ホーム / Business / 経済 / 【ある女性経営者のグローバル視点】プレゼンテーション
【ある女性経営者のグローバル視点】プレゼンテーション

【ある女性経営者のグローバル視点】プレゼンテーション

翻って、外国(少なくとも欧米、そして東南アジアの国々でも)の授業では光景が随分と異なります。黒板がない教室、教科書がない授業も多く、先生から投げかけられたテーマについて、各人が考えて自分の意見を言うというものが主体になっています。人前で話す機会、そして議論を闘わせる機会が非常に多い。発言は秩序立っていないことも多く、手を挙げずに人の発言を遮って自分の意見を言うということも普通に行われています。
こんな人たちが、順序通りに黙って相手のプレゼンを聞くわけがありません。当然のように途中でどんどん質問もするし、自分の意見も言うのです。
企業の海外事業支援も行っている弊社は、帰国子女と留学経験者が多く、メンバー全員(11人)の海外経験年数を足し合わせると123年にもなるのですが、「日本と海外の違い」をテーマに話をしたところ、異口同音に、この日本と海外で自分たちが受けた教育の違いを挙げていました。
欧米の「対話式授業」の元祖を紐解くと、既にソクラテス時代から師と弟子のやりとりが行われており、これはかなり歴史が長いです。わたくしは中国の古典を研究する会も2年ほど続けていますが、例えば『論語』を読んでいても孔子と弟子たちの問答の箇所が多い。対して、日本の書物を読むと、例えば荻生徂徠などの時代からも、師が散文調に語っているものが主体のように思います。さらに江戸時代の寺子屋の絵などを見ると、整然と並んで、きりりと挙手している生徒が描かれていたりしますね。あの時代の先生の威厳は今より大きかったことを想像すると、恐らく今の学校授業のルーツとなるような師弟関係に基づいた教育がなされていたのではないかと思います。
日本式教育の下では、議論や反論はほとんど許されず、先生と生徒が緊張関係に立つことも滅多にありません。この方式の教育は、全体のレベルを一律に確保できるので、上司の指示に従うサラリーマンを産出すれば事足りた大量生産時代には、大いに日本の国力にプラスに働いたことと思います。しかしながら、今日必要とされる能力、例えば、現状を打開すべく試行錯誤を経て新しきを発見するという過程も、新しい発想でこれまでと違うビジネスモデルを創造するという余地も、いずれも阻害されてしまうように思うのです。もし教育予算を割くのであれば、真っ先に議論されるべきテーマであるように思います。「グローバル人材」という文脈の中では、子供の頃から英語力を上げる、大学入試でTOEICのテストを必須にする、などというような議論がなされますが、まずは一般的な国語等の教育から改めるべき部分があるのではないか、すなわち、意見を闘わせるような場を設定することから始めるべきなのではないか、と考えます。

プレゼンに議論を戻すと、受けてきた教育環境の違いが、ミーティングの成否を左右してしまいかねない事情を踏まえ、どんな場合にでも自分の意見が言える、勝負ができる日本人にならないと!と思うのです。
そのためにはどうすれば良いか?大前提には、上で述べた彼我の違いと己のハンディの所在を知ることです。また実際のプレゼンの仕方については、「プレゼン資料の作り方」のようなノウハウ本が多数出回っていますから、「サマリーを最初に載せて」や、「文字数を少なく」、数字や実績などを加えて「ファクトを前面に」、というようなテクニカルな内容は、ここではそちらに譲りたいと思います。
また、ディベート塾のような場も最近では少なからず開催されていますし、海外留学のチャンスがあるなら是非。仮になかったとしても、今ではオンラインで海外を含む一流大学の講座が無料で受けられるような素晴らしい時代になりましたので、若手の皆さんには是非そのようなところでご自身を鍛えていただき、次世代の日本を担っていただきたいと思います。
しかし、経営者の方々をはじめとするお忙しい皆様には、今から一から教育を受け直すことも、個人的にハンディを乗り越えるのも、これまた難しい話でしょうから、ここで、弊社にてご助言、サポートをしております内容を少しだけ紹介させていただきます。

〇先方の個社、業界、市場、規制、競合他社などについて事前に調査を重ね、先方が何を欲しているのかを研究しておくこと

>会社やその経営者が業界についての深い見識を持ち合わせているということが多少なりとも先方に伝わると、この会社と付き合っておいて損はない、と相手は考えるはずです。

〇その上で、想定される問答を考えて、答えについてはポケットを多数(レイヤーも替えて)用意しておくこと

>後はアドリブで。決してあんちょこを探さないように!

〇英語や中国語が少しできても、ネイティブに近くない限りはなるべく通訳を立てる。先方の言っていることがほぼ分かるのであれば、当方発言側だけでも利用すると良い

>通訳さんもできれば討論に強い通訳さんを雇う。

〇資料は、日本語の資料をただ英訳するのではなく、一から作り直すつもりで、細かいところにも配慮することを忘れずに。この際、弊社では日本語の段階からお手伝いさせていただけるようお願いしています。元の日本語が整理されていないと、それをさらに訳した物はさらに分かりにくくなってしまうからです。

>冒頭から順を追って説明する形の「日本型プレゼン」の資料を英訳すると、どうしてもそのプレゼン形式に則ってしまうので、自己をそこから無理やり「自立」させるためにも新たな目で資料を作り直すことが肝要です。

 もう少し細かいお話は、回を追ってお話しできればと思います。それでは今後ともどうぞ宜しくお願いします。


竹内 明日香(たけうち・あすか)

日本興業銀行(現みずほフィナンシャルグループ)にて国際営業や審査等に従事後、2007年に独立し、海外向けに日系企業の情報提供を開始。2009年にアルバ・パートナーズを設立し、国内企業の海外事業支援と情報発信支援(プレゼンサポート等)を提供。東京大学法学部卒業。日本証券アナリスト協会検定会員

Scroll To Top