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実践サバイバル投資術 NISAに踊らず、使い倒すコツ

実践サバイバル投資術 NISAに踊らず、使い倒すコツ

 2014年1月から始まる「少額投資非課税制度」(愛称:NISAニーサ)は、株式の売却益や配当への優遇税制を廃止する代わりに金融機関へのアメとしてイギリスのISA(Individual Saving Account)をベースに設計された制度だ。NISAが使えるのは1人につき1金融機関だけで一度決めると4年は移動できない。このため金融機関にとっては早い者勝ちの陣取り合戦となり、景品をつけたり、手数料を無料にしたり、人気漫画を使ったりと鼻息が荒い。

NISAの仕組みと裏事情

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 NISAを簡単にいうなら、「配当や売却益が非課税(20.315%の税金を払わなくても良い)」というメリットがあって、「1人年間100万円まで、5年で最大500万円まで」の利用枠が決まっているという制度だ。「い~ねぇ~」と思う時点であなたは半分負けている。「悪魔は細部に宿る」のだ。NISAは利益が非課税だけでなく、損失もなかったものとされる。いかにもお役所がいいそうな「公平」な考え方だが、国民の長期投資を促進するというお題目とは裏腹にいびつな仕組みである。例えば、NISAで個別株を買っていて、その会社がたまたま倒産したらその損失はNISA以外の株式投資の利益とは相殺できないし、損失を繰り延べることもできない。
 そこで出てくる金融機関のセールストークは「投資信託なら倒産はないから大丈夫」とか「長期分散投資なら問題はない」というものである。これを言うセールス担当者は金融知識のアップデートを10年間怠っているか、ノルマに追われて自分の頭で考えることを止めてしまった人々だと思う。
 まず、NISAには5年という保有期間が決まっていて、そこで強制的に損益が清算される。おまけに一回売却したらその枠は二度と使えないから「もったいない」が大好きな日本では、ほとんどの投資家が5年間持ち切ることになる。5年後の株価がどうなっているかは誰にも分からないし、投資信託も相場全体が低迷していれば損失が出る。さらに、損失続きで人気がなくなった投資信託は運用をやめて償還される。投資信託なら確かに倒産はないからゼロにはならないが、半分以下になってしまうことはよくあるのだ。だから「大丈夫」とは分かっている人ほど言うことはない。
「長期で分散」というキーワードは二重にウソが入っている。5年で清算されるのにどこが長期なのかが全く分からない。「老後資金が必要でしょ。だからウチでNISA口座を開けてね」とどうやったら言えるのか都市伝説並みの謎だ。また、7年から10年で繰り返すバブルの大底で強制的に清算され、その損失が「なかったことになる」ならNISAのメリットはゼロ。さらに、2008年のリーマンショックでもその後のユーロ危機などでも実証されているように、近年はすべてのリスク資産の相関が上昇し、クラッシュには全部下がる。従来の「いろんなものに投資する」という旧態依然とした分散投資の概念をいまだに顧客に押し付けているのは日本の金融機関ぐらいのもので、欧米ではその次の対策を探るのが常識となりつつある。それでも一旦自社にNISA顧客を取り込んでしまえば他業者に移れないし、首尾よく投資信託を買わせることができれば毎年信託報酬が金融機関の収入になる。だから、「皆さ~ん、NISAで投資信託を買いましょう」と言っているのだ。

NISAで10年儲ける裏技

 NISAでほぼ確実に儲けるにはNISAを自分で使うのではなく、NISAを使う大衆の先回りをすればよい。銀行でNISA口座を開けさせられると投資信託以外の選択肢はないから、コツコツためたNISA口座のお金から銀行に高い手数料を払い続けることになる。
 一方、ネットに精通した世代だとそう簡単に騙せないから、取扱商品が豊富で各種手数料が格段に安い大手ネット専業証券でNISA口座を持つはずだ。NISAは期間中の配当が非課税だからほぼ5年持つ前提とすれば、購入される銘柄は配当利回りが高いものが必然的に多くなる。具体的にはREIT(不動産投資信託)と高配当低位株だ。後者で、お米や自社商品などの株主優待制度が充実した個別株は特に人気が集中するだろう。
 さらに毎年1月に100万円の枠が与えられるから、素人投資家は3月までに買って、配当や株主優待割り当てを受けたいという下心で行動するはずだ。
「それなら先回りして儲けさせてもらおう」と考えるのが、プロとアマが区別なく競う株式市場で生き残る投資家たちに共通する発想なのである。
 やり方は極めて簡単。NISAで1月から3月に買いが集中すると思われるREITや高配当株、株主優待株を12月中に仕込んでおき、3月半ばまでに売るというもの。NISA制度が続く限り、これから10年は使える投資法だ。もちろんこの投資にはNISA口座を使う必要はない。本来、税金はあくまで儲けにかかるので気にする必要はないのだ。十分に利益を出してお国に貢献してやるぐらいの考え方でいればよい。

ついでにNISAもいいとこ取り

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 他人のNISAで儲けさせてもらうだけでなく、自分も非課税制度をうまく使いたいなら方策がないわけでもない。
「5年間配当を目一杯もらって、最も株価が高いところで売却して全部非課税」というのがNISAをフツーに利用する際のベストシナリオ。そうなると「配当や分配金が高くて」、「5年間で確実に大きく上昇して」、かつ「売り時が分かりやすい」金融商品にNISAを使うのが理想だ。ただし、常識で分かると思うがそんなものは詐欺商品の宣伝文句ぐらいしか存在しない。
 そこでちょっと現実的に考えるなら、「配当の非課税分で元本が目減りしてもまだ得になればよい」となる。つまり、5年の配当・分配金で節税できる分と元本の損失が使えなくなる分が同じに水準を考えればよい。となると結局、配当の5倍までの損失で済めばよいので、配当が5%なら元本の損は25%以内、配当7%なら35%以内となる銘柄を探せばよいことになる。ただ、現実はこれでも厳しい。そんなに配当が出るのはREITぐらいしかないが、REITも相場全体が下げれば半値になることもあるのだ。
 おそらく唯一のNISA必勝策は「使う年を選ぶこと」。目一杯使わないと損だと思ってしまうと、その時点で既にあなたの負けはほぼ確定だ。NISAに限らず、投資は「勝てる確率が高いと思う時にしか出動しない」のが鉄則である。つまり、7年から10年の相場循環で、相場が安い時にだけNISA口座で購入するのである。過去10年でもしNISAがあったとするなら、2003年~2005年の前半、2009年~2012年前半は使うべきタイミング、2006年~2008年、2013年半ば~現在は、NISAを利用しない方が良いタイミングとなる。「そんなのその時点じゃ分からないじゃないか」と思うなら、次の要件を目安にNISA利用の可否を考えるとよいだろう。

NISAを使うべきでない時

×普段投資をしない家族や知人が投資に興味をもったとき
×前年の日経平均が一昨年より30~40%上がっていたとき
×経済新聞や週刊誌に株式投資を勧める記事が多いとき

NISAを使っても良い時

◎日本経済はもうダメとメディアで多くの評論家が言っているとき
◎証券会社の業績が極めて悪いとき
◎銀行や証券会社がNISAを宣伝しなくなったとき
 もちろん儲かっても損しても投資は自己責任で(^.^)

(念のため付言すると、上記は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではない。)


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土居雅紹(どい まさつぐ)
eワラント証券株式会社COO。CFA協会認定証券アナリスト、証券アナリスト協会検定会員。1964年静岡県生。88年一橋大学卒業後、大和証券入社。証券アナリストとして活躍。93年米国ノースカロライナ大学経営学大学院にてMBA取得。大蔵省財政金融研究所などを経て、ゴールドマン・サックス証券へ。00年同社でeワラントを開発・導入。11年8月より現職。時代に合った投資方法を研究、その分析力には定評がある。

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