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【プレパラート】 9年ぶりの出生率低下と団塊ジュニアの駆け込み出産

【プレパラート】 9年ぶりの出生率低下と団塊ジュニアの駆け込み出産

 今月5日、厚生労働省は「平成26年人口動態調査月報年計(概数)」を発表しました。合計特殊出生率1は1.42(前年▲0.01ポイント)で、9年ぶりに低下しました。少子化の進行が言われて久しいですが、2005年の1.26を底に、実は近年、出生率は上昇傾向にありました。
 政府は、1990年の「1.57ショック2」を契機に少子化対策の検討を始めました。また、現在の第二次安倍政権では「女性の活躍促進」を大々的に掲げ、待機児童の解消をはじめ、女性が仕事をしながら子を生み育てやすい環境の整備を進めています。2014年の出生率は若干低下しましたが、近年の出生率の上昇は、政策が功を奏した結果なのでしょうか?

図 出生数と合計特殊出生率の推移(資料)厚生労働省「人口動態調査」より作成

図 出生数と合計特殊出生率の推移(資料)厚生労働省「人口動態調査」より作成

 今回は、少子化についてのデータを取り上げたいと思います。
 まず、これまでの推移を振り返りましょう。合計特殊出生率は、1975年に2.0を下回り、低下傾向を示しています(図)。しかし、2005年に1.26と底を打った後は、わずかに上昇しています。出生率を見ると、少子化は緩和傾向にあるように見えるかもしれませんが、出生数は1970年代から減少し続けています。冒頭の最新調査によれば、2014年の出生数は100万人。前年より▲2.6万人減少し、過去最低を更新しました。つまり、女性1人あたりが生む子どもの人数は、近年、わずかに増えていますが、母親自体が少子化世代に入り、子どもを生む女性の母数が減っているために、子どもの数は減り続けているのです。
 子どもを生む母親の年齢も変化しています。出生数について母親の年齢別に内訳を見ると、20代が占める割合が低下し、30代以上が上昇しています3。2000年頃までは、25~29歳の母親が最も多く、次に30~34歳、20~24歳と続いていました。しかし、2005年から順位が入れ替わり、30~34歳が最も多くなり、次に25~29歳、そして35~39歳が続くようになりました。なお、2013年のデータでも30~34歳が占める割合が最も多いのですが(35.5%)、わずかに低下傾向にあります。一方、35歳以上は上昇傾向にあり、2013年で35~39歳は22.3%、40歳以上は4.6%を占めます。つまり現在の日本では、妊婦の4人に1人以上が一般的に高齢出産と言われる30代後半以降ということになります。
 このように、出生数に占める母親の年齢は30代にシフトし、特に最近では35歳以上が増えているわけですが、実はこの年齢の動きは、1971~74年生まれの団塊ジュニア世代が年齢を重ねる動きとほぼ一致しています。出生数に占める30代後半の割合は2005年から、出生率は2006年から上昇傾向を示していますが、団塊ジュニア世代は2006年から30代後半を迎えています。つまり、近年の出生率の上昇は、政策の効果というよりも、人口ボリュームの大きな団塊ジュニア世代が30代後半を迎えて出産のリミットを感じ、駆け込み出産が増え、出生率を押し上げた可能性が高いでしょう。とはいえ、団塊ジュニア世代は昨年から40代に達していますので、もうその押し上げ効果には期待しにくいようです。
 今後は政策の効果に期待を寄せたいところですが、現在の少子化対策は、妊婦健診や出産の経済的負担の軽減や育休環境の整備、保育所待機児童問題の解消など、主に既婚者を対象としたものが多いようです。合計特殊出生率は15~49歳の全ての女性を対象として計算されていますので、子どもを持つ女性だけでなく、子どもを持たない既婚女性や未婚女性も含めて計算しています。よって、未婚化が進行している日本では、未婚者の影響が大きくあらわれます。出生率を上げ、少子化を解消していくためには、既婚者に向けた政策だけでなく、未婚化の解消につながる政策も同時に進める必要があるでしょう。


1. 女性1人あたりが生涯に産む子ども数の推計値
2. 1990年に前年(1989年)の合計特殊出生率が1.57と発表され、丙午という特殊要因でそれまでの最低であった1966年の合計特殊出生率1.58を下回った衝撃を指した言葉。
3. 厚生労働省「人口動態調査」

久我 尚子(くが・なおこ)
2001年、早稲田大学大学院終了後、株式会社NTTドコモ入社。2010年よりニッセイ基礎研究所。現在、生活研究部准主任研究員。専門は消費者行動、心理統計、マーケティング。内閣府統計委員会専門委員。著書に「若者は本当にお金がないのか?統計データが語る意外な真実」など

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