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【プレパラート】 厳しい「保活」と世の中に望むこと

世の中をスライスして覗き込む

【プレパラート】 厳しい「保活」と世の中に望むこと

 自治体にもよりますが、そろそろ来年の4月入所に向けた公立の認可保育所の申し込みが始まります。都市部では特に深刻な待機児童問題。「保活」に励むご家庭も多いのではないでしょうか。「保活」とは、「就活」や「婚活」になぞらえて、子どもを保育所に入れるために保護者が行う活動のことです。「保活」は妊娠中から始まっており、激戦区では妊娠中から予約をしても50人待ち、100人待ちとなるそうです。
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 保育所には認可保育所、認証保育所、認可外の保育施設の三種類があります(表)。認可保育所は、国が定めた基準を満たし、都道府県知事に認可され、公費で運営される保育施設です。認証保育所は東京都が独自に設けた制度で、施設面積の緩和、都市部で強いニーズのある0歳児保育の実施、駅前の施設設置など、認可保育所の設置基準を東京の現状に合うように変えたものです。これら以外が認可外の保育施設となります。自治体に認可されていないと、保育の質に不安を感じるかもしれませんが、施設の運営には一定の基準を満たす必要があります※1。また、運営方針によっては必ずしも自治体の認可を目指すわけではありません。例えば、企業内保育所など利用者を限定する場合(公的資金補助を受ける場合は利用者を限定できない)や、早期教育プログラム、延長保育などの付加的なサービスを売りとする場合などが該当します。
 それぞれ特長のある保育所ですが、やはり「保活」のメインは保育料が安く保育の質が均一な認可保育所への入所です。入所の主な選考基準は保護者の就労状況です。激戦区では、育休から復帰する際、時間短縮勤務ではなく最初からフルタイムでのぞむ、1歳よりも比較的入りやすい0歳から復帰するというように、自分で子育てをしたいという希望があっても、少しでも選考に有利になるように調整を行う場合も多いようです。このほか自治体にもよりますが、認可外保育施設の利用実績や未就学児の兄弟がいると加点、同じ自治体に祖父母が居住していると減点といった基準もあります。利用実績を稼ぐために1か月だけ認可外へ預ける、祖父母の家の隣の自治体へ引っ越すといった努力もあるようです。さらに、非常に稀ではありますが、一人親家庭の場合は加点されるため、書類上の離婚をするという話まであるそうです。
 長らく少子化の解消は課題であり、第二次安倍政権では将来の労働力確保を視野に女性の活躍促進が掲げられ、育児と仕事を両立するための環境整備が進められています。しかし、それらを一手に引き受ける子育て家庭の負担感は依然として非常に強いままです。
 政府の「待機児童解消加速化プラン」では2017年度末には待機児童ゼロとなる予定で、非常に心強い計画ではあります。しかし、今、困っている家庭にとっては預け先がない目の前の現実が全てなのです。厳しい言い方かもしれませんが、目の前の問題を解決できないのであれば、どんなに素晴らしい計画でも絵空事でしかありません。長期的な政策と並行して、シッター代の給付など今この瞬間から利用できる短期的な施策も必要ではないでしょうか。
 少し前に「赤ちゃんに厳しい国で、赤ちゃんが増えるはずがない」という記事※2が話題となりました。少子化解消が叫ばれながら、赤ちゃんの泣き声やベビーカーを邪魔にする世の中の風潮を批判したものです。子どもの声が騒音だと保育所新設が反対されている地区もあります。制度を整えるだけでなく、記事にある通り「赤ちゃんを祝福しながら子育てをみんなで支える空気をつくること」も非常に重要です。


1.例えば東京都では、東京都福祉保健局が「認可外保育施設指導監督基準」を定めている。
2.境治「赤ちゃんにきびしい国で、赤ちゃんが増えるはずがない。」(ハフィントンポスト、2014年1月23

顔写真_kuga久我尚子(くが・なおこ)

2001年、早稲田大学大学院修了後、株式会社NTTドコモ入社。2010年よりニッセイ基礎研究所。生活研究部准主任研究員。専門は消費行動。著書に「若者は本当にお金がないのか?統計データが語る意外な真実」など。

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