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~in their own ways 彼らの選択~「驚き、発見、感動を共有(シェア)するお菓子」 ジオガシ旅行団

~in their own ways 彼らの選択~「驚き、発見、感動を共有(シェア)するお菓子」 ジオガシ旅行団

現在、伊豆半島では世界的に貴重な地質や地形を持つ場として「世界ジオパーク」認定を目指した活動が進んでいる。そんな中、南伊豆でユニークな活動を展開するニ人の女性がいる。<ジオガシ旅行団>と名付けられたそのプロジェクト。さてジオガシとは? 旅行団とは?

ジオガシのモデルとなっている下田市の弁天島で。<左・寺島春菜>南伊豆町出身、伊豆半島認定ジオガイドの一期生。陶芸家の父の影響から高校時代は地学部に所属。現在、仏語翻訳業の傍ら、美しい伊豆の風景とその歴史を多くの人に伝えたいと旅行団の活動を続ける。<右・鈴木美智子>伊豆半島認定ジオガイド。多摩美術大学卒業後、広告代理店に勤務。その経験を活かし旅行団では商品開発・ツアー造成など地方の強みを活かしたトータルデザインを担当。

ジオガシのモデルとなっている下田市の弁天島で。<左・寺島春菜>南伊豆町出身、伊豆半島認定ジオガイドの一期生。陶芸家の父の影響から高校時代は地学部に所属。現在、仏語翻訳業の傍ら、美しい伊豆の風景とその歴史を多くの人に伝えたいと旅行団の活動を続ける。<右・鈴木美智子>伊豆半島認定ジオガイド。多摩美術大学卒業後、広告代理店に勤務。その経験を活かし旅行団では商品開発・ツアー造成など地方の強みを活かしたトータルデザインを担当。

 200万年前海底火山が本州と衝突。約60万年前に本州から突き出た半島になった——2011年、寺島春菜はふとしたきっかけで参加した伊豆半島ジオガイド養成講座で、自分の住む町の持つ壮大な歴史に触れ大きな刺激を受ける。
「自分の町にそんな歴史の足跡が残っていることにロマンを感じたし、この感動を『もっと伝えたい』って思いに駆られました」
 寺島は得意な料理の腕を活かし伊豆の地質・地形の特徴を菓子にすることを思いつく。考えたのは、よくある〇〇饅頭といった土産物の類いではなく、地層を切り取ったように精巧な模型に近い物だ。試作品を多くの人に見せると「面白い」という反応が返ってくる。寺島は商品に確実に手応えを感じた。だが一方「これをどのように広めれば良いのだろうか」と手詰まりも感じ始める。そんな時、彼女は一人の女性クリエイターと出会う。
 大仁(現・伊豆の国市)出身の鈴木美智子は東京の広告代理店でプランナー、アートディレクターとして働いた後、「地方にこそ発信すべきコンテンツが溢れている」と2007年に南伊豆へと移住。文化や歴史、農業などを地域が持つ価値(宝)と捉え、その視点からデザインや映像、さらには商品プランニングなど幅広い実績と経験を持っていた。
「春菜さんのお菓子を見た時、これは面白いと感じました。ただ商品化するならお菓子単体ではなく、場所のストーリーなどを盛り込んで丁寧に説明する仕掛けを施すことで、より生きるだろうとも思いましたね」
「感動を形に」、「その感動こそ伝える価値が」という想いを持つ二人。運命というとやや大仰だろう、だがたしかにこれを機に彼女らの生活は、この一風変わった菓子づくりへとシフトしていく。レシピ開発、パッケージデザインはもとより、包装、発送も自分たちで行う家内制手工業。成功への確信はなかったが、「これは面白い」と素直に思える気持ちが歩を前へと進めさせた。そして二人はその活動を<ジオガシ旅行団>と名付ける。

地域と共に歩み、成長する

9種のジオガシが揃ったコンプリートBOX。旅行団ではジオガシ販売以外に、シーカヤックを使った探検ツアーなども開催している。また来春にはお菓子のレシピが付いた写真集の出版も予定している。

9種のジオガシが揃ったコンプリートBOX。旅行団ではジオガシ販売以外に、シーカヤックを使った探検ツアーなども開催している。また来春にはお菓子のレシピが付いた写真集の出版も予定している。

 地形(ジオ)を切り取った菓子=<ジオガシ>と名付けられた商品は全部で9品。『枕状溶岩』『柱状節理』という地質の特徴を示す直接的なネーミングに、場所の解説文、巻物状の地図が添えられる。その精巧さは、たとえば堂ヶ島の水底土石流を模したパウンドケーキなら、大きな石ほど下に積もる堆積層をドライフルーツなどで学術的にも正しく表現するという具合。つまりジオガシは「食べる」+「行く」、「見る」という体験や学びを誘う“お菓子付きガイドツール”なのだ。
 現在、世界ジオパークへの登録を目指す伊豆半島にとって、ジオガシは地域の積極的取り組みのひとつとして重要な役割を担う。しかし、彼女たち自身はその活動を「菓子づくり」という狭い枠で考えてはいない。
 鈴木は「地域資源+菓子+ストーリーを組み合わせるジオガシのモデルは、さまざまな応用が可能。これからは色々な分野でこのモデルを使ったお手伝いをしたい」と言い、菓子づくりを担当してきた寺島も「課題はありますが、将来は全国各地域のお菓子屋さんなどが、ジオガシのフォーマットを利用して地域をアピールできる品をつくってもらい、ラインナップが広がっていけば」と話す。
 彼女たちの活動のベースにあるもの、それは“共有(シェア)”ではないか。このプロジェクトは二人の「伊豆への愛」、「自然、歴史への憧憬」が共有されたものだし、そこから生まれたジオガシは、彼女たちの驚き、発見、感動をより多くの人に伝えるメディアとも言えるからだ。
 そして二人はこう口を揃える。
「まずは何より地域の人たちが、自分の住む町の魅力を再認識する“気づき”になってくれたら嬉しい」と。(文中敬称略)


文・写真|佐藤久

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