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~in their own ways 彼らの選択~ あくまでも自分の目で見て、感じたことを

~in their own ways 彼らの選択~ あくまでも自分の目で見て、感じたことを

現在、濱田は〈なでしこVoice〉以外に、海外就職情報サイトABROADERS編集長、さらには講演やセミナーなどで全国を飛び回る。そんな忙しい中にあっても「読んでくれた人に勇気を」、「海外で頑張る女性を応援する」という軸はぶれることなく、自分が直接あって話を聞くというスタイルにこだわる。なによりインタビューは濱田にとって「自分自身のため」でもある大切な時間だから

 海外で働く日本人女性の声を伝えるインタビューサイト〈なでしこVoice〉。記事を読むと分かるが、その内容に堅苦しさはなく、一部には女子トークのような軽快さも。ただその一見軽く見える中身に、恋愛や挫折といった“女性ならではの本音”があることに気づく。
「人はプロのインタビュアーの前ではもっともらしい理由を話しますよね。もし私が彼女たちの本音を引き出せているのだとしたら、純粋に『教えてください』ってスタンスで向き合ったからかもしれません」と濱田は言う。
 インタビューの本数が増えるにつれ「勇気をもらった」「自分も将来は海外で働きたい」という反応も増え、サイトの注目度も高まっていく。だが就職し社会人となった彼女は「仕事との両立」に思っていた以上に悩み、苦しむ。就職した会社は〈なでしこVoice〉の活動を認めてくれる自由な風土だった。けれども新人でも即戦力を求められる組織では、頑張れば頑張るほどに〈なでしこVoice〉に注ぐ時間がつくれない。
「インタビューの面白さが分かり始め、もっとやりたいという思いが強くなってきた。でも自分には経験が必要と飛び込んだ社会人生活を中途半端に投げ出すのは“逃げ”じゃないかとも思えて」

山本美香さんが押してくれた背中

最近ではセミナーでの講師や講演に呼ばれることも多い。濱田はインタビュアーというよりも、自身の役割、また特性を人に対するエンカレッジ、エンパワーメントだと捉えており、セミナーなどへも積極的に出向き、多くの人と触れ合う時間を大切にしている。 http://www.nadeshiko-voice.com

最近ではセミナーでの講師や講演に呼ばれることも多い。濱田はインタビュアーというよりも、自身の役割、また特性を人に対するエンカレッジ、エンパワーメントだと捉えており、セミナーなどへも積極的に出向き、多くの人と触れ合う時間を大切にしている。
http://www.nadeshiko-voice.com

 どちらも中途半端にできない、彼女の生真面目さが彼女自身を苦しめる。そんな時、背中を押したのは、取材で出会ったある女性。正確には「その死」だった。
 山本美香さん。内戦が続くシリアを取材中の2012年8月、政府軍の銃撃を受けて命を落としたジャーナリストだ。実は濱田はその年の1月に彼女への取材を〈なでしこVoice〉で行っており、それが山本さん最後のインタビューとなったのだ。
「あらためて美香さんから言われた多くのことを思い出しました。そして本当にやりたいことがあるなら、時間や命を無駄にしないでその道に突き進むべきじゃないかって考えるようになったんです」
 ちなみに山本さんはインタビューで濱田にこんなことを話している。
「夢やビジョンを持つのもいいけど、そればかりに気をとられると今、この瞬間が疎かになりがちです。だから『今を充実させる』というのは大事なこと」だと。
 退職しフリーとなった濱田は現在、NPO法人ABROADERS編集長などを務めながら〈なでしこVoice〉の活動を続けている。「自分が知りたい」、「読んでくれた人に勇気を」、そして「海外で頑張る女性を応援したい」という軸がぶれることはなく、自分が見て、聞いて、感じたことを彼女の言葉で発信し続ける。濱田自身は自分をそう呼ばないが、その姿勢はジャーナリスト、もしくはその志を強く感じさせるものだ。
 濱田が行動に移したように、今や〈なでしこVoice〉をきっかけに海外へと向かう女性も少なくない。「たとえ一人でも、何かのきっかけになったならすごくうれしい」と話す濱田は今、「女性のエンパワーメントや人権について専門的に学ぶために」海外大学院への留学準備を進める。「留学先からも〈なでしこVoice〉を届けてくれますよね」という問いに彼女は答える。
「もちろんですよ」と。
(文中敬称略)


〈なでしこVoice〉
代表 濱田真里(2)
1987年埼玉県出身。早稲田大学教育学部社会科社会科学専修卒。大学3年生の時に休学し、ボランティアをしながら世界を旅する。帰国後、2011年に世界で働く日本人女性のインタビューサイト〈なでしこVoice〉を起ち上げる。IT企業の営業職を経て、現在は〈なでしこVoice〉代表のほか、海外就職応援サイト〈ABROADERS〉編集長などを務める。

文・写真|佐藤 久

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