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多摩大学経営情報学部長・久恒啓一教授『30代からの人生戦略は「図」で考える!』

図解思考が自らの未来を救う

人生80年越えにも関わらず、見えない先行き……不安に駆られて「このままではいけない」と、ビジネスパーソンは自分磨きに勤しむ。英会話、ビジネススクール、資格取得のための学校、留学……。学ぶ姿勢は重要だが、果たしてその方向性は、自らのキャリアとって正しいものだろうか。自分がすべきことは、自分が見えてこそ分かるもの。どうすれば自分が見えるのか。その有用な方法はどうやら「図」らしい。「図」を使って「未来」を考える書籍2冊が同時期に出版された。その著者たちに話を聞いた。

久恒啓一(ひさつね けいいち)
多摩大学教授。2012年度より経営情報学部長。NPO法人知的生産の技術研究所理事長。九州大学卒業後、日本航空株式会社に入社、人事、広報、経営戦略などさまざまな部署を経験し、早期退職。1997年より教育の世界へ。宮城大学事業構想学部教授を経て2008年より現職。主な著書に『図解で身につく! ドラッカーの理論』(中経の文庫)、『知的生産手帳DIY版』(東洋経済新報社)など多数。図解Web : http://www.hisatune.net

なぜ、図なのか

「論理的な事象はすべて図にできます」という久恒教授は、経済学であろうと、歴史学であろうと図にしてしまう図解思考のエキスパートだ。あらゆることを図で解説している。「日本の企業は文章コミュニケーションや箇条書きの情報整理で運営されています。しかし箇条書きでは各項目の重要さ(大小)や、重なり、関連性・因果関係を示すことはできません。文章とはごまかしの技術なんです。日本のサラリーマンは文章秀才が多いので、上司やクライアントを説得しようとしますが、話している側も、聞いている側も判然としないままで話を進めているケースが多々あります。一方で図は全体の構造と部分同士の関係が示せる。全体が見えるのです。それゆえ大きな議論ができます。本人が絶対に正しいと思い込んでいる意見も、図で表現すれば相対化されて、関係者全員が納得します」
文章は説得の技術、図は納得のコミュニケーションなのだ。

人生鳥瞰図を描く

「キャリアとは何かと問われて、明確に答えられますか。私は、キャリアとは仕事歴・学習歴・経験歴から成り立つと考えています。人は24時間、365日キャリアを積み上げているのです。しかし、キャリアの周囲には家庭もあり、趣味もある。すなわちライフデザインです。図で考えたとき、キャリアはライフデザインの中にあります。昨今言われるワークライフ・バランスは、ライフとワークを並列に扱っています。全体が見えていない考え方といえるでしょう」
人生戦略を立てるにも、図を描き全体を見ながら考えなければならない。久恒教授が提唱する方法は次のようなステップで進めていくものだ。

■Step 1
人生を振り返る地図を描く
=人生のテーマを発掘する

人生のテーマ 未来を描く前にまずすべきことは、自分がどこにいるのかを認識することだと久恒教授は言う。
「街中でも山でも地面に立っているだけでは自分がどこにいるか分からない。地図という図があるから自分の位置が分かりますよね。同様に、キャリアを考える上でも、人生を振り返る地図を描き、自分がどこにいるのかを確認するのです。自分を取り巻くさまざまな事象の相関が見えて発見があります」
生い立ち、出会い、出来事を思い返し人生の軌跡を振り返る。「例えば自分の名前の由来でもいいんです。自分を形成している一つですから。」その上で、自分の求める豊かさが何かを考える。そこから価値観が導き出されるという。価値観が見えれば、性格・関心・能力を鑑みて自分像が見えてくる。
「仕事を選ぶ上で、関心事(好きなこと)や能力(できること)は考慮しますが、性格については忘れられがちです。しかし、性格を考慮して適職を探すことは大事なことです。エニアグラムと呼ばれる性格分析テストは適職を見つけるにも、人間関係を考える上でも有用です」

■Step 2

ライフデザインを構築する

自分に合った仕事が見えたら、現在の自分のキャリアと照らし合わせ、キャリアのビジョンや将来の夢などを考えていく。
「自分像も適職も図にすることにより、自分自身で腑に落ちると思うのです。その上で、今会社で従事している仕事も図にしてみる。当然、ミスマッチが起こっている場合があります。マッチしていなければ転職を考えることも必要でしょう。逆にマッチしていれば天職だと決断することですね。
先にも述べたように、キャリアとは仕事歴・学習歴・経験歴の3つから成り立っています。図は大小を表せますから、自分にはどの歴が足りないのか、転職先にしろ、天職にしろ、その仕事に必要な歴は何かが見えてきます。自ずとキャリアのビジョンが見えるはずです」

図は進化する

目的地に向かっていても、時に道を見失い、または「本当にこの道で良かったのだろうか」と地図を見返すことがあるだろう。同様に、人生の地図である人生鳥瞰図を定期的に見直す必要があるという。
「自分が成長すれば、当然描く図も変わってきます。進化していくことが図の特性ともいえます。Step2からStep1に立ち戻り、再度Step2を考える。過去のことは変わりませんが、新たな出会いや出来事が増えたり、事象同士の今まで見えなかった関連性に気づいたりして、新たな発見があるはずです。
私は、人生125年で考えるよう提唱しています。孔子の論語は人生50年に当てはめたものでした。今、人生80年と考えると論語の1.6倍です。25歳~48歳まで青年期とみると、30歳はまだ青年期の前半です。いくらでも人生鳥瞰図を書き換えることができます」

鳥の目と虫の目を持つ

「よく『自分探し』をしている人がいますが、自分は作り上げるものであり、探すものではありません。ライフデザインは鳥の目を持ち、全体を見た上で考え実行するものですが、日々の業務は虫の目を持って実行すべきことです。キャリアは仕事、学習、経験を日々積み上げることで形成されていくものです」
地図を持っていても、遠くばかりを見ていては道を見失うということか。
「仕事に就いていても『つまらない』と感じている人は、本気で仕事に向き合っていないのではないか。つまらないからと他の仕事に関心を持つのではなく、自分の足元を深く掘る感覚が大事なのです。自分がいる場所で1番になる。本気になれば意外と難しいことではないのに、実行できていない人が多いですね」
鳥の目と虫の目を持ち、常に全体と部分で物事を考える。言葉にすれば簡単に思えることでも、実行できる人材があらゆる業界で欠けていると久恒教授は指摘する。
「全体最適を常に考えるには、図解思考を鍛えることが有用です。日々の仕事の現場で訓練を積んでほしいですね」


『30代からの人生戦略は「図」で考える!』
PHP研究所 1400円

文:羽田祥子、川口奈津子、松永理佐(編集部)

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