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20XX年 宇宙の発電 テクノロジーが可能にする夢の宇宙太陽光発電

地球の地軸には傾きがあるため、地球上で夜の時間帯に入っても静止軌道上には太陽光が当たり、24時間発電が可能になる © JAXA

宇宙太陽光発電システム(SSPS:Space Solar Power Systems)

日本政府は、今年6月に策定した宇宙基本計画の中で、宇宙太陽光発電を研究開発プログラムの一つに定めた。宇宙太陽光利用システムとは、宇宙空間で太陽光により発電したエネルギーを地上に無線伝送し、地上で利用するシステムである。1968年、米国の研究者によって提唱され、日本では80年代から研究が続けられていたSSPSが、環境問題や資源枯渇への危機感などを受けて、今、クローズアップされている。
SSPS構想では、高度約3万6000キロメートルの静止軌道上に、大型の反射鏡、太陽電池、送電アンテナが配置された太陽光発電衛星(電力プラント) が設置される。3000メートルにも及ぶ反射鏡で太陽光を効率的に集め、太陽電池によって発電。そのエネルギーを、マイクロ波やレーザーなどの電磁波で地上に伝送する。構想では、1つの衛星によって原子力発電所1基分に相当する100万kWの発電を想定している。
現在JAXAで開発が進んでいる「マイクロ波」と「レーザー」の2つの伝送タイプのSSPSの特徴を見てみよう。

レーザータイプのSPSS(L-SSPS) © JAXA

レーザータイプ(L-SSPS:Laser Space Solar Power Systems)

マイクロ波タイプの大きな特徴は、直径長径3500メートルに及ぶ2機の巨大な楕円形の反射鏡だ。これを使って 太陽光を太陽電池に集光し、発電したエネルギーをマイクロ波に変換して地上の受電プラントへ送る。受電プラントも直径2000メートル程度と巨大。レクテナと呼ばれる整流機能付きのアンテナを敷き詰め、そこで受けた電波を再び電気に変換し供給する。マイクロ波タイプは、送受信用の設備が大規模になるところが難点だが、マイクロ波はテレビの電波やETCに使われる電波などと同様に波長が長いため、大気中の分子による拡散の影響を受けずに、効率的にエネルギー を地上に送ることができる利点がある。

マイクロ波タイプのSPSS(M-SSPS) © JAXA

マイクロ波タイプ(M-SSPS:Microwave Space Solar Power Systems)

レーザータイプの発電プラントは、集光鏡、レーザー発振部、放熱板からなる基本ユニットを縦に長く並べた構造を している。集光鏡に集められた太陽光は、レーザー発振部で直接レーザーに変換して地上に送ることができるため、レーザータイプは非常に効率的だ。地上で受 光されたレーザーは、電力に変換するとともに、燃料電池の燃料となる水素の製造に活用することも検討されている。ただ、レーザーの波長は短く、地上に送る際に雲などの大気中の分子の影響を受け電磁波が拡散してしまう点が懸念されている。

宇宙なら、24時間365日

地上での太陽光発電の弱点は、天候や気候風土による供給の不安定さと言えるだろう。宇宙太陽光発電は、その弱点を一気に克服することができる。宇宙太陽光発電の発電プラントが配置される地上3万6000キロメートルの静止軌道上には、天候の変化がないことはもちろんのこと、昼夜・季節に関係なく24時間365日、常に発電し続けることが可能だ。また、宇宙空間には地上で太陽光を散乱させたり反射させたりする空気や 水などの分子がほぼ存在しない(宇宙から太陽を見ると、光が直接目に届き、痛いほどギラギラと輝いて見えるそうだ)。そのため、宇宙空間で得られる太陽光 エネルギーは、地上の10倍にもなるという。この効率性が、宇宙太陽光発電の最大のメリットである。
また、空間の制約が少ないところも宇宙太陽光発電のメリットと言えるだろう。火力・水力・原子力発電所の建設が与える環境負荷は様々なメディアで報道される通りで、自然エネルギー発電は、それに必要な広大なスペースと電力利用地への効率的な送電の両立は困難を極める。宇宙太陽光発電ならば、膨大な宇宙空間と伝送技術を使い、環境負荷とスペースを最小限に抑えたクリーンな発電が可能となるのだ。


文:永野 幸(アクビ・インタラクティブ)

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