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【プレパラート】 女性の消費が日本を拓く

【プレパラート】 女性の消費が日本を拓く

女性の労働力への注目

 昨年から注目されている、働く女性。政府は「女性の活躍促進」とうたい、女性の就労を推進している。少子化・高齢化の進行により人口が減少していく中、労働力人口を維持するために、女性の労働力は期待されている。新たな労働力の担い手としては、女性のほか、高齢者や外国人も注目されているが、「女性の活躍促進」は安倍政権の看板政策だ。政府は成長戦略の中で、女性の活躍を促す環境を整備するために、仕事と子育ての両立支援や指導的地位への女性の登用拡大を強く打ち出している。
 女性の就労環境の整備は、実は、現在の労働力維持だけでなく、将来の労働力確保にもつながる。OECD諸国では、女性の労働力率が高い国ほど、出生率も高い傾向がある。以前は、女性の労働力率が高い国ほど出生率が低い傾向があったが、1980年代半ば以降、両者の関係は逆転した。
 しかしこれは、働く女性が増えれば自ずと少子化に歯止めがかかる、という単純な図式ではない。仕事と家庭を両立することの難しさは、子どもを持って働く女性でなくとも容易に想像がつくだろう。両立できる環境が整っているかどうかが寄与している。
 OECD諸国の女性の労働力率と出生率の関係について、女性にとって仕事と家庭の両立をしやすい社会環境が整っているか(両立度)という視点から分析した研究によれば(※1)、実は、労働力率と出生率そのものの関係は、労働力率が高いほど出生率が低いという負の相関がある。しかし、両者の関係は両立度に依存し、両立度が高ければ、労働力率と出生率の負の相関を弱める効果があり、両立度が高いほど出生率は上昇する。つまり、女性の労働力率の高い国では、仕事と家庭を両立しやすい環境が整備されており、その結果、少子化に歯止めがかかったということだ。

女性の購買力の高まり

 女性の就労環境の整備は、労働力人口の維持や少子化対策につながるだけでなく、女性の賃金を安定させ、購買力を高めることで、日本経済を活性化する可能性もある。
 日本では、他の先進国と比べて、男女の賃金格差が大きい。デンマークやフランス、スウェーデンでは、女性の賃金は男性の9割程度だが、日本では7割を下回る(※2)。男女の賃金格差が生じる主な原因は、女性は男性と比べて平均勤続年数が短く、終身雇用・年功賃金制度が色濃い日本では賃金が上がりにくいこと、管理職比率が低いこと、そして、非正規雇用者が多いことだ(※3)。
 日本では依然として男女差の賃金格差が存在する一方で、男女雇用機会均等法の施行・改正などを経て、賃金格差は縮小傾向にある。厚生労働省「賃金構造基本統計調査」より、雇用者の「所定内給与額」(残業代を除いた月々決まって支払われる給与)について、20~40代の男女差をみると、いずれも10年前と比べて縮小している。縮小幅が最も大きな40~44歳では約3万円縮小し、縮小幅が最も小さな25~29歳でも約7千円縮小している(表1)。

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 また、総務省「平成21年全国消費実態調査」にて、単身勤労者世帯(一人暮らしで働いている世帯)の可処分所得(月々の収入から支払い義務のある税や社会保険料を差し引いた額)について、同様に男女差をみると、いずれの年代でも縮小傾向にある。なお、30歳未満の若い世帯では、平成21年調査で初めて、女性の可処分所得が男性を上回った(+2,641円)。この結果は、単身勤労者世帯のものであり限定的だが、現在、男性を上回ってお金を手にする女性も一部現れている様子がうかがえる。


※1 山口一男「女性の労働力参加と出生率の真の関係について-OECD諸国の分析と政策的意味」、独立行政法人経済産業研究所、Research & Review(2006年4月号)
※2 内閣府「平成24年版男女共同参画白書」
※3 厚生労働省「男女間の賃金格差解消のためのガイドライン(2010年8月)
※4 久我尚子「働く女性の消費実態~独身・妻・母の生活状況や消費志向の違いは?」、ニッセイ基礎研究所、ニッセイ基礎研REPORT(2013/5/13)
※5 三菱総研「生活者市場予測システム」(ダイヤモンドオンライン「経済、時間、家族という3つの資源で考える女性市場攻略のヒント」(2013/3/13)

久我 尚子(くが・なおこ)
2001年、早稲田大学大学院終了後、株式会社NTTドコモ入社。2010年よりニッセイ基礎研究所。現在、生活研究部准主任研究員。専門は消費者行動、心理統計、マーケティング。内閣府統計委員会専門委員。著書に「若者は本当にお金がないのか?統計データが語る意外な真実」など

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