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プレパラート アベノミクス消費と消費増税

プレパラート アベノミクス消費と消費増税

消費増税の影響を予測するには

 4月に消費税が上がった後、個人消費はどうなるのか? 今まさに多くの企業が懸念しているところだろう。反動減はどれくらい起きるのか?もとに戻るのはいつか?
 マスメディアなどの報道は自動車や住宅などの高額商品に注目したものが多い。価格は増税の負担感と比例するため1つの判断基準になる。しかし、今回の状況をとらえるためにはこの1年間の消費の変化にも注目すべきだ。アベノミクスによる景況感の好転によって、リーマンショック以降、節約一辺倒だった消費生活にちょっとした贅沢を楽しむような傾向もみられるようになった。
 消費増税による4月以降の動向を予測するには、負担増を回避するために先んじて買われているものと、景況感の好転で買われるようになったものを分けて考える必要がある。
 そこで、この1年の消費者心理や家計収支の変化を振り返り、今後の動向を予測する上でのポイントを整理したい。

消費者心理は増税決定で暗転

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 内閣府「消費動向調査」によると、「消費者態度指数」は2012年12月、安倍政権が発足した直後に大きく上昇し、春から夏にかけて盛り上がっている(図1)。しかし、消費増税が決定した10月以降は落ち込んでいる。
「消費者態度指数」を構成する各指標の動きをみると、10月以降で特に低下が目立つのは「耐久消費財の買い時判断」である。また、「暮らし向き」や「収入の増加」も低下している。高額品では増税による負担が大きいこと、消費増税は生活を様々な面から圧迫すること、企業の業績改善で賞与などの増加や基本給の上昇がみえている企業もあるが全体には波及しきれていないことなどが反映されているのだろう。
 一方、「雇用環境」(職の安定性、みつけやすさ)は増税決定後も上昇傾向を示している。この背景には景気回復に伴う人手不足がある。昨年12月の有効求人倍率は1.03倍でありi、6年3カ月ぶりに求人が求職数を上回った。特に景気下支えを担う公共工事で目立つほか、宿泊業や飲食サービス業でも景況感の好転で人手不足のようだ。失業率も低下しており、リーマンショック後の最高値は5.5%だが、昨年末には3.7%まで低下しているii
「資産価値の増え方」は高水準で推移しているが、これは増税決定後も円安・株高基調が大きくは変わらないため、金融資産保有率の高い層を中心に期待感が維持されているのだろう。

アベノミクスによる「期待先行型」消費

 この1年の家計収支をみると、消費者心理と同様に春から夏にかけて、やや盛り上がりをみせたものの、秋以降は低下傾向にあるiii。手元の収入が増えたから支出も増え、消費者心理も浮上した。しかし、秋以降は収入がやや減少したために支出も減り、消費増税の決定が消費者心理の落ち込みに拍車をかけたというところだろう。
 一方、増減率がプラスであった月数は実収入でも支出でも13カ月中8カ月と多い。この1年あまりの各月の増減率の平均をとると、実収入は+0.5%、消費支出は+1.3%となり、収入より支出の増加率の方が大きい。これは実額でみても同様であり、アベノミクスへの期待感が増えた収入以上に消費を増やした可能性がある。つまり、アベノミクス1年の個人消費は、収入の増加を支出の増加が上回る『期待先行型』の消費と特徴づけられる。ただし、この状況は年代によって大きく異なるようだ。

若者は控えめ、
シニアは活発な消費意欲

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 世帯主の年代別にこの1年の収支をみると、世帯主の年齢が30歳未満の若年世帯では実収入が最も増加しているにも関わらず、消費支出はさほど増加していない(図2)。一方、60代の世帯では実収入はさほど増加していないが、消費支出は最も増加している。この背景には、若年層では非正規雇用者が多く、不安定な立場で働いている者も多いため、目先の収入が増えても使いにくいこと、一方、シニア層では株などの有価証券保有率が高く(20代は5%前後に対して、60代は35%程度)iv、株高による資産効果で使いやすいことがあるだろう。

消費支出の動き

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 この1年の消費支出の主な品目の増減率をみると、多くのもので増加している(図3)。「交通・通信」や「教育」の増加率が大きいが、これは特定の月で支出が大きく増えた影響である。「交通・通信」には自動車関係費も含まれており、詳しくは後述するが、やはり増税決定後に大きく増加している。なお、交通費は概ね変わらず、通信費はスマートフォンへの移行の影響で多くの月で前年同月比を上回っている。一方、「教育」は9月など学期始めの時期に私立の授業料や塾などの家庭用教育費が増加している。
 一方、「食料」や「家具・家事用品」、「被服及び履物」、「教養娯楽」では増加率はさほど大きくないが増加月数が多い。これらの月別推移の動きは実収入と連動しており、収入の増加に伴って支出をコンスタントに増やした可能性が高い。ただし、実収入と連動している「家具・家事用品」のうち、「家庭用耐久財」(掃除機や洗濯機などの家電)は実収入が減った12月にも増加しており、消費増税の影響等も垣間見られる。
 ところで、「住居」の増減率はマイナスだが、各月の推移をみると9月、つまり消費増税の経過措置前に設備修繕費などが増加している。
 以上を整理すると、家計支出の動きから消費支出の品目は「消費増税による駆込みの影響」(自動車、住居など)、「アベノミクスによる影響」(食料や教養娯楽など)、「技術トレンドなど他の影響」(通信、教育)に分けられる。


kuga久我 尚子(くが・なおこ)
株式会社NTTドコモを経てニッセイ基礎研究所入社。生活研究部門研究員。専門は消費者行動、心理統計学、金融マーケティング。早稲田大学大学院(工学)・東京工業大学大学院(MOT:技術経営、学術)修士課程修了。東京工業大学大学院博士課程在籍(学術)。

i厚生労働省「一般職業紹介状況(平成25年12月分及び平成25年分)について」
ii総務省「労働力調査」
iii総務省「家計調査」
iv総務省「平成21年全国消費実態調査」
v一般社団法人日本自動車販売協会連合会「新車・月別販売台数」、および一般社団法人全国軽自動車協会連合会「軽四輪車新車販売確報」
vi経済産業省「商業販売統計(家庭用電気機械器具・季節調整値)」

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