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エアバギーで世界を見つめる女性経営者

GMPインターナショナル 代表取締役 飯田美恵子氏

画期的なベビーカー

飯田氏はアパレル業界、インテリア業界でキャリアを積み、14年前にベビー用品業界に入った。当時はネット販売 や並行輸入が一般的ではなく、今と比べるとまだ業界でも「ベビー用品=お祝い事の品物」との認識が一般的だった。飯田氏の手腕は早速発揮される。「インテ リアもアパレルも、生活スタイルに合わせて使う人が好きなものを選ぶことが自然です。だからいくら出産のお祝い事といえども、使う人にとって心地良いもの、好きなものを、たくさんの選択肢から選べるようにしたいと感じました」。
当時ハワイで出合ったのが米国ベビージョガー(BJ)社の3輪ベビーカー。飯田氏は一目で気に入り、BJ社に電話をして日本の輸入元があるか尋ねたとい う。「最初はフォルムの美しさに惹かれましたが、調べるうちに機能性や開発コンセプトに深く共感して、ぜひ日本に広めたいと思ったのです」。1996年、 BJ社から日本総代理店の権利を得た飯田氏は、その後日本での3輪ベビーカーの普及に尽力することとなる。

ライフスタイルに合ったベビーカー選び

現在は国内でも多種多様なベビーカーが生産されるようになり、またインターネットが普及し、選択肢がぐっと広がった。選ぶ苦労が増えたことにもなる。どのような基準で選べばいいのだろうか。飯田氏はライフスタイルに合ったベビーカーを選択することが重要だと言 う。「お客様のお住まいの環境やライフスタイルに合ったベビーカーを選ぶことが一番大切です。ご自宅の前に階段や凸凹道、坂道があるかどうかといったことから、いつも使用している駅にエレベーターがあるかどうか、お買い物は安全に歩いていける場所にあるか、などを一つひとつシミュレーションしてみるのです。電車やバスなどでの移動が必ず毎日ある場合、お買い物は週末ご主人とお出掛けになり、日頃はご自宅から少し離れた公園までのお散歩を楽しみたいと思っている場合。それぞれに一番合ったベビーカーはやはり少しずつ違ってくるものだと思っています」。
日本では多くの母親が軽量ベビーカーを選ぶ傾向にある。そんな中、エアバギーはしっかりとした重量感をもつベビーカーだ。「日本では軽さが最重要視されることが多いですが、私達はその点については少し違う視点をもって開発をしています」。

ベビーカー本来の目的に立ち返る

ベビーカーの本来の目的とは大切な子供を運ぶことである。それを考えると自ずとその答えが見えてくる。0歳から1歳の間に子供は骨も脳も動きも大きく変化する。寝たきりから歩くようになり、体重は3キロから10キロになり、身長は50センチから80センチになる。 「体重が3倍になり身長も伸びてくると、当然ベビーカーの重心位置も変わってきます。最新モデルの『エアバギー ミミ』は重量がおよそ9.6キロ。1歳の体重とほぼ重なります。この重さは結局、お子様が大きく成長された後にも重心をしっかり保ち、安全性を確保するという意味でとても大きな役割を担っているのです」。なるほど、確かに軽いものの上に重いものを載せればバランスが悪くなってしまうが、土台に重量があれば反対に安定性は増す、というわけだ。
「エアバギーは0歳から使いますが、一番子供が動く1歳から1歳半の時に一番安全で快適であることが大切だと考えています。そこからさらに3歳までどんどん使いやすさが向上していくベビーカーを心掛けています」。

安全と使い勝手のための技術

エアバギーは何が違うのだろうか。「ベビーカーの要は足回りです。3輪、4輪問わず、土台がしっかりしているこ とが大事です」。エアバギーはタイヤ1本が1キロ。3本でおよそ3キロ。それで土台を支えている。その上に堅牢なフレームとシートが装着される。全体で赤 ちゃんを包み込み、前後左右からの衝撃から守る構造になっている。
重量としては持ち上げるには少々重い。どのように使い勝手と両立しているのだろうか。「実は指1本で押せるベビーカー。まず、動かしやすいよう前輪も後輪もタイヤに高性能のボールベアリングを搭載し、全く抵抗なくタイヤが回る仕組みです。ひと押しするとどこまででも進みますよ。もともと自転車の技術をベ ビーカーに応用したもので、欧米のベビーカーには普通に取り入れられていますが、日本では初めてでしたね」。性能は抜群だが重くなるため、軽量化を重視するベビーカーには使えない技術だ。仕組みに納得できると、安全性も使いやすさも深く納得できる。

快適な走行を支えるエアタイヤ

エアバギーのもう一つの特徴はエアタイヤである。「世界的に有名な自転車タイヤのメーカーに作っていただいています」。硬すぎず柔らかすぎず弾力があるゴムで、砂利道、砂浜、芝生など、どのような道でも歩くことができ、振動をタイヤが吸収して赤ちゃんに伝えにくいという優れた技術だ。このエアタイヤも、重いという理由で日本の軽量ベビーカーには今まで採用されることはなかった。
3輪の機動性も使い勝手を高めている。3点で支えて前輪が一つだから曲がりやすく小回りが利く。前に進む力が一点に集中し、直進性に優れ、少しの力で前 進する。また、前輪を回転タイヤにすることで機動性に優れる。非常に取り回しが良く、自由自在に“スラロームのように”操作性が高く、片手で押すことができるのである。

AirBuggy代々木公園店 東京都渋谷区富ケ谷1-16-1 ラクール代々木公園TEL 03-5465-7580

世界に販路を広げた「日本製エアバギー」

話は戻る。飯田氏が日本総代理店としてBJ社の3輪ベビーカーを輸入販売して5年、飯田氏自身が気づいたことや 利用者の声などが改善要望として多く蓄積されていった。機能を生かして小型化すること、カラーバリエーションを増やすこと、小物用ポケットやネットなど細やかな機能の追加などが主な要望だった。「日本人は細やかなところに気がつきます。哺乳瓶入れや荷物入れ一つとっても『ここにこういうものがあればいいのに』という思いは多いのです」。飯田氏はそれらをレポートにして米国本社に送り続けた。しかし当時の日本市場規模はアメリカのそれの1割にも満たず、世界 の販売先は28カ国。改善の必要性は米国本社には納得してもらえなかった。

AirBuggy神戸苦楽園店 兵庫県西宮市深谷町10-27 TEL 0798-75-6231

飯田氏は決断し、02年に現在のGMPインターナショナルを設立した。改善点をすべて取り込み、独自で現在のエアバギーを生み出したのである。日本の利 用者に高い支持を得た新しいエアバギーは海外市場でも注目され、英国を中心に売れ始めた。「英国は特に坂道や凸凹道、曲がりくねった細い道が多い。だから 車もミニクーパーのような小型車で小回りの利くものが重宝されます。新しいエアバギーはその小回りの良さ、機動性の高さを評価していただいたようです」。 日本に近い環境の国はすべて販路として大きな可能性があると飯田氏は考えている。08年にはドイツ・ケルンでの世界最大のベビーショーにも出展し評判を呼んだ。飯田氏の活躍のフィールドはGMP(グローバル・マーチャンダイジング・プロジェクト)との社名通り、世界に広がっていく。

子供との生活を楽しめるように

ベビー業界に携わる女性経営者として今の子育て事情に思うこともある。「私自身、フリーランスで働いていたこともあり、仕事との兼ね合いを気にするあまり20代後半から30代前半にかけて出産の決心がつきませんでした。また、お客様からは『職場復帰したいが保育園を見つけられない』『出産を機に退職したが社会から取り残されたようで不安』という声を多く伺います。女性が働きながら出産・子育てをするには難しい社会だと日々感じます」。世の中を変える大きなことはできない。しかし子供と一緒のライフスタイルを楽しむ一助を担いたいと考え、より良い製品作りに励んでい るという。社内での取り組みも怠らない。「保育園が見つからなかった社員のために、日当りのいい場所にベビーベッドを設置し子連れ勤務を実行しました」。 女性経営者としてできることから始める、それが社会貢献であり責務だと感じているという。飯田氏の視線は広く世界へ、足元の社内へ、きめ細やかに向けられているようだ。


株式会社GMPインターナショナル

本社 東京都渋谷区富ケ谷1-19-4 代々木パークビル2F

TEL 03-5738-1051

www.airbuggy.com

撮影:t.SAKUMA 文:羽田祥子(編集部)

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