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もうひとつのIPS~Another IPS(Indoor Positioning System)

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もうひとつのIPS~Another IPS(Indoor Positioning System)

 次代の花形産業iPS (induced PluripotentStem : 人工多能性幹) 細胞の研究は百花繚乱の様相を呈している。人口減少が始まっている日本にとって、再生医療の実用化・産業化に対する国を挙げての支援は理に適っている。早期の段階では難病の治療、中期的にはQOL (Quality ofLife)の向上に大きく貢献するだろう。今後10年経てば、電化製品や自動車への欲求は今まで以上に減退しそうなので、医療や美容・健康分野は日本産業界の希望の光である。
 今回はもうひとつのIPS、屋内測位システム(Indoor Positioning System)の話だ。と言いつつも、IPSの前にGPSを少々。ご存じ、GPS(Global Positioning System)はカーナビゲーションから携帯・スマートフォンと生活の分野でも広く利用されてきた。地震の際にどれだけ地盤が動いたかということもGPSを利用して計測する。屋外や大陸規模での位置計測には欠かせない公共的(軍事的でもある)電波インフラだ。ただ、このGPSそのものは米国が運用しているため位置精度(誤差)も米国の気分次第で決まる。従い、安全保障における独立性を担保したい国・地域はそれぞれ個々に衛星を打ち上げてきた。欧州のガリレオ、ロシアのグロナス、中国の北斗などがある。日本の準天頂衛星みちびきもその要素がある。本年7月2日、インド版GPS、IRNSSの打ち上げに成功した。安全保障、国威発揚にも絡むだけに今後も新たな国が参入し続けるだろう。

フロンティアは屋内にある

 屋外の位置測位技術が整備されつつある現在、最後のフロンティアは屋内だ。
「自分はアウトドア派だから屋内の位置測位なんて関係ない」と思う人もいるかもしれないが、人は意外とインドア派だ。「都市圏での生活の場合、一日の8割程度を屋内で過ごしている」(慶應義塾大学大学院・神武直彦准教授)とのことで、自宅に始まり、学校、オフィス・工場、移動に利用する地下鉄、大型商業施設、映画やドーム型球場などの屋内娯楽施設を考えれば、行動範囲がほぼ屋内であることにうなずく人も多いはずだ。ビジネスやサービスの主戦場はやはり屋内なのである。
 では、屋内位置測位技術はどのようなビジネス・サービスをもたらすのであろうか。
 わかりやすい例では既存のナビゲーション(屋外)の延長である屋内ナビである。巨大化する一方の商業施設の中で、屋内誘導を行ってくれるのは心強いことだろう。ただ、顧客が屋内ナビを利用する以上に、マーケティングの一環として顧客取り込みを仕掛ける商業施設側にもメリットは大きい。顧客の位置や滞在時間でピンポイントにクーポンなどのキャンペーンを組むことが可能であるし、行動履歴・パターンを高精度に記録することで、たとえ購買に至らなくてもどの棚のどの商品に興味があったかを推測することが可能で、次の来店に備えることができる。
 工場および物流の自動化にも大きな効果が見込まれるだろう。屋内位置測位が安価でかつ高精度に実現できるようになると、モノとヒトの流れが手に取るように分かる。大手企業で一部行われている自動生産・物流が中小企業にも波及し、生産性を著しく改善する可能性がある。医療・介護施設においても貢献があるだろう。患者の位置は現在でも把握しているケースがあるが、薬(箱)や医療器具を含めて施設内での位置・時間を正確に記録することで効率性を高めるとともに、医療過誤を予防する効果が見込まれる。
 家庭や職場においても効果は顕著だ。存在の有無で照明を点灯・消灯して省エネを図るといったことから始まり、年々衰える認識力をカバーするためコンピュータ機器の支援を得るなど、そう遠くないロボットとの共存社会の到来を鑑みると屋内における精度の高い位置情報は日常生活を半自動化する上で欠かせない。


文|本丸達也(発行人)

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