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2009.11.25

PANTONEが展開する世界標準のカラービジネス

2007年春、ソフトバンクモバイルから業界初の20色カラーバリエーションを揃えた携帯電話が発売された。テレビCMや交通広告など、インパクトの強い大々的なPRを行ったことから、記憶に残っている読者も多いだろう。このカラーバリエーションの実現とともに、彗星の如く登場したブランドの名は「PANTONE(パントン)」。一般コンシューマには今ひとつ馴染みのない響きであったが、実は「色」においては、クリエーティブなマインドを持つ人たちから絶大な信頼を得ているアメリカの老舗企業である。

世界で使われる色見本、パントンのカラーチップ

世界で使われる色見本、パントンのカラーチップ

世界共通のカラー言語

「色の権威」との異名を持つパントン。
 パントンは45年にわたって、グラフィック・出版・テキスタイル・インテリア・建築から工業製品に至るまで、デザインに携わる人々にとっては欠かせない、色見本(カラーリファレンス)を出版している企業である。世界中どこへ行っても、パントンの色見本にあるカラー番号を伝えれば、お互いに間違いなく同じ色を選ぶことができる。これが「世界共通のカラー言語」と言われる所以である。
 米国ニュージャージー州カールスタッドに本社のあるパントン社は、1963年ローレンス・ハーバートによって創設された。彼はグラフィックアートにおける正確な色合わせに伴う問題を解決するために、色を識別するという画期的なシステムを作り出した。個々人が見て認識するスペクトクル(=像)には個人差があるという彼の認識こそが「パントン・マッチング・システム」という、スタンダード化されたカラーを扇形にした本を作り出したのだ。

2009年11月より100色のカラーバリエーションにて展開を開始したPANTONE UNIVERSEカーテン。

2009年11月より100色のカラーバリエーションにて展開を開始したPANTONE UNIVERSEカーテン。www.rakuten.ne.jp/gold/plusvalue/curtain

B to BからB to Cへ

 パントンの本来のビジネスは、この色見本を販売するという、いわばB to Bビジネスである。B to C、つまり一般消費者向けのパントンブランドによる商品開発においては、他企業とのコラボレーションが過去に数件あったものの、いずれも単発で終わっていた。そこに一石を投じたのが伊藤忠ファッションシステム(以下IFS)だ。IFSはブランド開発支援というビジネスを展開しており、ブランドのライセンス・コーディネートに卓越したセンスと確かな戦略立案能力を備えている。パリとニューヨークに現地オフィスを構え、上海には現地法人を設立。海外ブランドにも強い。日本市場でのパントンの成功は、IFSの黒子としての尽力があってこそだと言えよう。IFSの担当者である塩冶(えんや)崇文氏は語る。
「パントンは元々、クリエーターをはじめ、モノ作りの初期に携わる人や流行の仕掛け人、いわゆる『イノベーター』に強く支持されていました。この点で我々もパントンの可能性に注目していたのですが、どう認知度を高めるかが課題でした。ちょうどその時、ソフトバンクの多色展開の話が持ち上がったのです」。

パントンとソフトバンクモバイルとのコラボレーションで生まれた「PANTONEケータイ」。この812SHは2007年度アジアデザイン大賞(コミュニケーション・デザインカテゴリー/トータル・ブランド・ソリューション部門)を受賞

パントンとソフトバンクモバイルとのコラボレーションで生まれた「PANTONEケータイ」。この812SHは2007年度アジアデザイン大賞(コミュニケーション・デザインカテゴリー/トータル・ブランド・ソリューション部門)を受賞

 当時(2006年3月)ソフトバンクはボーダフォンの買収を決定。日本の携帯電話市場での巻き返しを図るための戦略のひとつとして、この多色展開を検討していた。
「技術的に多品種少量生産というのが容易になった昨今、『多色』というのはランドセルなどあらゆる商品に展開されており、さほどユニークなものにはなり得ません。そこでソフトバンクは、『パントン』という付加価値をつけたのです」。
「色の権威=パントン」とのコラボだけに、その配色や色感の出し方は絶妙だった。ずらりと店頭に並んだ時のカラフル感は人目を惹き、高い店頭効果を上げた。パントン×ソフトバンクのプロモーションを機に、ソフトバンクにクールなブランドイメージが確立され、その後の躍進につながったと言っても過言ではない。

サンスター文具より販売しているステーショナリーシリーズのノート

サンスター文具より販売しているステーショナリーシリーズのノート

日本に広がるパントンブランド

 パントンブランドの日本市場での展開は続く。例えば日本を代表するクリエーター・佐藤可士和氏によるユニクロのTシャツ「UT」とのコラボ。2007年4月、ユニクロのTシャツ専門店「UT STORE HARAJUKU.」と米国SOHOの旗艦店で24色のTシャツをリリース。2007年11月には日本・米国・イギリス・フランスで実施されたカシミヤキャンペーンにもパントンが起用された。2009年6月より原宿UTショップ、オンラインにて再び販売を開始し、イギリス、フランスでも順次販売をスタートさせる予定。
 文具で話題になったのは、サンスター文具とのコラボによる「7 colors for 7 days」をテーマとした7色×3トーン(朝・昼・夜)=21色のカラーバリエーションというコンセプトだ。ニューヨークのコンランショップやMoMAストア、パリのコレット、ロンドンのセルフリッジなど、16カ国において感度の高いショップでの展開を実現した。
 その他にもBEAMSで先行発売したスーツケースからコンビニで買えるライターまで、パントンブランドの商品は枚挙に暇がない。この秋からも新しく、カーテン、空気洗浄機などが登場する予定だ。

Pantone LLC リサ・ハーバート氏

Pantone LLC リサ・ハーバート氏

パントンが提供する色選びの面白さ

 この日本の市場をパントン本社はどう見ているのだろう。
「一番驚いたのは、私たちの商品がパントンブランドを敬愛してくれているプロのクリエーターだけでなく、幅広い層の人々に好まれ、売れていることです。我々はそういった人々をcolor enthusiast――(本の虫)ならぬ“色の虫“と呼んでいます。成功への鍵は、パートナー企業とともに、時代にとらわれないクラッシックなスタイルをとりつつ、最新のトレンドに合った色をデザインや素材に取り入れていくこと。これからもエキサイティングな商品を創造し、クリエーティブなパントンを消費者が肌で感じてほしい」。
(Pantone LLCホーム&コンシューマ部門エグゼクティブバイスプレジデント リサ・ハーバート氏)
 パントンの商品には、色番号・名前とともに、色がイメージする3つのキーワードが与えられる。カラーチップを常にインスピレーションソースとし、ちょっとしたこだわりやひねり、遊び心があるモノ作りを大切にしているという。気分や好みで色を選び、楽しむだけにとどまらない。その色を多くの色から選んだこと自体がその人自身を表す、という発想が面白い。パントンだからこそ叶えられる「色選びの面白さ」は、今後も広がりを見せそうだ。

PANTONE UNIVERSEカーテン
www.rakuten.ne.jp/gold/plusvalue/curtain

文:加藤紀子(編集部)

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