ホーム / Business / 経済 / 【AS TIME GOES BY】BIG DATA DECADE 備えあれば憂い少なし

【AS TIME GOES BY】BIG DATA DECADE 備えあれば憂い少なし

BIG DATA DECADE
備えあれば憂い少なし

「タイムラインへようこそ」
 
 フェイスブックがタイムライン表示へ強制的に切り替えた。誕生から学校の卒業、2011年、2012年と時間軸で、そんなにドラマチックでないわが人生をハイライトされると、この先、何十年分を記録「させられる」のだろうと気分が暗くなる。紆余曲折を経た分身がディスプレイに映されるのはそう気持ちがいいものではない。自分ストーリーは刹那の間、繕うことができるかもしれないが、永劫の存在証明には陳腐だろう。おそらく筆が重くなっているのは私だけではあるまい。
 
 IT業界にはあうんの呼吸で大合唱が始まるマーケティングキャンペーンが存在する。おおよそ米国の西海岸か東海岸から、響きのいい、やや霞がかかった意味合いの言葉が太平洋と大西洋を渡り、世界に伝搬する。一定の期間、同じフレーズを連呼するのは、既存のIT生態系を維持するのに最も適した方法だと学習した結果であろう。
 
 昔を紐解けば、C&C(Computer and Communication)は1977年にNECによって提唱されている。当時としては、斬新なコンセプトである(何か香ばしい気がしたら、それはおそらくカレー屋だ)。現代では大部分のコミュニケーションがコンピュータ間のスマートネットワーク上に置き換えられた。対人伝達で音声を発している絶対量が減っているので、声帯が退化しないかと時々心配になる。
 
 流行り言葉の変遷を見る。マルチメディア、クライアント/サーバ型システム、NGN(Next Generation Network)、ユビキタス、オープンソース、Web2.0、P2P、SaaS、仮想化、クラウド・コンピューティング、スマート等々、どこかで聞いたことがあるような言葉が並ぶが、職業として関係しない限り聞き流すことができた。
 
 現在、ITエクセレントカンパニーがお熱なものは「BIG DATA」である。ただし、今回は正しく把握する必要がありそうだ。なぜなら、あなたのライフ(生活、人生、生命)に直接影響するからだ。
 
 いままでの仮想世界はサンプリングで成り立っていた。限られたコンピューティングリソースを効率的に利用するために、特定の人、特定の時間、特定の動作、特定の分野等々、分析対象を絞り、ターゲットをグループ化していた。10歳ごとに分けた年齢や性別、住む地域を軸とした分析がわかりやすい例だ。
 
 他方、BIG DATAは大げさに言えば、森羅万象や人間行動の全てを対象とする。太陽の黒点活動や特定周波数における電波の到達距離、世界的な気候変動、交通渋滞を引き起こす移動体の位置情報、コンピュータネットワーク上の混雑量、食糧生産量、各家庭での電気使用量、経済指数やお金の流れ、個人の位置情報や健康情報、人と人との膨大なコミュニケーションログ、ウィルスの変異パターンなど、少し前までは無駄、無意味と思われるものを含めてあらゆるものを時系列でデータ化する。
 
 蓄積したデータを人の仮説を元に分析するのではなく、多くは高度なアルゴリズムで自動的に分析するので、意外な相関関係や因果関係が見つかることもある。地球上における課題をどのように解決できるか、BIG DATAとコンピューティングリソースには期待が大きいが、反面、人の一挙手一投足を把握するだけに、個人情報セキュリティにおいても考慮が必要だ。
 
 近年、小中学校の授業で、IT機器をどのように使いこなすかを、簡単なプログラム構築やサイト制作を含めて教えるようになった。今後はさらに「BIG DATA」そのものにどのような可能性と懸念点があるのかを、子供のときから基礎教養として学ばせる機会を設けるのも一案だ。
 
 年齢、時間、場所、気温や湿度などを分析軸に用い、事象としては、視聴したテレビ番組や時間、使ったお金と内容、給食の献立とその栄養素、友達と話した会話、トイレの利用数、蛇口の開閉数などあらゆるものを対象とする。膨大なデータを蓄積し、抽出し、分析し、匿名化し、センシティブな情報を無毒化した上で見える化するための手法と、個人の小さな行動から世界的な大きな流れを読み取る大局観、その両者を体得する訓練をすると、不確実な情報に惑わされないデータオリエンテッドな考え方が身につく。
 
「あなた」が素晴らしい人であることを、もちろん身内の方はご存じだ。だが、データから作られる「あなた」もまた、他者・他コンピュータから見た「あなた」そのものである。
 
“Who am I?”自身そのものである内部からも、他者からの目線で外部からもと問い続けることが自らを守り、自らを伸ばすことにつながる。
 
 BIG DATAには大きな可能性がある。効率的な社会制度の基盤づくりに寄与するとともに産業の新たな稼ぎ手となるには、国全体での攻防両側面の教育と利用のためのコンセンサスの醸成が早急に求められている。


発行人 本丸達也

Scroll To Top