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キッズデザインの家づくり

就職後や成人後にその人の育てられ方が取り沙汰され、さまざまな子育て論が展開されている昨今。
親にとっては“子育ての場”、子どもにとっては“自分をつくっていく場”である“家”が今回のテーマ。
“子どもにとっていい家とはどんな家か?”
子ども目線の家づくりで「キッズデザイン賞」を3年連続受賞しているLIXIL住宅研究所キッズデザイン研究所所長の高橋司郎氏と、「お手伝い至上主義」で独自の子育て論を実践している金沢工業大学教授の三谷宏治氏に語り合ってもらった。

BUAISO(以下B)/高橋(敬称略、以下T)/三谷(敬称略、以下M)

BUAISO
今日は、子育てしやすい家づくりについて一緒に考えていきたいと思います。まず、そもそも「キッズデザイン」とはどのような設計思想なのでしょうか。
髙橋
「キッズデザイン」とはひとことで言えば、“こどもにやさしい”は“みんなにやさしい”ということです。例えば、よく知られている「バリアフリー」は、家の中で、お年寄りや身体の不自由な方たちが不便を感じる段差や、回しにくい把手のような障害を取り除こうとする考え方です。そこから一歩進み、すべての方にとって暮らしやすい環境をつくろうとする考え方が「ユニバーサルデザイン」と呼ばれるものですが、それでもまだ、子どもの立場で考えるとさまざまな工夫が必要です。子どもの視野は大人の3分の2程度と言われています。例えば6歳児の場合、垂直方向の視野は大人の約120度に対して約70度、水平方向は大人が約150度あるのに対して約90度しかありません。だから、子どもの目線・子どもの基準で暮らしやすさを考えよう。それが「キッズデザイン」の考え方です。
三谷宏治 金沢工業大学虎ノ門大学院教授 87年東京大学理学部物理学科卒業。外資系コンサルティング会社を経て、96年から本格的に教育活動を始める。 大学2年、高校3年、中学2年生の3姉妹の父

三谷宏治金沢工業大学虎ノ門大学院教授87年東京大学理学部物理学科卒業。外資系コンサルティング会社を経て、96年から本格的に教育活動を始める。大学2年、高校3年、中学2年生の3姉妹の父

三谷
日本は諸外国に比べて、家庭内での子どもの事故が多いようですね。
髙橋
厚生労働省の平成20年度人口動態調査によると、1歳から4歳児の不慮の事故は、50.3%が家庭内で起きています。そこで私たちは、子どもの目線で家の中の危険を見つめ直しました。例えば、指を挟みにくいようゆっくり閉まる機能を室内建具に付ける、小さな子どもの浴槽への転落を抑止するため、脱衣室とトイレの扉にチャイルドロックを設置するなどです。
三谷
私もそうした類いのけがはしてほしくないと思っていますが、他方で、子どもを危険から遠ざけてしまうのも良くないと考えています。例えば、我が家には吹き抜けがありまして、そこには5mの昇り綱があります。下手すれば5mの高さから落ちるわけで、大変危険です。しかし、我が家には多くの子どもが遊びに来ますが、いまだかつて落ちてけがをした子はいません。それは「落ちたらけがをする」と緊張感をもって遊ぶからでしょう。
髙橋
そうですね。意思を持って行動している状況であれば、けがはしないはずです。けがをすることで子どもが学習していくのもまた、真実でしょう。ただ、私たちが減らしたいと願っている事故は、子どもが後ろを付いて来ているのにお母さんが気付かず、ドアをバンと閉めてしまって指を挟んだというような、意思はおろか意識すらないところで発生する事故です。そうした事故がゼロになるのは現実には難しいかもしれません。しかし、せめて小さな事故で済むように、これまでの家であれば骨折していたところが打撲程度で済むように、という思想が「キッズデザイン」なのです。
三谷
ただ、世の中ではそうした2種類の事故が区別されておらず、公園や学校のブランコ、ジャングルジムなどの遊具は、危険だからと、どんどん撤去されています。そのため、子どもたちは何が危険か学びようもありません。さらに、問題なのは、自由度の高い遊び道具が子どもの周りから消えていっていることです。例えば、ジャングルジムは形が単純で、何もしてくれません。だからこそ、お城にもなれば、迷路にもなる。遊び方の自由度が非常に高いわけです。室内であれば、粘土、折り紙、積み木、絵の具に色えんぴつ……。出来上がったおもちゃでは、自分から考え、動かし、造り上げていく能動的な能力を伸ばすことなどできません。
髙橋
よく分かります。私も自分の子育てでは、規制をなくし、まず自分で考えさせました。そして、やると決めた以上は、間違っても、時間がかかっても、最後までやらせました。
三谷
自ら考える力を伸ばすことは、家の形や間取りにかかわらず、家が広かろうが狭かろうが、もちろんできるはずです。ただ、それを後押しする家の形もまたあるはずです。
髙橋
ええ。私たちは、ホワイトボードやマグネットウォールといった「クリエイティブウォール」を提案しています。つまり、好きなことを自由に、大きく伸び伸び絵が描けるキャンバスの設置です。
三谷
私の実家にも、壁一面のホワイトボードがあります。面白いことに、最初は小さくしか描けないのに、だんだん慣れてくると、とてつもなく大きな物を描き始めたり、ストーリー仕立ての絵を描き始めたりするんですよね。
髙橋
それは楽しそうですね。ただ、「クリエイティブウォール」を提案しても、使い方がピンとこない親御さんも中にはいらっしゃいます。
三谷
家庭新聞だったら、取り組みやすいかもしれません。家族のイベントをカレンダーなどに書き込んで管理している家庭が多いと思いますが、我が家では、子どもたちが「今月の予定を教えてください」と聞きに来ます。言うとそれを大きな紙に書いてくれるので、家庭新聞としてダイニングに張っていました。
自ら考える力や発想力に関しては、私は家庭での「お手伝い」が最も役に立つと考えています。お手伝いをすることで、子どもたちは段取りよく動くことを覚え、さまざまなことに気を配り、自立的に考えて体を動かすようになるのです。
髙橋
私も、常々お手伝いも大事だと考えています。例えば、五味、つまり酸味、苦味、甘味、辛味、鹹味(かんみ、塩味)が発達した人は自己防衛力が強いと言われます。酸味から腐った物を知り、苦味から毒を見分けるからでしょう。そうした味覚の発達は、子どものときに、食事を作る、運ぶ、食べる、後片付けをする、さらには、家庭菜園の植え付けから収穫までといった、お手伝いの経験の有無と密接な関係があります。私たちも、ダイニングテーブルとキッチンの距離を縮めてお皿を運びやすくするなど、間取りの工夫をしています。

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三谷先生が実践した子育て論が詰まった1冊。実験台(?)の娘たちが証言するその成果とは?
プレジデント社発行・ISBN978-4-8883-1953-6 1400円(税別)
www.mitani3.com Twitter ID:mitani3

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“こどもにやさしい は みんなにやさしい”をコンセプトに、子ども目線で家族を見つめた「家族の絆と夢を育む住まいを」提案。家族みんなが楽しく、ハッピーになれるアイデアがいっぱいです。詳しい内容やお問い合わせはwww.eyefulhome.jp まで

文:渡辺麻実

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