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大和ハウス工業とソニーCSLが公開実験 ゲーム感覚で家電機器を制御する

 大和ハウス工業とソニーコンピュータサイエンス研究所(以下ソニーCSL)は、スマートハウスのアプリケーションを利用して、ゲーム感覚で家電を制御、「楽しく節電」を実現する公開実験を7月8日、9日の2日間で実施。それに先駆け、会場となるD-TEC PLAZAにて報道陣に公開された。
 自宅のテレビ、ブルーレイ、カメラ、エアコンなどの家電機器がアニメキャラクターとなって、機器のコントロールや省エネのアドバイスをするスマートフォン用アプリケーションを使用する。ストーリー仕立てになっており、スマートフォンがリモコンの役割を果たしつつも、ゲームで遊んでいる感覚も楽しめる。

楽しく省エネ

大和ハウス工業取締役常務執行役員で、同社総合研究所所長であり、環境エネルギー事業担当でもある濱隆(はま・たかし)氏

 最初にあいさつに立った大和ハウス工業の取締役常務執行役員で、同社総合研究所所長であり、環境エネルギー事業担当でもある濱 隆(はま・たかし)氏は今回のコラボレーションに関して次のように述べた。
「言いたいことは一つ。『楽しく省エネを進めていきたい』。(大和ハウス工業は)消費電力などを瞬時、1時間前、1カ月前、1年前と表示できるシステム『ヘムズ(Home Energy Management System:以下HEMS)』を利用して、住まいの『見える化』を進めてきました。しかし、ただ見ることができるだけでは飽きてくるのではないか。実際に利用する、つまり家で長時間過ごす主婦や子どもたちに楽しんでもらえるようなサービスが必要ではないかと考えました。そこで、経済産業省クールジャパン室に紹介されたのがソニーCSLさんでした」。
 続いて登壇したソニーCSL代表取締役会長・所 眞理雄(ところ・まりお)氏は、30人ほどの同社社員を「いつも変わったことばかり考えている奇人変人」と説明。コンピューターを使っているものであればすべてが開発対象であるとし、その中で出てきた「生活空間エンタテインメント」のコンテンツ開発には実際に行うことができる「場」が必要であったと述べた。
 経済産業省クールジャパン室が間を取り持ち、話が持ち上がったのは約2年前だが、実際に合同研究に入ったのは半年くらいだという。

「見える化」から「いじれる化」へ

 プロジェクトの基礎となるのは、大和ハウス工業がもつ生活関連コンテンツ「住宅API(機器制御開発ツール)」とソニーCSLがもつゲームコンテンツ「Kadecot(カデコ、ゲーム開発ツール)」を組み合わせることによって可能となる、新たなコンテンツ開発環境の提案だ。住宅APIを搭載したホームサーバーとKadecotを搭載したスマートフォンが通信することによって、家庭内の家電・設備・AVネットワークを制御できる。
 平成21年度のスマートハウス実証プロジェクトで開発された住宅APIは、ユーザーが求めるサービスを開発するため、メーカーや機器の違いを意識することなく利用できるソフトウエアだ。大和ハウス工業が15年にわたって研究・開発を進めてきたスマートハウスの普及を促進する打ち手でもある。しかし、実際はネットワーク対応商品が少なく、ユーザーが欲するサービスを提供できているとは言えない。大和ハウス工業の技術本部総合技術研究所・吉田弘之氏はその理由を「ユーザーが欲しいサービスには楽しさ・エンタテイメントという切り口が必要だと考えました。しかし、技術屋にはなかなか思いつかないのです」と語った。
 一方で、「生活空間エンタテインメント」を掲げて研究・開発を続けていたソニーCSL側は、生活空間の中にある「家電」に注目した。ソニーCSLのアソシエイト・リサーチャーで情報理工学博士・大和田茂氏は、「家電は機能性と娯楽性が同居していて面白いと思いました。機能というサービスを提供するとともに、気持ちに訴えるものがある。また家電をつなぐことで従来よりさらに大きなサービスを提供することもできます。大げさに言えば、家電は機能性もあるゲーム機ということができます」。
 両社の思惑が重なり実現した今回のプロジェクトを大和田氏はこう説明した。「本プロジェクトの最大の特徴は開発ツールのオープン化です。ユーザーが自分でゲームなどのアプリを開発し、プラットフォームにアップし、他のユーザーがそれをダウンロードして楽しむことができます。さまざまな人がネットワークをいじれる『いじれる化』を進めて行きたい」。メーカーが作成するコンテンツと一般ユーザーが作成するコンテンツが混在する場が提供されるのだ。
 今回の公開実験で披露されたのは「萌家電」と呼ばれるソフトウエアで、各家電が萌えキャラに擬人化されている。またキャラクターの声は声優が担当する。なかでもブルーレイに扮(ふん)する水瀬いのりは「萌家電大使」に任命され、秋に公開を予定する同ソフトを広める一端を担う。

扇風機とデート!? ゲーム感覚のストーリー選択

 まず帰宅してKadecotソフトを立ち上げると、家電が擬人化したキャラクターがスマートフォンに取り込まれ、家の家電情報を読み込む。この情報によって、遊べるソフトの種類やゲームのステータスが変化するという。
 例えば、かわいい女性の扇風機のキャラクターを選ぶと、遊園地に一緒に来ている設定になり、「何に乗る?」と聞かれる。選択肢は「ジェットコースターに乗る」「メリーゴーラウンドに乗る」の2つで、ジェットコースターを選べば強風、メリーゴーランドを選べば弱風で扇風機が回り始める。
 扇風機とエアコン両方での使用電気料が設定した金額より下回ると、2つのキャラクターの恋物語が進んでいくという設定もある。
 また、行動履歴からさまざまなサービスが付加される。ある映画のDVDを観たとすると、キャラクターがその映画のサントラが発売されているといったリコメンド情報を教えてくれる(会話としては、キャラクター同士の会話)。リコメンドによってサントラCDを実際に購入すると、キャラクター間の絆が強まったとして、新しい服などのインセンティブがもらえる。
「萌家電」だけでなく、登場キャラクターがすべてブタの「ブタ家電」や子ども向けのキャラクターを使用したソフトも開発中で、キャラクターを一般ユーザーが作ることもできるようになる。
 現在対応しているのはアンドロイド端末のみ。

課題は規格の標準化

 楽しんで省エネするシステムには課題もある。各家電の通信規格だ。現在家電メーカー各社は、異なる通信規格を採用している場合が多い。通信規格が異なるとネットワーク形成ができない。せっかく楽しいアプリがあっても「テレビは対応しているがブルーレイは対応していない」「洗濯機は動かせるが冷蔵庫はだめ」といったことが起こるのだ。これではユーザーに満足してもらうサービスは提供できない。「各メーカーに訴え続けている」(濱氏)が、さまざまな事情が絡み足並みをそろえることは容易なことではない。現在は東芝ホームアプライアンスが対応している。今後、メーカーの枠を超えたネットワークをいかに築いていくかが、プロジェクトの成功、スマートハウスの普及への鍵となる。


文:川口奈津子(編集部)

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