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若者の海外離れ・内向き志向は本当?

若者の海外離れ・内向き志向は本当?

今夏は海外旅行が人気

 今年の夏は海外旅行が人気のようだ。JTBグループの調査によると、2014年の夏休み期間の海外旅行予約数は、昨年より1割増えている1。ちなみに、今夏の海外旅行のキーワードは「中距離方面へのシフト」だそうだ。渡航都市の人気ランキングは、1位ホノルル(昨年は3位)、2位バンコク(2位)、3位ロンドン(6位)、4位グアム(12位)、5位パリ(7位)で、ハワイやヨーロッパなどの中距離方面の順位が上がっている。なお、昨年1位のソウルは6位に順位を落としている。ロンドンやパリの順位上昇は、羽田空港の発着枠が拡大したことも追い風となっているようだが、景気が上向いていることで、航空券が比較的高い中距離方面の人気が上がっているのだろう。
 昨年から日本経済はにわかに活性化し、残業代や賞与が増えた企業も多い。一般消費者の景況感も好転し、昨夏の個人消費では「プチ贅沢」というキーワードがあがった。いつもよりちょっと高い食材を買う、外食をする、国内旅行やレジャーに出かける。身の丈にあった範囲でちょっとした贅沢を楽しむ、そんな行動が目についた。今年は4月に消費税率がアップしたが、人手不足に見られるように雇用環境は改善している。引き続き夏の賞与を期待できる企業も多い。こういった背景が、今夏の海外旅行人気へとつながっているのだろう。
 ところで、今の若者は海外へ行かない、留学や海外赴任を嫌がる、内向き志向だなどと耳にする。今はLCCなどの格安航空券もあり、お金をかけなくても旅行をしやすい環境が整っている。2010年から羽田空港に新国際線ターミナルがオープンし、利便性も向上している。今の若者は本当に海外に行かなくなっているのだろうか。

最近は上昇、20代の出国者率

1 20代の出国者数は1996年をピークに減少傾向にある(図1)。しかし、少子化が進行している中では、若者の出国状況は出国者「数」ではなく出国者「率」で捉えるべきだ。
 20代の出国者率は、1996年までは右肩上がりで上昇し、その後、2003年までは低下傾向が続いている。特に、2001年と2003年の出国者率の低下幅が大きいが、2001年は米国同時多発テロ、2003年はSARS(Severe Acute Respiratory Syndrome:重症急性呼吸器症候群)の流行やイラク戦争の勃発の影響だろう。その後、20代の出国者率は2009年から上昇に転じ、2012年(23.4%)にはピーク時と同様の高水準となっている。
 また、年代別に出国者率を見ると、2000年頃までは20代の出国率の高さが最も高かったが、その後、30~40代が20代を上回り、再び2009年から20代が最も高くなっている。なお、出国者率は2009年頃から、20代だけでなく全ての年代で上昇している2。
 出国する目的には、旅行や出張、海外赴任、留学、永住など様々なものがあるが、全ての年代で出国者率が上昇している背景には、海外旅行者数の増加があるようだ。海外旅行者数は出国者数と同様に推移している。2000年頃までは増加し(2000年で1782万人)、その後、減少傾向に転じ、ここ数年はまた増加している。2012年の海外旅行者数は1849万人であり、2000年のピーク時を超えている。テロや戦争に対する不安感やリーマン・ショックによる景気の冷え込みが一旦落ち着いたところに、LCCによる航空料金の低下や羽田空港の利便性向上が追い風となったことのかもしれない。日本人全体で海外旅行意欲が高まったことが、20代の出国者率の上昇にもつながっているのだろう。


久我 尚子(くが・なおこ)
2001年、早稲田大学大学院終了後、株式会社NTTドコモ入社。2010年よりニッセイ基礎研究所。現在、生活研究部准主任研究員。専門は消費者行動、心理統計、マーケティング。内閣府統計委員会専門委員。著書に「若者は本当にお金がないのか?統計データが語る意外な真実」など。

1 JTB「2014年夏休みインターネット予約人気都市ランキング発表!」2 一般社団法人日本旅行業協会「保存版旅行統計(2013年度)」 3 観光庁「若者旅行振興研究会」、国土交通省「海外旅行者満足度・意識調査(2008)」や「日本人の観光旅行の状況に関する調査・分析等報告書(2009)」、「若年層の旅行性向・意識に関する調査・分析報告書(2011)」、日比野直彦, 佐藤真理子「若者と旅―若年層の国内観光行動の時系列分析-」, 国際交通安全学会誌, Vol.37, No.2,pp.58-66.など。 4日比野直彦, 佐藤真理子「若者と旅―若年層の国内観光行動の時系列分析-」, 国際交通安全学会誌, Vol.37, No.2, pp.58-66.他 5 国土交通省「海外旅行者満足度・意識調査報告書(2008)」 6 留学者率は、文部科学省「日本人の海外留学状況」および総務省「人口推計」より算出した18~29歳人口に占める留学者数の割合。

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