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地域力を生み出す仕事のメソッド  デザインの力で地域に新たな魅力・活力を生み出す[第2回]

地域力を生み出す仕事のメソッド デザインの力で地域に新たな魅力・活力を生み出す[第2回]

地域にあった技術、地方に残っている産業を、現代の商流に合わせビジネスを生み出す地域産業が盛んだ。
地域に根ざしながら自社の強みを生かし、新しいビジネスを生み出す秘訣はどこから湧き出るのか?
いくつかの例をふまえながらそのヒントを探っていく。

01|デザインを営業ツールに
セトモノを美術館収蔵品にまで高めた陶磁器メーカー

確かな技術力とデザインが生み出すさまざまな商品

確かな技術力とデザインが生み出すさまざまな商品

「セトモノ」という言葉を耳にしたことはあるだろうか? ある世代では、茶碗や皿などの陶器を総称して「セトモノ」という言葉を使う。「セトモノ」とはもともと愛知県を代表する陶磁器「瀬戸焼」のことだ。
 一昔前は、「セトモノ」は普及品として全国で幅広く使われていたが、焼き物自体、海外の生産が多くなり現代では昔ほど「セトモノ」の呼び名を聞く機会も減ってきている。なにより、普及品として扱われてきた「セトモノ」に、美意識を求めることなど皆無といっていい状況だった。

世界各国で販売されている一輪挿しの「still green」

世界各国で販売されている一輪挿しの「still green」

 しかし、その逆説的な発想で成功を収めている会社がある。それが愛知県瀬戸市の「セラミック・ジャパン」だ。このセラミック・ジャパンは、創業当時の40年前から普及品である「セトモノ」にデザインというエッセンスを加え、ただの家庭用品を美術館に収蔵されるアイテムにまで昇華させてきた。
 創業当時は普及品の「セトモノ」にデザインを求める人は少なく、いかに早く安く作るかが当たり前の時代だったはずだ。それを当初からデザインが事業の差別化になると直感し、生みだした製品の数々は、今ではMoMA(ニューヨーク近代美術館)のパーマネントコレクションとして収蔵されたり、全国のデザイナーから製品化の依頼を受けたりするなど、「デザイン」が言わば営業代わりとなって事業活動を推し進めているという。
 中小の製造業となると大手メーカーなどからの依頼をこなすだけで、なかなか自ら営業を仕かけることは難しい。しかし、このセラミック・ジャパンの取り組みは、「デザイン」が営業ツールとなりうるということを証明した、象徴的な事例だといえるのではないだろうか。

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株式会社セラミック・ジャパン
歴史ある焼物の街、愛知県瀬戸市に1973年に創立。当初から一貫したデザインポリシーのもと、優れたデザイン性と瀬戸の伝統技術のコラボレーションにより多くの製品を生み出している。その実用性と芸術性の高さが評価され、さまざまなデザイン賞に輝いている。
愛知県瀬戸市中品野町60
TEL 0561-42
www.ceramic-japan.co.jp

02|オーガニックを資産に
徹底的なこだわりが
差別化要因になった癒しの宿

窓を開放すると奥行き4mのバルコニーとの一体感が心地よい多目的スペース。ヨガや読書などをしたくなる場所だ

窓を開放すると奥行き4mのバルコニーとの一体感が心地よい多目的スペース。ヨガや読書などをしたくなる場所だ

 長野県北安曇郡池田町にオープンしたカミツレの宿「八寿恵荘(やすえそう)」は、ヨーロッパの厳しいBIO基準の規約を受け、日本で初めて「BIO HOTEL認証」※を取得したオーガニックの宿だ。
 自社農園や近隣地域で栽培した地産地消の有機野菜の食事はもちろん、寝具やタオルなども全てオーガニックコットンを採用。施設の建材や内装材は無垢材を使用し、壁も漆喰で仕上げるなど可能な限り自然素材を使用するという徹底ぶりだ。
 そこまでこだわる理由は、滞在者に健康や安心を感じてもらうためだ。この宿を運営するのは、もともとカモミールの入浴剤を30年以上製造販売している「華密恋(かみつれん)」という化粧品ブランドを手がけるカミツレ研究所が運営を行っている。このカモミールの入浴剤の愛用者は、アトピーを患っている人や、乳がん治療により肌の乾燥を感じている人など、生活環境に対しても敏感な人も多いという。そのような背景もあり、できるだけ自然に近いストレスを感じない宿を作りあげた。

共同で食事をするダイニングルーム。宿泊者がここに集まり食事をするので必然的にコミュニケーションが生まれそうだ

共同で食事をするダイニングルーム。宿泊者がここに集まり食事をするので必然的にコミュニケーションが生まれそうだ

 また、地域に根ざすビジネスを基本に考え、宿の建材には地元池田町の木をふんだんに使用し、熱源には池田町の不要木材を利用した地域初の木質チップボイラーを導入。お風呂や床暖房といった大量のエネルギーを使用する場所に、自然エネルギーの導入を図ることでクリーンな環境を目指している。
 最近では一部ホテルや旅館でも、有機野菜の料理を提供したりオーガニックのコスメを用意するなどの部分的な取り組み・提案はあるものの、ここまで徹底してオーガニックにこだわった宿は無い。このBIO HOTEL認証の基準に準じた宿運営は並大抵の苦労ではないだろうが、それゆえ完全な差別化要因となり、他には無いコンテンツとなる素晴らしい事例のひとつといえる。

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カミツレの宿 八寿恵荘
長野県安曇野の豊かな自然に囲まれた「カミツレの里」。その中でカモミール畑やカミツレエキス製造工場、華密恋の湯が楽しめる宿「八寿恵荘」は、地産地消の無垢材、自然素材を活用するなど徹底したオーガニックスタイルで、欧州を中心に広まる「BIO HOTEL認証」をアジアで初めて授与した宿泊施設だ。
長野県北安曇郡池田町広津4098
TEL 0261-62-9119
yasuesou.com

BIO HOTEL認証とは
ヨーロッパビオホテル協会の公認を受け、日本では2013年5月にBIO HOTELS JAPAN(一般社団法人日本ビオホテル協会)が発足。ヨーロッパのオーガニック規格をベースに、独自の厳格なガイドラインを食品・製品毎に設け、日本とアジアでのBIO HOTELの認証・格付けを行っている。


文|五十嵐 洋(Casokdo)

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