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【ある女性経営者のグローバル視点】日本的「CSR」と世界的潮流の起点となる日本

前回は「プレゼン」について取り上げ、日本企業や日本人の「情報発信」の特徴について述べました。今回は、よりマクロな観点から日本企業の「情報発信」を分析するために、企業の情報開示の一部であるCSR(Corporate SocialResponsibility=企業の社会的責任)活動やそのコミュニケーションについて、少し元気の出るお話をしたいと思います。
当社では、お客様のCSR報告書を作成したり、その参考となるよう海外の同業者のCSR活動をリサーチしたり、といったお仕事もお受けしています。その中で気づいた日本企業の情報発信の特徴についてお話ししたいと思います。
CSRという言葉が日本に紹介されて40年余りが経過し、なじみのある略語の一つとなっていることでしょう。KPMGが3年ごとに行っている調査では、日本の大手企業のCSR報告書の作成率は世界トップクラスとなっています(フォーチュン・グローバル500社の上位250社と世界34カ国の売上高上位1 0 0社を対象とした調査では、日本は作成率99%と100%の英国に次いで2位)。

現状の日本のCSRの特徴

しかし、なじみある言葉でありながら、日本では言葉の意味が誤解されていたり、せっかく行っているCSR活動がうまくアピールできていなかったり
という例が多いようです。
まずCSRといった時に、日本の企業の中には寄付活動やボランティア活動をアピールする会社もあるようですが、これは世界的なCSRの理解とは少し異なります。例えば国際標準化機構ではCSRのためのガイドライン「ISO26000」において組織統治、人権、労働慣行、環境といった事項を掲げていますが、そのことからもCSRとは「企業や社会のサステナビリティに資する行動」という幅
広い概念であることがわかります。よって寄付活動やボランティア活動といった社会貢献活動はあくまでその一部にしか過ぎないのです。
もちろん日本でも、CSR活動の先進的なアピールに成功している会社はあります。B to Cビジネスを手がける大手企業に多いのですが、しかしこれも開示の仕方をよく見てみると、「これから研究します」という控えめなスタンスの企業が少なくありません。ただ実際にグループ会社も含めた企業活動を調査させていただくと、「よく知れば立派なCSR活動をしていらっしゃるではないか。もっと上手にアピールされても良いのに」と感じる企業は多々あります。

江戸の時代から日本に根付く教え

CSRという言葉そのものは1970年代に輸入されたものですが、実は日本には古くからこの教えが根付いていたことをご存じでしょうか。それを裏付ける言葉として有名なものを古い順に挙げて
みますと、

◎近江商人の「三方良し」
(「売り手良し」「買い手良し」「世間良し」と、この時代に既にステークホルダーを意識した社会貢献の概念があり)

◎住友家の「浮利を追わず」
(社会的価値のない一時的な利益を追うな、という教え)

◎渋沢栄一の「論語と算盤」
(資本主義は、利己主義に陥りやすいので道徳的な指針が必要だとして『論語』の精神を引用)

などがあります。

これらに限らず、様々な主体が日本版「CSR」を繰り返し述べてきましたが、これらは、会社形態が確立する前から商人に伝えられてきた教えでありながら、企業や社会が長年存続するための
知恵でもありました。社会と企業のサステナビリティを共に重んじるという、現在グローバルに使われているCSRの「正しい」概念が、実は、古くから日本に存在していたのです。

現代に伝わる精神が企業の呪縛に?

日米ROE要素分析

日米ROE要素分析

この教えは、株主に限らず、顧客・取引先・従業員などの幅広いステークホルダーを重視し、和の精神で対話を重んじるという素晴らしいDNAとして、現代の企業に引き継がれています。
よく日本の上場企業のROE(Return On Equity=自己資本利益率)の低さが指摘されますが、ROEを構成する三つの指標(ROE=売上高純利益率×総資産回転率×財務レバレッジ)を日米で比較する(下表ご参照)と、日本企業が売上高純利益率で最も劣るのは、「儲け過ぎは悪」という思考がもたらしている、というのもあながち嘘ではないのではないかと思います。
日本企業が外国人投資家に不人気である理由として、株主がステークホルダーの中で相対的に軽視されている点、企業のROEが低い点が、よく挙げられますが、その背景には古くから根付いた精神があるのだと言ったら、あまりに身びいきに聞こえますでしょうか。

各国の情報発信の質

日本の大手企業のCSR報告書作成率は、世界のトップ水準だと冒頭で述べましたが、ここではその評価を見てみたいと思います。
CSR報告書の作成に際しては、国際的なスタンダードとなりつつあるガイドラインも存在していますが、その採用には強制力がないため、CSR活動に関する情報発信については、国または企業によって質と成熟度の差が歴然としています。


竹内 明日香(たけうち・あすか)

日本興業銀行(現みずほフィナンシャルグループ)にて国際営業や審査等に従事後、2007年に独立し、海外向けに日系企業の情報提供を開始。2009年にアルバ・パートナーズを設立し、国内企業の海外事業支援と情報発信支援(プレゼンサポート等)を提供。東京大学法学部卒業。日本証券アナリスト協会検定会員

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