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プレパラート 始まる就職活動、若者の働き方の価値観は?

プレパラート 始まる就職活動、若者の働き方の価値観は?

就職活動にも明るい兆し?

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 リクルートスーツに身を包んだ学生の姿が目につく季節になってきた。新卒の就職活動は長らく厳しい状況が続いている。しかし、昨年から日本経済の回復傾向が強まったことで明るい兆しが見え始めている。
 多くの企業で内定式が執り行われる10月1日時点の大学生の就職内定率は、リーマン・ショック後(2010年3月卒以降)は50%台まで落ち込んだが、ここ数年は上昇傾向にある(図1)。今春卒業予定の学生では既にリーマン・ショック直後の状況より改善している。日本経済の回復基調がこのまま続けば、現在、就職活動中の学生ではリーマン・ショック前の水準に戻る可能性もあるだろう。

「就社」から「就職」へ、強まる個人意識

 景気も就活状況も変わりつつあるが、今の若者は将来に対して明るい見通しを持ちにくい世代だ。現在、就活中の大学生はバブル崩壊後に生まれ、日本経済が低迷する中で育ってきた。親のリストラや給与カットなどを目の当たりにしている若者も少なくないだろう。また、早くから少子高齢化による社会保障の世代間格差を認識し、年金はもらえないものと思っている若者も多いだろう。経済観は働き方の選択にあらわれる。今の若者はどのような視点で就職先を選んでいるのだろうか。
 新入社員が就職先を選ぶ際に重視したことの推移をみると、1970年代は「会社の将来性を考えて」の選択割合が最も高かったが、近年は低下しているⅰ。一方、「自分の能力・個性が生かせるから」や「仕事がおもしろいから」、「技術が覚えられるから」は上昇している。つまり、どんな会社で働くかという「就社」意識が弱まり、どんな仕事で働くかという「就職」意識が強くなっているようだiii。バブル期のモーレツ社員は会社に対する絶対的な信頼や期待を持ち、個人をある程度犠牲にしても会社や組織に貢献するという風潮もあっただろう。しかし、バブル崩壊により大企業神話も崩れ、時代とともに働き方は「会社」主体ではなく「仕事」主体へと変わり、価値観のベースは集団から個人の志向へとうつっている。

安定志向、国内志向の強い企業選び

 一方で企業の選び方はどうなっているのだろうか。毎年2月頃に様々な媒体で就職人気企業ランキングが発表される。例えば、2013年の日本経済新聞社のランキングをみると、1位「日本生命保険」、2位「東京海上日動火災保険」、3位「第一生命保険」、4位「三菱東京UFJ銀行」、5位「三井住友海上火災保険」となっており、国内の伝統的な金融機関がずらっと並んでいるiv
 なお、ランキングを見る際には各媒体の特徴や、直近の企業動向を念頭に置く必要がある。例えば、日本経済新聞の調査対象は「日経就職ナビ」を利用している就活中の学生であり、文系学生が理系学生より圧倒的に多くなっている。また、日本経済新聞を読んで就職活動をする学生というと経済知識を比較的必要とする業種を目指す学生が多い印象もある。また、企業動向については、2013年は国内の電機メーカーが大きく順位を下げているのだが、前年の大手電機メーカーの赤字決算や人員削減などが影響しているのだろう。
 このようにランキングにはいくつか考慮すべき点はあるが、上位に国内の伝統的な企業が並び、外資系企業の姿が見えないという傾向は、どのランキングも共通のようだv。もちろん上位にあがった日系企業でも積極的に海外戦略を展開し成功をおさめているところも多いが、学生が各社を選んだ理由をみると、海外展開は直接的な理由にあがらず、「規模が大きい」「安定している」「一流である」などが並んでいるⅲ。
 日本経済の低迷や少子高齢化による国内市場の縮小、一方で著しい経済発展を遂げている新興国の状況などを背景に、近年、企業戦略や人材育成など様々な領域でグローバル化の必要が言われている。しかし、今の若者の企業の選び方をみると、国内志向と安定志向が強い様子がうかがえる。

二極化する海外志向

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 なお、国内志向については少し注意が必要だ。
「今の若者は商社に入ったのに海外赴任を嫌がる」「留学者数も減り、内向き志向だ」などと耳にすることもあるが、詳しくみると意外な事実もある。
 新入社員の海外での就労意向の推移をみると、この10年で「働きたいと思わない」の割合が倍増し6割近くに達している(図2)。しかし、「どんな国・地域でも働きたい」という強い海外志向を持つ割合も増えている。10年前は「国・地域によっては働きたい」という、ぼんやりした海外志向が過半数を占めていたが、この10年で、ぼんやりした海外志向を持つ層は減り、消極的な層と積極的な層に二極化している。結果的に消極層が過半数を超えて多くなったことで、若者の内向き志向が目につく機会が多くなったのだろう。しかし、実は積極層も増えている。
 なお、積極層が海外で働きたいと思う理由は、「日本ではできない経験を積みたいから」(74.0%)が最も多く、次いで「自分自身の視野を広げたいから」(65.6%)、「語学力を高めたいから」(47.7%)となっている。一方、消極層が海外で働きたいと思わない理由は、「自分の語学力に自信がないから」(65.2%)が最も多く、次いで「海外勤務は生活面で不安だから」(50.4%)、「海外に魅力を感じないから」(35.5%)となっている。


kuga久我 尚子(くが・なおこ)
株式会社NTTドコモを経てニッセイ基礎研究所入社。生活研究部門研究員。専門は消費者行動、心理統計学、金融マーケティング。早稲田大学大学院(工学)・東京工業大学大学院(MOT:技術経営、学術)修士課程修了。東京工業大学大学院博士課程在籍(学術)。

i 公益財団法人日本生産性本部「新入社員 働くことの意識調査」
iii内閣府「平成19年版 国民生活白書」
iv日本経済新聞 第二部「日経就職Navi2013年 新卒広告特集~生損保など金融 上位に」(2013/2/27)
v 就職人気ランキングとして2013年発表のダイヤモンド社「ダイヤモンド就活ナビ人気企業ランキング」、株式会社マイナビ「マイナビ大学生就職企業人気ランキング」、株式会社学情「学情ナビ就職人気企業ランキング」、株式会社文化放送パートナーズ「就職ブランドランキング」、楽天株式会社「楽天みんなの就職活動日記2014年度卒新卒就職人気企業ランキング」、2010年発表のリクナビ「就職人気ランキング」を確認。上位10位までにあらわれた外資系企業はP&G Japan株式会社1社のみ。
vi公益財団法人日本生産性本部「2013年度 新入社員 春の意識調査」
vii株式会社ディスコ「2014年度 日経就職ナビ 学生モニター調査結果(2013年7月発行)」
viii 株式会社ネオマーケティング「今どき“会社飲み”実態調査」

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