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大阪ラプソティー Osaka Rhapsody

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大阪ラプソティー Osaka Rhapsody

 海原千里・万里が歌う『大阪ラプソディー』が世をにぎわせたのは、1976年。東京オリンピック(1964年)に続く国家プロジェクトとして盛大に催された、大阪万博(1970年)の余韻が残っていた頃であった。この『大阪ラプソディー』は1936年に発売された『東京ラプソディ』に「インスパイア」されたものである。「大阪」は40万枚、「東京」は35万枚の売り上げで、当時の2都市は拮抗していた、と言えなくもない。だが、東京、大阪と時代の波を交互に謳歌するという予定調和はいつしか崩れていた。リニア中央新幹線が名古屋どまり、中京工業地帯の出荷額が阪神工業地帯を凌駕するなど、阪神間に思い入れのあるものにとっては耳が痛い話が続く。

 しかしながら、大阪にも芽生えがみられる。世界4位の乗降者数をもつ大阪駅(梅田駅含む)に直結したグランフロント大阪が昨年春、開業した。このビジネス一等地に大阪市のグローバルイノベーション支援拠点「大阪イノベーションハブ」が開設されている。自治体が「イノベーション」の看板を掲げることは珍しいことではない。通常は看板倒れで実効性が乏しいケースが多い。だが、大阪市は本気だ。イノベーションの「触媒人」である大阪市都市計画局イノベーション担当の角勝氏は、個人的な見解と前置きした上で大阪イノベーションハブの設立意義をこう話す。
「大阪から東京に企業が流出していくというのがここ20年ほど続いています。企業誘致も努力はしているのですが、企業流出の流れは変わりません。おそらく構造的な問題があるのでしょう。今までのような対症療法的なことを繰り返しても効果はあまり期待できません。時代を変える、生活を変えるという本当の意味でのイノベーションを創出するという覚悟がない限りは構造的な問題を払拭することは難しいと思います。当施設はテクノロジーへの情熱と野心と行動力を持つ人を全力で支援する方向に大きく舵を切りました」
 イノベーションという言葉は重い。書店にはイノベーションというタイトルがここかしこに見受けられ、このワードはメディア上で氾濫している。対して革新的な技術やサービスを生み出すのは容易ではない。ところが、大阪市の一手は未来を捉えている。成果はすでに表れつつある。
「世界的な家電メーカーがこれほど集積しているのは日本くらいしかありません。短期間にシャープ、ソニー、パナソニックの3社とハッカソン(多様な参加者を巻き込んだ短期集中型の技術開発イベント)を開催しているのは、おそらく当施設くらいでしょう。本来非開示である技術情報を利用し、メーカーと協働したプロトタイプ開発でも面白いものが生まれました(編注:次ページ参照)」(大阪市角氏)
 
 イノベーションの主役は個人へと移りつつあると言う。大阪はやはり人の街だ。
「安価なクラウド・コンピューティング環境やオープンなソフトウェア、ハードウェアの存在、3Dプリンターを利用した試作など、個人や小さな組織が起業するための外部環境が整ってきました。また、アップストアのように販売や決済回収するためのプラットフォームやシステム上での生態系が完成されていると、思い立てば誰でもリーン・スタートアップが可能です。これからのイノベーションは個人の活動からも次々と生まれてくることでしょう。プロダクトやサービス開発をしているイベントを観ていると、アイディア出しやいい意味でおせっかいな参加者の巻き込み手法、プレゼンテーションの面白さなど、大阪あるいは関西ならではのユニークさはあると思います。この先、当施設が触媒となり、ひとつひとつ成功事例を生み出していくことが大阪自体をイノベーションすることにつながると信じています」(大阪市角氏)

 大阪が世界に向けて再び存在感を示せるのか。この数年間が勝負時であろう。2020年は大阪にとっても分水嶺になる。さて冒頭の海原千里は、後の上沼恵美子氏。この存在感にはあやかりたい。


文|本丸達也(発行人)

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