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ライフ充実せずしてワークなし 環境とタイミングで人は変わる

休業期間を"ブランク"ではなく、能力を磨き上げる"ブラッシュアップ"の期間にしたかった。

資生堂でのビジネスモデルコンテストから

最近よく耳にするワーク・ライフバランス。ワーク(仕事)とライフ(生活)のバランス(調和)。これが企業に とっていかに必要なのか。これを唱導している小室淑恵さんに話を聞いた。育児支援制度に対するよりも、未来の“介護”に関わる人こそより深刻に考えなくてはならないという。
小室さんは新卒で資生堂に入社、2年目に社内ベンチャーのビジネスモデルコンテストに応募し優勝。育児する女性が休業期間中にイーラーニングで学び、スキルアップして復帰できるプログラムを開発した。これが今のビジネスの基礎である。
起業した2006年頃は、男性の育児休業者や管理職の介護休業者、また特にIT企業でメンタル面を患って休職する人が増えていた。つまり、男女年齢問 わず誰でも休む可能性がある。だが、日本では長時間労働ができないと評価されない風土が根強く、復帰しても時間や体調などの制約が原因で実力を発揮できず、結局離職してしまう。「職場と、長時間労働に依存した働き方そのものを変えなくてはならない」そのように感じ、介護やメンタルで休業する男性も視野に入れたプログラム「アルモ」を開発することとなった。
実は、起業前、それも資生堂に辞表を出した翌日に妊娠が発覚していた。しかし、立ち上げメンバーから「出産するからこそ休業者の気持ちを理解できる」と祝福され、出産も起業も成し遂げたのだった。

日本企業で休業を取った人が、復帰後も職場で活躍できるようなワーク・ライフバランスコンサルティングを行う

15年後、6人に1人が介護を抱える!?

働き方を変えよう、と言われても実際何をしたらいいのか。コンサルティングする企業では、トライアルチームを作って取り組む。最初は「こんなに仕事があるのに帰れるわけがない」と反論する社員ばかりだが、8カ月のプログラムを終了してみると、1人月間110時間以上していた残業が20~30時間に収まった。売上業績が上向いたチームまであった。個々人の意識が変われば、労働時間を減らし効率を上げて業績をキープ、あるいは上げることなど、決して不可能ではないという証である。小室さんは、「短時間勤務者は使えない」と今まで発言してきた管理職も早く働き方を変えるべき、と警笛を鳴らす。
「ある大企業の試算では、15年後に親の介護を抱える社員は6人に1人。育児で休む女性より介護で休む男性の方が増えるそうです。育児は数年で手が離れますが、介護は逆。時間が経つほど要介護度が重くなりますし、10年、20年と続き、終わりが見えないものです。こうなった時、それまで長時間かけて仕事を してきた人ほど『もう自分の価値は落ちた』と感じ、突然会社を辞めてしまいます。こうならないために、今のうちから生産性を上げ、時間内で仕事の成果を出す癖をつけてほしいのです」。

なぜ今、働き方を見直すのか

生産性を上げ、時間内で仕事の成果を出す。この秘訣は“定時以降に外せない予定を入れること”だとか。確かに、退社後に飲み会がある日は集中力が増しているのでは? それに向かって仕事を段取り、効率良く取り組む。これが第一歩である。
「お勧めはセミナーや勉強会。勉強になるだけでなく、同じ分野に興味を持つ人との出会いの場にもなりますから、人生の伴侶にも出会えたりするかもしませんよ。この出会いの価値と、深夜までの残業代の価値とを比べてみてください」。
育児でも介護でも、就業時間内で仕事の成果をあげる力を高めていれば動じずに済む。今なぜ、特に若い男性がワーク・ライフバランスをとるべきか、という理由がここにある。
「今までのワークスタイルを変えたいけれど『変えるのは無理だ。きっかけがない』と思考停止に陥っている人たちの“心の扉”を開くのが私の仕事だと思っています」。

自社ももちろんノー残業。残業していると厳しい(?)声が掛かる。「何でも言い合えて笑顔で仕事ができる環境を作るようにしています。上司次第で部下のやる気も変わりますからね(笑)。そうするとみんな自主的に仕事を頑張ってくれます」

ワーク・ライフバランスをとれる企業が不況下での勝ち組に

未曾有の不況とも言われる時代、コスト削減のために給料をカットする企業も少なくない。
「給料カットをしてしまうと、社員のモチベーションが下がるだけでなく、会社の未来に危機感を感じた優秀な人材が他企業へ転職してしまいます。だから、社員皆でワーク・ライフバランスを見直すことで、豊かな私生活を取り戻すことができ、企業としても残業代を抑えることができるのです。経営戦略としてワー ク・ライフバランスに取り組むことが重要ですね」。
ワーク・ライフバランスとは、ライフ重視かワーク重視かを天秤にかけることではなく、ライフがあるからこそ創造力が高まりワークでアイデアが出て、その ことで早く仕事を終えられてまたライフを充実できる、という好循環。これが強靭で安定した会社を作り、自分の長い人生を幸せにする基本となるのだ。
経営者であり妻であり、そして一児の母でもある小室さんは、最後に嬉しそうにこう話した。
「一番の元気の源は息子です。自分が最も笑顔になれます。私も毎日18時には家に帰り、息子と向き合うことで翌日のパワーをチャージしています」。
その時の顔に、愛ある母の一面を垣間見た。このパワーを次は社会に、人に与えて元気にしていくのが小室淑恵さん、この人なのだ。


株式会社ワーク・ライフバランス
www.work-life-b.com
住所: 東京都港区芝浦4-21-1-204
TEL: 03-5730-3081

文:鵜居かよ(編集部)

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