オリンピックで子どもがほしくなる?
9月8日。2020年の夏季五輪の開催地に東京が決まった途端、「7年後は子どもと一緒にオリンピックを見たい!」「オリンピックまでに結婚して、子どもを生みたい!」というツイートが若者たちの間で大量に現れたそうだ。
未婚化・晩婚化、少子化が進行する現在の日本では、若者たちからこのようなツイートが発生することに多くのネットユーザーが驚いたのではないだろうか。
大規模で華々しいイベントの決定で気分が高揚した若者が多かったのだろうが、日本ではオリンピックをきっかけに結婚や出産は増えるのだろうか。
これまで日本では計3回の五輪が開催されている。1964年の東京五輪(夏季)、1972年の札幌五輪(冬季)、1998年の長野五輪(冬季)だ。しかし、それぞれの開催が決定されてから開催されるまでの出生率の推移をみても、五輪前に大きく増えるといった変化はないようだ。
1964年の東京五輪開催時は、開催が決定した1959年から数年は逆に低下している。また、1959年より1964年の出生率の方がやや上がっているが、その差はわずか+0.01ポイントだ。
また、1972年の札幌五輪開催時は、開催が決定した1966年は「ひのえうま」の年で出産が控えられたため、翌年は出生率が上がっているが、その後は横ばいで推移している。また、この時期は第二次ベビーブーム(1971~1974年)と重なっており、五輪の影響は見えにくい。
そして、1998年の長野五輪開催時は、第二次ベビーブーム後に少子化が進行した時期であり、開催が決定した1991年の出生率はすでに1.53と低く、さらに五輪開催の1998年にかけて1.38にまで低下している。
つまり、過去3回の五輪開催時の出生率をみる限り、日本では五輪によって出産が増えるわけではないようだ。また、婚姻の状況をみても、五輪との関係はみられない。
それでは、なぜ若者たちの間で「結婚したい」「子どもが欲しい」というようなツイートが増えたのだろうか。
未婚化・晩婚化の一方、結婚を望む若年層
現在、日本では未婚化・晩婚化、少子化が進行している。しかし、18~34歳の未婚男女に結婚の意思をたずねると、1980年代から直近の2010年の調査まで、ほぼ変わらずに9割が「いずれ結婚したい」と答える。また、この9割の男女に、いつまでに結婚したいのかについて、「理想の相手があらわれるまで結婚しなくても構わない」と「ある程度の年齢までには結婚したい」の二択でたずねると、6割が「ある程度の年齢までには結婚したい」と答える。2000年頃までは「理想の相手があらわれるまで結婚しなくても構わない」が半数を超えていたが、近年、逆転し、理想の相手を求めるよりも、ある程度の年齢までには結婚したいというように結婚に対する先のばし意識が薄らいでいる。
よって、先の大量ツイートは、五輪開催の決定をきっかけに結婚したい・子どもを持ちたいという願望が現れたわけではなく、もともと強かった願望が開催決定をきっかけにあふれ出たとみる方が適切だろう。
では、大半の若者たちに結婚願望がある一方で、なぜ未婚化・晩婚化が進行しているのだろうか。