ホーム / Business / 経済 / 【ある女性経営者のグローバル視点】日本だけでヒットしているアレのお話

【ある女性経営者のグローバル視点】日本だけでヒットしているアレのお話

ドラッカー、ポール・スミス、クア・アイナ

突然ですが、上記3点の共通項が何か、お気付きになりますでしょうか。
答えは、日本で「特に」ヒットしている、という点です。今回は日本でのみヒットしている商品・サービスの謎から、日本人の得意分野を再考してみたいと思います。
そもそも「ヒット」というのはピーター・ドラッカー教授には失礼な言い方かもしれませんが、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』(ダイヤモンド社、2009年)、通称『もしドラ』がミリオンセラーとなったこともあり、原書の『マネジメント』(ダイヤモンド社、2001年、原典:“Management:Tasks,Responsibilities,Practices”)に注目が集まりました。この現象に、『世界の経営学者はいま何を考えているのか』(英治出版、2012年)の中で、著者の入山章栄氏が、「日本人は『アメリカの経営学=ドラッカー』だと思っているのではないか」、と同書が経営学の教科書の代名詞のように思われている点に苦言を呈しておられます。確かにドラッカー教授自身も、まさか自分の著書の関連本がアニメ化や映画化までされるとは思っておられなかったことでしょう。
ポール・スミスは、ロンドン、パリ、ミラノ、ニューヨーク、香港、シンガポール、アラブ首長国連邦など66カ国で展開される、押しも押されぬグローバルブランドです。しかしながら、 本国のイギリスでは17店舗しか展開しておらず、また多くの国では1店舗展開であるにもかかわらず、日本での展開は200店舗を超え、一時期は売上のほとんどを日本でたたき出しているという状況だったようです。現在では米国展開を増やし、日本の比率は下がっている模様ですが、売上の大半が日本から上がっているという状況に変わりはないようです。
1975年にハワイ・オアフ島の田舎町ハレイワで生まれた小さなハンバーガー店だったクア・アイナは、1997年ホノルルに2号店をオープンするとともに、東京・青山に日本第1号店をオープン。依然として本国ハワイでは2店舗、ロンドンに1店舗であるにもかかわらず、日本では20店舗を展開しています。

Big in Japan

これら日本でのみ有名、という現象を洋楽の世界でビッグ・イン・ジャパンと呼び始め、それが他の業界でも揶揄を込めて使われるようになりました。
洋楽では、「うーんマンダム」のCMで使われたジェリー・ウォレスの『男の世界』、少し時代が下ってディープ・パープル、近いところではMr.Bigも欧米人と話すと一発屋くらいの印象らしいですが、日本では根強く売れていたかと思います。ビッグ・イン・ジャパンの典型ですね。
2007年頃に大ブレイクしたビリーズブートキャンプも、同じく本国より日本で局地的に大受けに受けた例の一つ。食品ではイタリアのペック、保険では米国のアフラックなど、収益の大半を日本で稼ぎ出す例は、どの業界でも挙げられます。(次元が異なりますがウォルト・ディズニー・グループも、映画にリゾートに版権ビジネスにと、大いに多角化しているかと思いきや、東京ディズニーリゾートが一時的に閉鎖したことによるロイヤルティ収入の減少で、収益がぶれていることがアニュアルレポートを読むと分かります。“Earthquake and tsunami ” がいかに同社のリスク要因であるかが、開示文書のあちこちに明記されています)

アパレルブランドは特殊か?

ここで、ビッグ・イン・ジャパンたちの中でも、アパレル業界を取り上げて深掘りしてみたいと思います。上述のポール・スミスの他にも、バーバリーのブラックレーベル、ブルーレーベルは日本のみですし、キャサリンハムネット、オールドイングランドあたりも日本でのみ特に受けているブランドです。これらの「日本ウケ・ブランド」に共通しているのは、まずは商社のブランドコーディネートの力。すなわち、本国のデザイナーのイメージをいかにローカライズするか、プレス活動、展示会などを含めた有効な宣伝もそうですし、価格帯、クオリティのマネジメントや、靴やジュエリー、果てはタオルや傘といった雑貨を含めた面展開といった戦略によるところでしょう。
マーケティング手法が功を奏した一部のブランドがたまたまブレイクしたのだろう、と言われればもちろんそれも一つの側面であることは正しいですし、そのほかにも日本のアパレルのライセンスビジネスの特殊性は挙げようと思えばいくらでもあるのですが、実はハード面とソフト面をうまく組み合わせた戦略という意味で、その成功について、私は学ぶ価値があると思っています。


竹内 明日香竹内 明日香(たけうち・あすか)

日本興業銀行(現みずほフィナンシャルグループ)にて国際営業や審査等に従事後、2007年に独立し、海外向けに日系企業の情報提供を開始。2009年にアルバ・パートナーズを設立し、国内企業の海外事業支援と情報発信支援(プレゼンサポート等)を提供。東京大学法学部卒業。日本証券アナリスト協会検定会員

Scroll To Top