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近年の女性にまつわる状況と政策ギャップ

近年の女性にまつわる状況と政策ギャップ

「女性の活躍」「少子化対策」と現状のギャップ

 昨年から女性の活躍促進に注目が集まっている。しかし、政府の女性の活躍推進施策や少子化対策をみると、その対象は限定的な印象がある。
 成長戦略では、特に「待機児童の解消」「女性役員・管理職の増加」「職場復帰・再就職の支援」「子育て後の起業支援について」を取り上げている(1)。「女性役員・管理職の増加」は未既婚によらないが、その他は主に既婚で子どものいる女性を対象としたものだ。
 また、少子化対策では、少子化には未婚の影響も大きいにも関わらず、大半が既婚夫婦、あるいは既婚で既に子のいる家庭に向けたものとなっている。また、既婚者であれば、必ず少子化対策の恩恵を受けられるというわけではなく、正規・非正規という雇用形態によって受けられる恩恵に差が出るものもある。
 現在の日本では、未婚化や少子化が進行している。また、非正規雇用が増えており、政策の主対象である既婚(・子あり)・正規雇用者という層は、女性のマジョリティーとは言えない。今ここで改めて最近の女性の状況を見ていきたい。

結婚しても仕事継続、でも出産で離職

 成長戦略では、結婚や出産・子育てで女性の就業率が下がる「M字カーブ問題」の解消が喫緊の課題として掲げられている。
 この10年の女性の就業率の変化をみると、30歳前後の女性の就業率は1割程度上昇しており、M字の底は上がっている2。女性の就業率を配偶関係別にみると、未婚者の就業率はもともと高いが、配偶者のいる女性の就業率が目立って上昇している。M字の底が上がった背景には、就業率の高い未婚女性の増加のほか、結婚後も働き続ける女性が増えたことがあるようだ。
 しかし、出産後は6割の女性が仕事を離れる。働く女性が増えているため、出産後も仕事を続ける女性の数自体は増えているが、実は、就業継続率はわずかに低下している。女性の就業継続率は、子どもの生まれ年が1985~1989年では39.1%だが、2005~2009年では37.9%である。この背景には非正規雇用者の増加がある。

正規・非正規で大きく違う就業継続率

 雇用形態によって、出産後の女性の就業継続率や育休取得率は大きく違う(図1)。1 就業継続率は、子どもの出生年によらず、「自営業主等」で最も高く、次いで「正規職員」、「パート等」である。自営業で就業継続率が高いのは、勤務時間などに明確な規定がないことも多いためだろう。「正規職員」と「パート等」に注目すると、両者の就業継続状況は大きく異なる。「正規職員」では直近の就業継続率は52.9%だが、「パート等」の就業継続率は18.0%に過ぎない。また、「正規職員」では就業継続率も育休取得率も上昇しているが、「パート等」では就業継続率は横ばい・微減傾向にあり、育休取得率も非常に低い。

非正規雇用者の増加と育休取得の難しさ

2 1990年代から若年層を中心に非正規雇用者が増加している(図2)。現在、雇用者のうち15~24歳の男女の半数程度、25~34歳の女性の4割は非正規雇用者として不安定な立場で働いている。なお、昔から35~44歳の女性では非正規雇用者が多いが、これは結婚・出産を機に働き方を変える女性が多いことによる。
 昨年から女性の活躍促進に注目が集まっている。しかし、政府の女性の活躍推進施策や少子化対策をみると、その対象は限定的な印象がある。
 成長戦略では、特に「待機児童の解消」「女性役員・管理職の増加」「職場復帰・再就職の支援」「子育て後の起業支援について」を取り上げている(1)。「女性役員・管理職の増加」は未既婚によらないが、その他は主に既婚で子どものいる女性を対象としたものだ。
 また、少子化対策では、少子化には未婚の影響も大きいにも関わらず、大半が既婚夫婦、あるいは既婚で既に子のいる家庭に向けたものとなっている。また、既婚者であれば、必ず少子化対策の恩恵を受けられるというわけではなく、正規・非正規という雇用形態によって受けられる恩恵に差が出るものもある。
 現在の日本では、未婚化や少子化が進行している。また、非正規雇用が増えており、政策の主対象である既婚(・子あり)・正規雇用者という層は、女性のマジョリティーとは言えない。今ここで改めて最近の女性の状況を見ていきたい。
 成長戦略では、結婚や出産・子育てで女性の就業率が下がる「M字カーブ問題」の解消が喫緊の課題として掲げられている。
 この10年の女性の就業率の変化をみると、30歳前後の女性の就業率は1割程度上昇しており、M字の底は上がっている(2)。女性の就業率を配偶関係別にみると、未婚者の就業率はもともと高いが、配偶者のいる女性の就業率が目立って上を変える女性が多いことによる。
 正規雇用者の就業継続率が上昇しても、女性全体の就業継続率が伸びない背景には、就業継続率が低い非正規雇用者が増えていることがある。
 なお、非正規雇用者も育休を取得できるが、「①同一の事業主に引き続き1年以上雇用されていること」のほか、「②子の1歳の誕生日以降も引き続き雇用されることが見込まれること」などの条件を満たす必要がある(3)。①は過去の事実であり明確に示すことができるが、②は人材に余裕のない中小・零細企業などでは確約することが難しい。こういったことを背景に、非正規雇用者では育休の取得、就業継続に結びつきにくい状況があるのではないだろうか。


1 産業競争力会議(日本経済再生本部)「日本再興戦略― JAPAN is BACK―(平成25年6月14日)」 2 総務省「労働力調査」にて、2003年から2013年にかけて、女性の25~29歳では68.1%→74.9%、30~34歳では56.3%→67.2%、35~39歳では59.5%→66.9% 3 厚生労働省「育児休業や介護休業をすることができる期間雇用者について」 4 久我尚子「若年層の結婚観~未婚化・晩婚化の一方で若者たちは結婚を望んでいる」、ニッセイ基礎研究所、基礎研REPORT(2012/12/25) 5厚生労働省「人口動態調査」 6 国立社会保障人口問題「出生動向基本調査」にて、1970年代から2005年調査まで夫婦の完結出生児数は2.2人前後を推移。直近の2010年調査で1.96人となり、初めて2人を下回った。 7岩澤美帆「近年の期間TFR変動における結婚行動および夫婦の出生行動の変化の寄与について」(2002)、人口問題研究、58-3、pp.15-44より、1970年代~2000年の合計特殊出生率低下の7割は結婚行動、3割は夫婦の出生行動の変化による寄与と確認されている。 8児童手当制度や公立高校授業料無償化制度の施行、妊婦検診・出産費用・不妊治療費の軽減、保育所待機児童の解消、放課後対策、小児医療の充実、ワーク・ライフ・バランスの充実(長時間労働の是正、男性の子育ての関わり促進、育休や両立支援制度の普及・定着など)など。 9地方自治体では婚活支援事業への取り組みが拡大している現状もある。参考:大瀧友織「自治体の『婚活』」 10一般的に雇用形態によらず就業していれば保育所入所資格はあるが、非正規雇用者では育休が取りにくく出産前離職者が多い。参考:松田茂樹「非正規雇用者のワーク・ライフ・バランス」、第一生命経済研究所、ライフデザインレポート(2010/1)

久我 尚子(くが・なおこ)
株式会社NTTドコモを経てニッセイ基礎研究所入社。生活研究部准主任研究員。専門は消費者行動、心理統計。早稲田大学大学院(工学)・東京工業大学大学院(技術経営および学術)修士課程修了。東京工業大学大学院博士課程在籍(学術)

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