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【プレパラート】 じわっと拡大、お受験市場

増える高学歴ワーキングママと教育熱の高まり

 4月から生活が変わった方も、少し落ち着いてきた頃でしょうか。我が家も子どもが小学校へ入学し、親子ともども新しい生活が始まりました。保育園で一緒だったお友達も、学校選択制でいくつかの小学校へ分かれたり、小学校入学を機に転居したり、受験をして国立や私立へ進学したり、それぞれに新しい生活をスタートさせているようです。
 この中で小学校受験、いわゆる「お受験」組はまだまだ少数派ですが、最近は少し事情が変わっているようです。今回は「お受験」についてのデータを取り上げたいと思います。
 そもそも現在、小学校受験をする割合はどれくらいなのでしょうか?
 文部科学省「学校基本調査」によると、2014年の小学生の学校内訳は、公立が98.2%、私立が1.2%、国立が0.6%です。つまり、私立と国立を足した「お受験」組は1.8%。人数にすると、2014年の小学生は660万人ですので「お受験」組は12万人、1学年あたり2万人という計算になります。全体に占める数はごくわずかですが、過去からの推移をみると、私立は増加傾向にあり、1990年の実に2倍に膨らんでいます(図)。90年代以降は日本経済が低迷し世帯年収が減少しました。よって、全体としては家計が苦しくなっているにも関わらず、学費のかかる私立に通う小学生は逆に増えていることになります。

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 この背景には何があるのでしょうか?
 まずは高学歴化の進行があるでしょう。今の子育て世代、特に30代以降の世代は、すでに自分自身が大学・短大進学率4割を超える世代です1。家計には負担でも、自分が受けた以上の教育を、早い時期から我が子に与えたいと考える親が増えているのかもしれません。特に、母親の状況が大きく変化している印象があります。
 女性では、95年入学までは大学進学率を短大進学率が上回っていましたが、96年に大学進学率が逆転しました。女の子だから成績が良くても短大という価値観は薄まり、男性と同じような教育を受けてきた女性が母親になることで、より教育熱が高まっているのではないでしょうか。
 そして、経済力を持つ女性が増えていることもあるでしょう。90年代は男女雇用機会均等法の改正などもあり、男性並に働く女性が増えています。総合職同士の夫婦なども増え、比較的若い共働き世帯では教育費を出しやすくなっている世帯もあるのではないでしょうか。
 小学生を持つ世帯の年収分布を学校別にみると、やはり国公立より私立の方が高年収の比率が高くなっています。1000万円以上の割合は国公立では1割程度ですが、私立では6割を占めます1。また、望月由起さんは著書「現代日本の私立小学校受験」(学術出版会、2011)で、私立小学校受験児の状況を調査していますが、両親ともに高学歴であることや、在園機関は幼稚園が83.2%で圧倒的に多いものの、保育園も14.5%を占めることを示しています。つまり、私立に通う小学生を持つ家庭の世帯年収は高く、両親とも高学歴、そして、一定数の母親は働いているという様子がうかがえます。
 これらのデータは現在のものであり、過去からの変化を捉えているわけではありませんが、最近、塾機能付きの民間学童保育が月10万円もするのに3年先まで予約で満員だとか、1回5千円を超える児童送迎タクシーが注文を受けきれないくらいの人気といった記事も目にします2。全体からすると、まだごく少数ですが、高学歴ワーキングママの増加を背景に、一部子どもの教育市場は今後も過熱するのではないでしょうか。


1  文部省「学校基本調査」

2 「物価と暮らし:第3部/上 子育て世代、二極化」毎日新聞(2015/2/16、朝刊3面)など

久我 尚子(くが・なおこ)
2001年、早稲田大学大学院終了後、株式会社NTTドコモ入社。2010年よりニッセイ基礎研究所。現在、生活研究部准主任研究員。専門は消費者行動、心理統計、マーケティング。内閣府統計委員会専門委員。著書に「若者は本当にお金がないのか?統計データが語る意外な真実」など

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