ホーム / Business / 経済 / 【プレパラート】 高額な保育料、でも出産退職は2億円の機会損失
【プレパラート】 高額な保育料、でも出産退職は2億円の機会損失

世の中をスライスして覗き込む

【プレパラート】 高額な保育料、でも出産退職は2億円の機会損失

 クリスマスを過ぎると、あっという間に年末年始。今年は12月28日と29日を休むと9日間の大型連休になります。旅行を計画されている方も多いのではないでしょうか。働き続けるためには、休暇で日頃のストレスを解消するといった短期的な視点も大切ですが、結婚や出産、子育てなどのライフイベントとのバランスをどう取っていくか、という長期的な視点も重要です。
 前回、保育園の待機児童問題をテーマにしました。今、都内では保育園に入るには「保活」が必須。妊娠中からの予約、普通に申請しても認可保育園の利用認定は勝ち取れない場合も多いため、認可保育園の申請時期より前に早めに育児休暇から復帰して予め無認可保育園の利用実績を作る、中には一人親による加点を狙って期間限定の離婚をするというケースまである、といった状況をご紹介しました。
 今回は、厳しい状況をくぐり抜けて保育園を確保できたとしても発生してしまう時間の制約と保育料の高さという問題についてご紹介します。両者は関連するのですが、東京23区の認可保育園は大抵18時15分に閉園します。時間短縮勤務でない場合、定時ぴったりに退社しないと間に合わないという方が多いでしょう。延長保育を利用すれば1時間延びて19時15分になりますが、対応していない園もありますし、延長保育にも定員があり、皆が利用できるわけではありません。また、残業が多い方であれば、19時15分でも十分ではないでしょう。
 延長保育で対応できない場合、ベビーシッターなどの二次保育を頼ることになりますが、ベビーシッター代の相場は時給1800円前後。例えば1日2時間、週3日間利用すると月に4万円を超えます。自治体の子育て支援策であるファミリーサポートを利用すると相場は時給800円ですが、人気があり順番が回ってこない地域も多いようです。また、子どもが風邪などをひくと保育園は利用できませんので、病児保育に頼ることになります。相場は1日2万円程度ですが、インフルエンザなどの感染症にかかると、発症後5日間は登校できませんので病児保育代は10万円にものぼります。
 ところで都内の認可保育園の保育料は、自治体や子どもの年齢にもよりますが、世帯年収が約800万円の場合、0~2歳児では延長保育料も合わせて月額4万~5万円かかります。30~34歳女性の平均賃金は月額23万5100円※1ですから、手取りの約4分の1は保育料に充てられていることになります。これにベビーシッター代や病児保育代が加わると、あっという間にお給料が飛んでしまいます。仕事と育児の両立は精神的にも肉体的にも負担が大きいです。経済的なメリットもさほど大きくないとなれば、働き続ける意味はあるのかと疑問に感じる方も多いのではないでしょうか。
 でも、ここで退職してしまうのは早計です。少し古いデータにはなりますが内閣府「平成17年度国民生活白書」によれば※2、出産退職すると、働き続けた場合と比べて2億円の機会損失となります。

(注1)就業継続以外は、22歳時に就職。結婚後、28歳で第1子、31歳で第2子出産、再就職の場合は37歳で再就職と仮定し、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(2003年)により推計されたもの (注2)カッコ内は就業継続との差額 (資料)内閣府「平成17年度国民生活白書」

(注1)就業継続以外は、22歳時に就職。結婚後、28歳で第1子、31歳で第2子出産、再就職の場合は37歳で再就職と仮定し、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(2003年)により推計されたもの(注2)カッコ内は就業継続との差額(資料)内閣府「平成17年度国民生活白書」

 大学卒の女性標準労働者※3が28歳と31歳で二人の子を生み、それぞれ育児休暇後に同一企業に復帰した場合の生涯所得は2億5,737万円です(表)。一方、実際に多いと考えられるケースですが、第一子出産後に退職し、第二子が小学生になった時にパートとして再就職した場合の生涯所得は4,913万円です。このほか年金受給額にも差が出ますから、出産退職による経済的損失は、これ以上になるでしょう。
 今は保育料で目先の収入が飛んでしまうように見えるかもしれませんが、生涯所得を考えると実に大きな違いが出ます。お金のためだけに働き続けることをおすすめするわけではありませんが、子どもに十分な教育をするためにも、2億円という金額は一考に値するのではないでしょうか。


1.厚生労働省「平成26年度賃金構造基本統計調査」における一般労働者の30~34歳女性の学歴計の所定内給与額
2.独立行政法人労働政策研究・研修機構「ユースフル労働統計2014 ―労働統計加工指標集―」にて、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」を用いて、同一企業型の大卒女性の生涯賃金(退職金を含めない)は2億4千万と推計されており、最新データを用いた計算結果も同様である。
3.学校卒業後直ちに企業に就職し、その後引き続き同じ企業に在職している者

顔写真_kuga久我尚子(くが・なおこ)

2001年、早稲田大学大学院修了後、株式会社NTTドコモ入社。2010年よりニッセイ基礎研究所。生活研究部准主任研究員。専門は消費行動。著書に「若者は本当にお金がないのか?統計データが語る意外な真実」など。

Scroll To Top