慎かもしれないけれど『不登校になったことをチャンス』と思うくらいでちょうどいい」
前編で触れた障がい者に対し小原田は彼らを一括りの弱者と捉えないのと同様、不登校についても“多様性”や“個性”として考える。それは「学校という枠に無理やり押し込めるのではなく、『この子はこんな小さな枠には収まらない』と視点を変えることで、不登校の問題がまったく違った景色にみえる」ことを当事者として経験したからだ。
小原田は「まだ構想段階だけど」としながらも、「今度はオトナを主人公にした不登校の話を書いてみようと考えている」と話す。
「身近な存在の親の価値観を変えることが大事。けれど多分これが一番難しい。ただ慌てふためいた当事者として、『子どもたちは思っている以上にたくましい』ってことを伝えたいんだ」
(文中敬称略)


小原田泰久(作家・ジャーナリスト)
1956年三重県生まれ。名古屋工業大学工学部卒。メーカー勤務の後に著述の世界へ。イルカが持つ人への癒し、ヒーリング効果にいちはやく注目し、「イルカが人を癒す」(KKベストセラーズ)「イルカみたいに生きてみよう」(大和書房)などの話題作を発表。最近ではゲストを招いてのトークサロンを自ら主催するなど著述の枠を超えた活動を行っている。

文・写真|佐藤 久

Scroll To Top