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実践サバイバル投資術「極意1 バブルを知り、ショックに備えろ」

 退職金を手にして本格的な株式投資を始めたものの、金融機関で勧められるままに投資信託を購入。その後、2007年のパリバショック、2008年のリーマンショックで運用資産は大幅減。外債投資で取り返そうと思ったが、ユーロ危機と超円高で大きな損失を被った……。
 団塊世代の大量退職の裏側で、こんなことが起きている。
「投資なんて他人事。私には関係ないな」などと思っている方も、退職や相続でまとまった資金を手にした途端に同じ轍を踏むことになるだろう。金融機関の売り子も騙すつもりで販売していたわけではないと思われる。ただ、従来の投資理論に従えば、「長期」、「分散」、「リバランス」がキーワードなので、銀行や証券会社の窓口で似たような投資商品を購入することになる。その結果、バブルのピークでは「投資って簡単だね。もしかしたら自分には投資の才能があるかも」と有頂天になる一方、バブル崩壊の市場ショックではまず例外なく大損することを繰り返す。今回も同じだったというだけのこと。

バブルとショックを
想定していないから失敗する

 金融商品の多くは資産のパフォーマンスが正規分布に従うことを前提に設計しているが、実体経済はもっと極端な値の発生頻度が高い「べき分布」(正規分布よりも裾野が広く、極端な値の発生頻度が高い分布)であることが分かっている。「なぁんだ、それだけか」と思ったかもしれないが、実はこの違いには大きな意味がある。正規分布を前提に考えていると「100年に一度」しか起こらないといわれるような事象も、べき分布を前提とするなら「10年に一度ぐらい」は起こることになるのだ。
 このことは、リーマンショックの時に日本人がなんとなく感じたことと一致する。欧米では「100年に一度」という表現が多用されたが、1990年の日本の株・不動産バブル崩壊、1997年のアジア通貨危機、2003年の「りそなショック」などを考えると、バブル形成と崩壊による市場ショック=相場の大きなうねりは「実はよくあること」なのだ。さらに言えば7年から10年周期のバブルの合間に、自然災害やテロのような突発的なショックも我々を繰り返し襲ってくる。多くの投資家は、このバブルとショックを想定していないから必然的に失敗することになる。
さらに、経済のグローバル化の結果、投資先を分散するだけでリスクを軽減できる時代は終わった。一昔前までは、例えば日本株と香港株、米国株は相関が限定的で、値動きの方向が異なっていた。つまり日本株が下がっても、他は下がらなかったり、逆に上がったりして損失を減らすことができたわけだ。ところがリーマンショック、東日本大震災、ユーロ危機で確認されたように、平常時には分散投資の効果があるように見えても、本当にお金を守る必要があるショック時には資産がほとんど同時に暴落するのだ。これではたとえ投資対象を分散してもリスクを減らすことはできない。

2回のバブルで
人生の明暗を分けることも

 例えば、あなたが50年程度は資産を運用するとしよう。バブルと市場ショックの原因となる大きな景気の波なら約10年に一度程度なので、5回はバブルと市場ショックがあることになる。この5回のバブルをいかに乗り切るかで、あなたの人生はまったく違ったものになる。
 もっとも悲惨なのが、前述のように投資経験を積まないまま退職金の運用を始め、大きくやられてしまう場合だ。退職後に資産運用する期間を10年から20年とするなら、バブルは1回かせいぜい2回。投資の基本を知らないでバブルに踊り、その崩壊に伴う市場ショックで資産の大半を失ってしまったら、人生の苦労の賜物が吹き飛ぶだけでなく、余生はとても暗くなってしまう。バブルと市場ショックを想定しない今までの投資常識が、いかに無謀であるか分かる。

突発ショック=政情不安、
大災害による大混乱に備える

 もうひとつのショックが突発的な出来事(突発ショック)だ。大規模な天災、戦争、革命、テロ、大事故などがこれにあたる。予測は不可能で、前兆があってもまず分からない。1953年のスターリンショック、1971年のニクソンショック(金・ドル交換停止)、1970年代の2度の石油ショック、1989年の天安門事件などの政情不安、1997年アジア通貨危機、2011年の東日本大震災など相場の大混乱を引き起こした突発ショックの例は多い。

バブルもショックも乗り越えて

日本株と他国株の相関性

 各国政府が実物の裏付けのない通貨の切り下げ競争を繰り広げる一方、自由貿易協定などを含め経済のグローバル化はますます進んでいる。今後は、ますますバブルは巨大になり、崩壊時のショックも大きくなるだろう。
 また、財政破綻のリスクが増大しているにもかかわらず、日本の国債や日本円の価値も本来の価値から大幅に乖離した価格になっているようだ。この見方が正しいなら、そう遠くない将来の崩壊時には桁違いに大きなショックを伴うことになる。
 さらに、東日本大震災以降、日本では大地震や噴火などの自然災害による突発的なショックの可能性が大きく高まっている。従来の投資法ではショックに脆弱で、いざという時に備えることができない。
「このままでは多くの方が、また同じ過ちを繰り返して大きな損失を被ってしまう。自分はこの業界に25年もいるのだから、できることから声を上げていこう!」
 そう考えて、2011年10月に『勝ち抜け!サバイバル投資術』(実業之日本社)を出版した。次号以降では、読者の皆様が次の巨大バブルの崩壊や、さまざまな突発ショックをサバイバルし、ついでにそれを逆用して儲けられるような方法をタイムリーに提案していきたい。


バブルで儲け、暴落から身を守る 勝ち抜け!サバイバル投資術バブルで儲け、暴落から身を守る 勝ち抜け!サバイバル投資術
証券業界で生き抜いてきた著者だから書ける「投資の嘘・ホント」。一般論的な警告ではなく、具体的にこれからどのようなことが起こり、どう対処すればいいのかまで踏み込んでいる。投資上級者も入門者も必読の1冊。
実業之日本社
ISBN978-4-408-10911-4
1500円(税別)

土居雅紹(どい まさつぐ)土居雅紹(どい まさつぐ)
eワラント証券株式会社COO。CFA協会認定証券アナリスト、証券アナリスト協会検定会員。1964年静岡県生。88年一橋大学卒業後、大和証券入社。証券アナリストとして活躍。93年米国ノースカロライナ大学経営学大学院にてMBA取得。大蔵省財政金融研究所などを経て、ゴールドマン・サックス証券へ。00年同社でeワラントを開発・導入。11年8月より現職。時代に合った投資方法を研究、その分析力には定評がある。

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