ホーム / Business / 企業 / ~in their own way 彼らの選択~「『ひとり電気メーカー』という静かな革命」株式会社アカリネ 代表取締役社長 森宮祐次
~in their own way 彼らの選択~「『ひとり電気メーカー』という静かな革命」株式会社アカリネ 代表取締役社長 森宮祐次

~in their own way 彼らの選択~「『ひとり電気メーカー』という静かな革命」株式会社アカリネ 代表取締役社長 森宮祐次

日本の優れた技術、伝統工芸の新たな可能性を拓き「Made in Japan の復活」を目指す。森宮祐次はそんな大胆な想いを胸に2 010年「ひとり家電メーカー」aca r ine ( アカリネ)を創業する。重厚長大産業から個人の発想がモノづくりを牽引する時代へ。湖面に投げられた小さな石。その波紋は静かに、しかし確実に広がっている。

「impannatore(インパナトーレ)のような存在でありたい」とアカリネ社長の森宮祐次は言う。
 インパナトーレとはイタリア語でコーディネーターの意。ファッション産業において、生糸、染色から縫製などに至るまで一貫してとりまとめコーディネートする人を指す。中心にあるのは製品企画だ。インパナトーレはそれぞれのプランに基づき、最適な業者を組み合わせてネットワークを構築する。インパナトーレを介して技術者集団がアパレルメーカーとつながることによって、彼らはメーカーの系列、下請ではなく、製品化に必要不可欠な熟練技能集団と位置づけられる。
 2010年夏、森宮は「ひとり家電メーカー」アカリネを創業する。キーワードは「フラットな共創関係」だ。アカリネが考える商品企画を“モノづくりの場”と捉え、技術者集団がそこに主体的に関わる。そのことによって独創的な製品を生み出すと共に、彼ら中小企業の持つ技術の可能性を拡げることができると考えたのだ。
 たとえば会社名の由来(灯り+音)にも関係する第一号製品の<001>。照明とスピーカーを一体化させたこのユニークな製品は、京都西陣織に使われる銀糸のランプシェード、ピアノやギターにも用いられるスプルースという木材でつくられたボックス、そして音質を損なわずにスピーカーを極力小さく配する音響エンジニアリングなど、京都、宮城、埼玉のパートナー企業の持つ経験と技術が結集したものだ。

思考停止を抜け出すための“場”づくり

 <001>を発表すると地方の自治体や中小の工業関係者らから数多くの問い合わせが寄せられる。それらに応じていくなか高い技術を持ちながら、それを新規戦略に応用できずに苦労している企業がいかに多いか。同時に大企業による系列、下請化、それに伴う過度のコストダウン要求などが多くの中小企業を疲弊させ「ある種の思考停止状態を生んでいる」ことを森宮は実感する。
「要求仕様を満たすことに窮し、その環境に慣れすぎるあまり、自らが主体的に製品や事業を生み出す力が落ちていってしまう。それは日本のモノづくりにとって大きなマイナスだ」と森宮は指摘する。そして「だからこそ“場”が必要なのだ」とも言う。
 富山県八尾町の型染め和紙をランプシェードに応用し、加速度センサーと組み合わせ、地域の伝統行事「風の盆」をイメージしたインタラクティブライトの<004>。アルゴリズミック・デザインによる複雑な穴が開けられた2枚のステンレスを組み合わせ、微妙なバランスで揺れることでLEDライトに照射された影が変化する最新作の<005>。それらは地域の伝統技能、電機メーカーの仕事を請け負う中小業者が持つ精密板金加工技術との出合いから生まれた製品たちだ。このようにほんの少しのきっかけ、場を共有できれば、中小業者が持つ技能や技術は、充分にイノベーションの種になり得ることを森宮は証明してきた。
 2010年にアカリネを創業した当時、「ひとり家電メーカー」という言葉は、それだけでオリジナリティを感じさせるものだった。だがわずか数年を経た現在、多くのフォロワーが後に続いてい
る。森宮は「クラウド・ファンディングなどの環境が整っていくことで、10年先の日本のモノづくりは大きく変貌する」と予測する。
 アカリネの事業概要を示した二つ折のリーフレットの中には「アカリネマップ」という日本地図があり、コラボレーションした業者がある都道府県が塗りつぶされている。その多くはまだ白いままだ。この先ひとつ、またひとつと塗りつぶされていく。それは日本のモノづくりの環境変化、“静かな革命”の進行を示すものなのかもしれない。(文中敬称略)

最新作<005>。製品化には茨城県の精密板金加工を得意とする業者の レーザーカッティング技術が大きく寄与している。ただの照明でもなく、単なるオブジェでもない。複雑な穴が映し出す影を楽しむというインタラクティブライトという発想は、マスをターゲットとする大手メーカーからはおそらく生まれないだろう。

最新作<005>。製品化には茨城県の精密板金加工を得意とする業者のレーザーカッティング技術が大きく寄与している。ただの照明でもなく、単なるオブジェでもない。複雑な穴が映し出す影を楽しむというインタラクティブライトという発想は、マスをターゲットとする大手メーカーからはおそらく生まれないだろう。


森宮祐次
1957年福岡生まれ。千葉大学工学部卒業。日本ビクター、ソニーでGマーク大賞受賞製品などのプロダクトデザイナー、プロデューサーとして活躍。2009年にソニーを退職し、翌2010年「新しい製造業のモデル」を目指しアカリネを創業する。日本各地の優れた技術を持つ会社、伝統工芸との出合いからインスピレーションを受け、製品化にむけてデザイン、コンセプトを固めていく。

文・写真|佐藤久

Scroll To Top