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~in their own way 彼らの選択~「サッカーの夢を描けるために」早稲田ユナイテッド 代表 岩崎勇一郎(2)

~in their own way 彼らの選択~「サッカーの夢を描けるために」早稲田ユナイテッド 代表 岩崎勇一郎(2)

早稲田ユナイテッドとして将来のJリーグ昇格を目指す岩崎勇一郎は、クラブ経営だけでなく、選手のキャリア形成についても強い思い入れを持つ。それはプレーヤーがサッカーに夢を描く上で、とても重要な要素だと考えるからだ。
 現在、早稲田ユナイテッドは東京都社会人リーグ1部上位を争う。3位以内で関東社会人サッカー大会への参加資格を得られ、そこで決勝進出を果たせば関東リーグ2部に昇格。関東リーグの上にはアマチュア最高峰の日本フットボールリーグがあり、諸条件が整えばその先のJリーグも視野に入る。
 一方クラブにとってはカテゴリーが上がれば運営費が当然増える。特に上位を争うには選手がサッカーに集中できる環境を整備できなければ戦力の維持すら難しい。日本ではこれまで実業団が企業の広告塔などを大義として社会人スポーツを牽引してきたが、今やそれも前時代の話だ。
「これまでは『企業に支えられるサッカークラブ』が当たり前だったが、早稲田ユナイテッドは『企業を支えるサッカークラブ』へと成長していきたい」と岩崎は話す。
 たとえば岩崎は人材定着率の低さに悩む企業に対し、クラブが人員獲得など現場業務支援を一括して請け負い、総合的なソリューションとして企業に提供していく形を考えている。これによって企業側は安定した労働力を、選手は働きながらプレーできる経済的基盤を得られる。特に選手にとってはクラブが事業主体となることで、仕事量を練習・試合のスケジュールに合わせ、最適に調整してもらえることが大きな利点になる。労働集約型産業などで人材獲得に苦しむ企業は多い。だがこの場合、そうした企業こそが選手にとって格好の働く環境になり、互いにメリットを享受できるというわけだ。
 岩崎がこうしたビジネスを推し進めるのは第一義的には「強いクラブ」「自立したクラブ」をつくるためだ。だが同時にそこには「選手のセカンドキャリアを考えることがサッカー界全体にとって大切」という思いがある。
「サッカー選手の持つ忍耐力やメンタルは社会でもっと活かせる。けれどサッカー以外の『社会性』や『学び』が不足していることがキャリア育成の弊害になっている」と岩崎は考える。だからこそサッカーだけでなく、社会人としての経験値を高められる場を選手に提供したい。そうすれば「サッカーを離れた時のキャリアデザインがもっと豊かに、そして多様に描ける」と信じているのだ。

海外移籍もサポート

 選手のキャリアにおいてプレープラスαの人間力が重要という視点は、早稲田ユナイテッドの特徴のひとつである海外移籍プログラムにも見て取れる。
 岩崎はトップチーム監督の今矢直城(スイス、オーストラリアなどでプロ経験をもつ)らと、早稲田ユナイテッドに在籍しながら海外を目指す選手をサポート。ドイツやオーストラリアなどへ若者たちの海外移籍を数多く実現してきた。
 移籍プログラムにおいてクラブが重視するのはプレーだけでなく、海外で通用するコミュニケーション力、海外での自立した生活力の養成や見極め。さらには本人の適正に合った移籍先選択など総合的なサポートだ。そこには海外移籍がゴールではなく、移籍を機に彼らが「いかにしてその後のキャリアをステップアップできるか」という考えが色濃く反映している。それはサッカークラブとビジネスを両立させ、健全で自立したクラブ経営で上を目指す早稲田ユナイテッドと二重写しのように見える。
 2014年、JリーグにはJ3という新たなカテゴリーがスタートした。プロ契約選手3人以上など、J1に比べるとその参入基準は低い。とはいえ、まずは関東を目指す早稲田ユナイテッドにとってJの壁は彼方に高く聳える。ただ確実に言えるのは岩崎にとって「大学からJリーグへ」という言葉はもはや“夢”ではなく明確な“目標”だということだ。(文中敬称略)

東京都社会人1部リーグを戦う早稲田ユナイテッド。昨年のリーグ戦は3位。関東社会人大会では準決勝で敗退し、惜しくも関東2部リーグへの昇格を逃す。Jへの階段を登るにはクリアしなくてはならない関東の壁を今年こそは突破できるだろうか。

東京都社会人1部リーグを戦う早稲田ユナイテッド。昨年のリーグ戦は3位。関東社会人大会では準決勝で敗退し、惜しくも関東2部リーグへの昇格を逃す。Jへの階段を登るにはクリアしなくてはならない関東の壁を今年こそは突破できるだろうか。

<岩崎勇一郎>
トップチームの今矢直城監督(右)と試合前の打ち合わせをする岩崎。小学校からサッカーを始め、国学院久我山高校、早稲田大学ア式蹴球部で活躍。早稲田大学大学院理工学研究科(博士課程)修了の後、同大学院MBAプログラムを修了。2008年に株式会社早稲田ユナイテッドを起業。


文・写真|佐藤久

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