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【Point of View】プレゼンテーション(4) ~はじめに言葉ありき

女性経営者のグローバル視点

【Point of View】プレゼンテーション(4) ~はじめに言葉ありき

 新約聖書には、「はじめに言葉ありき。言葉は神と共にあり、言葉は神であった。言葉は神と共にあった。万物は言葉によって成り、言葉によらず成ったものはひとつもなかった。」(ヨハネの福音書第一章より)とあります。
前号では、言語の使い方、思考パターン、会話運びのルールについて触れてみましたが、今号では、その大本の本にあたる、人類の言葉のはじまりや広がりについて考えてみたいと思います。

言葉のはじまり

霊長類は喃語にも似た音声を発することができる種が多く、初期人類と言われるアウストラロピテクス(約350万年前~200万年前頃)からネアンデルタール人(約20万年前~2万年前)にかけても、既にL字型の咽頭を持って、多少の会話はできたと言われます。ただ、約20万年前にアフリカで誕生して約6万年前にアフリカから他の大陸に進出したホモ・サピエンスは、それまでの種よりも明らかに発達した声帯を持ち、それまでの種と比較して高いコミュニケーション能力を持っていたため、現代につながる種族となったとのこと。すなわち、道具や狩猟の手法など、種族内での小さな「発見」を言葉で共有することができ、文明を築くことができ、先住の種であるネアンデルタール人などとの戦いに勝つこともできたと言われます。
ちなみに、わたくしが中高で世界史を勉強した際には、人類はネアンデルタール人、クロマニヨン人と進化して現代のわれわれにつながるというように習ったように思うのですが、1994年から1997年にかけて発表された研究から、アフリカ出身でヨーロッパを本拠としていたネアンデルタール人は同じくアフリカ発祥のホモ・サピエンスに滅ぼされたという説が主流になり、今に至るのだとか。歴史も何もかも、知識はアップデートしなければいけないものだと改めて感じます。
また最近、わたくしが代表を務める社団法人の活動でご縁のあった小学校の校長先生が、アメリカ在住のアフリカ人のテンバさんという方の経験談をお話ししてくださいました。テンバさんは、あるとき白頭鷲が瀕死の状態で傷ついて飛べなくなっているのに出会い、最初は英語で“Oh dear, what is the matter?”などと声をかけていたものの、プライドの高い白頭鷲は、そのように弱った中でもくちばしで必死に応戦しようとしてきたとのこと。それでも何とかして助けないと出血もひどく死んでしまうと、果敢にも白頭鷲を抱きかかえに行ったその方の口から、とっさに、古くから母国に伝わる動物に呼びかける言葉が出たら、なぜかその白頭鷲はだらりと頭を預けて懐いてきたそうなのです。そこで、無事に保護して傷を治してあげることができたとか。
この不思議なお話を聞いた時に、もしかしたら人類の発祥の地であるアフリカにいたわたくしたちの祖先は、言葉の原点に近く、動物とも会話ができたのではないか、との感覚がしました。白頭鷲はアメリカ大陸のみに生息している鳥だそうですので、どこまで関連があるかは不明ですが、ちょっとロマンティックな話だと思います。この話については絵本化の計画もあるそうで、世に出た時の反応がまた楽しみです。

言葉の広がり

言葉の広がりについて調査を行った鈴木秀夫氏の『気候の変化が言葉をかえた-言語年代学によるアプローチ』『気候変化と人間-1万年の歴史』など一連の著作を読むと、いかに言語が広がっていったかを知ることができます。「歯」「血」「手」など、基本的な単語に着目して、それぞれの地域でどのような言葉が使われているのか、似たもの同士をグルーピングして地図上に示すという手法を採っています。それによると、アイスランドやブリテン島の南端と、インドのグジャラティ語の親和性から、改めて「インド・ヨーロッパ語族」と言われる所以がわかったり、民族の移動があって言語が「上書き」された歴史、民族の移動が至らず、先住民族が残った白地地帯に特異な言語が存在(バスク語やケルト語など)することがわかったりします。また、特定の事物の発見や発明によって、言葉が開発され、伝播した歴史も示されています。例えば「鉄」は3200年前にヒッタイト帝国が崩壊した際に、その製法の秘密が世界に広まっていったものであり、事物の伝播とともに言葉も広がるという過程が理解できて面白いです。


aska・9097-1-3竹内 明日香(たけうち・あすか)

日本興業銀行(現みずほFG)にて国際営業や審査等に従事後、2007年独立、海外向けに日系企業の情報提供を開始。2009年にアルバ・パートナーズを設立し、国内企業の海外事業支援と情報発信支援(プレゼンサポート等)を提供。2014年12月に次世代の世界での発言力向上を目指す一般社団法人「アルバ・エデュ」を設立。音羽の森オーケストラ「ポコアポコ」(アマチュアオーケストラ)主宰。東京大学法学部卒業。日本証券アナリスト協会検定会員。

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