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『若者は本当にお金がないのか? 統計データが語る意外な真実』著者・久我尚子氏インタビュー

『若者は本当にお金がないのか? 統計データが語る意外な真実』著者・久我尚子氏インタビュー

厳しい経済環境下にある、かわいそう、といわれる「いまどきの若者」の消費実態や結婚観、労働観のリアル像を、統計データを解きほぐして再構築する注目の一冊『若者は本当にお金がないのか? 統計データが語る意外な真実』。生活者にまつわるソフトな出来事を、統計手法を用いて独自の鋭い切り口でまとめる本誌コラムが好評の著者・久我尚子さんの特別インタビューをお届けしよう。

――なぜこのテーマ(若者・お金)で本を書こうと思ったのですか。
 よく世間では「今の若者はお金がない」と言われています。しかし実際に今の若者の様子を見ると、高級ブランド品は好まないのかもしれませんが、お洒落で、アルバイト代の相場は昔より高い印象があり、新卒待遇も上がっている印象もあります。そうした状況の中で、「お金がないって本当?」と疑問に思ったことがきっかけです。

――執筆を進める中で、ご自身が想像していた若者の実態とリアルデータとの間にはどのくらいの差がありましたか。
 毎月手にしているお金を推計する目先の収入はやはり案外あるいう印象です。30歳未満の単身勤労者世帯の可処分所得は、男女とも22万円程度でした。ただ、このご時勢で一人暮らしができる若者といえば、正規雇用で比較的恵まれた経済環境にある方が多いだろうと考え、非正規雇用者についても推計しました。その結果、25~29歳の男性で20万、女性で17万でした。50代の大人一人あたりの可処分所得とも比べたりしたのですが、やはり非正規雇用者でも案外手にしているという状況でした。ただ、独身の今の生活は良いのですが、家族を持つ将来の生活を考えるとお金があるとは言えないようです。非正規雇用者ではどの年齢階層でも平均年収は300万円を切るのですが、年収300万円未満の20~30代男性の既婚率は1割に満たないという状況です。正規雇用者でも過去と比べて賃金カーブは低下していますので、将来的の収入増に対して明るい見通しを持ちにくくなっています。
 消費については、いわゆる「若者の○○離れ」は、世間で言われるほどは起きていないという印象です。「クルマ離れ」や「アルコール離れ」については、男性では統計データにも一部表れていましたが、女性では30歳未満の単身勤労者世帯では自動車関係費や酒類の支出が増えていました。
「海外旅行離れ」は、統計データが誤解されている部分もあるようです。確かに20代の出国者数は減少傾向にありますが、それは少子化の影響で、出国者率を見ると近年上昇しています。特に、留学者率はバブル世代が若者だった頃よりも高くなっています。また、海外での就労についても、確かに新入社員の6割という多数が海外で働きたくないと言っていますが、どんな国・地域でも働きたい層も3割いて、しかも増加傾向にあります。若者は海外赴任を嫌がるというよりも、海外就労志向が二極化しているようです。

――その中でも、特に意外に感じた点とは。
「留学離れ」です。先に申し上げた通り、今の若者は「留学離れ」をしていません。でも、世間の風潮としては、若者は留学に消極的な印象があります。それはどうしてなんだろうと考えていた時に、ハーバードで日本人留学生が減っているというニュースを目にしました。そこで、米国留学生の状況を調べたところ、日本人留学生は少子化で確かに減っていました。でも、それよりも中国人やインド人留学生が大幅に増加している状況が目立っていました。また、諸外国と比べて、日本人留学生のアカデミックレベルも高くありませんでした。これらが日本人留学生の存在感を薄めていて、留学者率は下がっていないけれど、「留学離れ」と言われることに繋がっているのではないかと思います。


9784334038021『若者は本当にお金がないのか? 統計データが語る意外な真実』
著者:久我尚子
発行:光文社新書
価格:820円

 

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