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【AS TIME GOES BY】LONG-DISTANCE SHOOTING 遠的

【AS TIME GOES BY】LONG-DISTANCE SHOOTING 遠的

 三本目の矢が放たれつつある。無論、アベノミクスの話だ。一本目は「大胆な金融政策」、二本目は「機動的な財政政策」で、この二本の矢は「近的(きんてき)」を目指して既に宙を舞っている。 
 三本目の矢が狙う先は最も遠い的である。

 三本目である「民間投資を喚起する成長戦略」が目指すのは持続的な日本経済成長であり、重点分野は多岐にわたる。
主なものだけでも1. 規制改革の推進、2. イノベーション/IT政策の立て直し、3. 経済連携の推進、4. エネルギー政策の構築、5. 地球温暖化対策の見直し、6. 産業の新陳代謝の円滑化、7. 若者・女性の活躍推進、8. 攻めの農業政策の推進、9. 資源確保・インフラ輸出戦略の推進、10. クールジャパンの推進、といった具合だ。
 ただ、一本目、二本目とは異なり、三本目の対象である民間は思惑通りにはなかなか踊らない。いままでのようにもっともらしい言葉の羅列とそれに紐づいた国家予算の計上だけでは、「いつか来た道」で誰の心にも響かない。抽象的な耳触りの良い未来像ではなく、具体性を伴った進むべき道を示してほしい。
「日本の喫緊の課題は何か」と、寿司屋で隣合わせたスイス人に尋ねたら、間髪入れず「少子化(低出生率)」と返ってきた。経済成長とは凡そ人口ボーナスの恩恵であり、少子化は確実に国力を弱めていく。他の成熟国は早晩、日本と同様に少子化への道をたどるだけに、日本が国家の存亡をかけてもがく姿には外からの耳目が集まっている。
 第二次ベビーブーム(1970年から1974年出生)の世代もすでに40歳前後で、残念ながら米国のような「第三次ベビーブーム」が起こらなかった。今後の選択肢として少子化対応施策のさらなる拡充、あるいは文化摩擦を乗り越えて大勢の移民や外国人の受け入れということも検討課題であろうが、世代人口の不均衡を是正するのはもはや非現実的にみえる。そろそろ少子化の解消や移民受け入れが機能しないという前提に立ったうえで、第二次ベビーブームの3分の1の出生数(2050年時点)で国を支えるというワーストケースでの国家像を考えることを優先すべきだろう。
 具体策として、少子化で活力減少の日本のセーフティーネットとして、「全自動国家」を目指すというのはいかがだろうか。物流、製造業、農業生産、交通移動、電子政府に至るまで、ありとあらゆる分野で全自動を目標とするものだ。成長戦略の抽象的な案に、「全自動」を枕詞にすれば、何かがみえてくる。全自動のための規制改革、全自動のためのイノベーション政策、全自動による温暖化対策、全自動社会の実現による女性の活躍推進、全自動技術による攻めの農業政策の推進、等々である。全自動が上からの掛け声で霧散しないように、現場技術者の発想を最優先とするのは論を俟たない。全自動が引き起こす影の側面を指摘する声も上がるだろうが、グローバル競争の中で日本株式会社を輝かせるためには、光の側面に焦点を当ててほしい。
 三本目が的中したかどうか、判定するタイミングは2020年であろう。この年度は基礎的財政収支(プライマリー・バランス)黒字化の必達期限だ。加えて東京オリンピックが開催される可能性は高い。1964年の東京オリンピックが新生日本の扉を世界に向けて開いた。その「テレビ・オリンピック」から56年、2020年も再び世界を驚かすことができるのか。4K/8Kの超高解像度を誇る100インチの大画面を通して、世界が「美しい」日本と東京をつぶさにみる。たとえ日本メーカー製のテレビ受像機が消えていたとしても、日本ブランドの再興にはまたとない晴れ舞台になる。

 さて、三本目が的を外れると日本には次がないのであろうか。
 希望はまだある。モントリオールオリンピック(1976年)でクレー射撃日本代表であった麻生太郎財務相が、遠い的をさらりと撃ち抜いてくれることだろう。前衛が倒れたとしても、二段・三段撃ちで歴史が変わったこともある。


文:本丸達也(発行人)

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