世界を代表する都市として、様々な文化や人種が集まる米国・ニューヨーク。政治、経済、金融、ファッション、アート、エンターテインメント……あらゆるトレンドが発信される世界都市で、輝きを放ち続ける女性建築家・後藤ステファニー朗子。彼女が手掛けた"仕事"を紹介する。
text: 加藤紀子(編集部)

上:自然の風をイメージして作った、固めた布地でできた波打つ天井。壁もこの柔らかいうねりでできており、天井に対して床は黒地で、だんだん上に向かって白くなるグラデーションになっている。"光の間仕切り"は、17400本のウォーター・ボトルにLEDを使って作られており、壮観だ
下:地下のバーは木の葉が組み込まれた透明レジンのカウンター

巨匠の下で経験を積み独立

 日本のみならずアメリカでも料理の鉄人として知られる森本正治氏。ロバート・デ・ニーロらとの共同経営でオープンした日本料理レストラン「NOBU」の開店に携わり、実質的な総料理長となった彼は、世界一採点が厳しいとされるニューヨーク・タイムズの料理記者から絶賛された。この森本氏が2006年、NYマンハッタンのチェルシーに開店したレストラン「Morimoto」は、建築の巨匠である安藤忠雄氏がデザインしたことでも大きな注目を浴びた。
 このプロジェクトをクリエーティブ・ディレクターとしてコーディネートしたのが、新進気鋭の女性建築家・後藤ステファニー朗子氏だ。
 コーネル大学で建築を専攻、1997年から6年間、東京国際フォーラムをデザインしたことでも有名な建築家ラファエル・ヴィニオリ氏に師事した。リンカーンセンターのコンサートホールやコロンビア大学など数多くのプロジェクトに従事した後、デイビッド・ロックウェル氏の事務所にプロジェクト建築家として参画。レストランなどの商業的施設の建築に携わった。
「ヴィニオリ氏の下でビルの建築を学んだ後、ロックウェル氏の下で商業施設を経験できたことはとても勉強になりました。商業施設の建築は、ホスピタリティが重要な要素です。ビジュアルなもの-デザインや家具、内装など-を建設的な観点でトータルに見ていかなくてはいけないからです。私にとってそのすべてを経験できたことは、本当に幸せでした」。

「Morimoto」が開いた仕事の扉

 2004年、独立のきっかけとなったのが、Morimotoだった。Morimotoの仕事をして様々な仕事の扉が開けた、という。
「独立して5年が経ち、レストランを10軒手掛けました。でもレストランのスペシャリストになろうとは思っていません。商業施設だけではなく、文化的な仕事もやりたいし、普通の家もやってみたい。自分のアイデアやデザインを押し付けるのではなく、お客様と話しながら、ライフスタイルや嗜好をよく理解した上で造っていきたいですね」。
 自分が考えて建てたものが、次の世代にも残っていく。そこで代々多くの人々に自分のレガシーを経験してもらえるというのが建築の醍醐味。
「仕事がうまくいっていなくて落ち込んでいる時、デザインやアートに触れて元気になってもらう。クリエーティブ・パワーを見て、力を得てほしい。特に女性の創造力は凄いと思います。だから日本も、次世代は女性がデザインのリーダーになってほしいですね」。

高級木材がふんだんに使われ、シンプルかつクールな雰囲気である

後藤ステファニー朗子

ラファエル・ヴィニオリやデイビッド・ロックウェルらの下で経験を積み、2004年に独立。建築だけでなく、商品やグラフィック、内装など、トータルな空間クリエイションがコンセプト。安藤忠雄、"料理の鉄人"森本正治とのコラボレーションによるMorimotoや、ChristianLiaigreとの協業によるBUDDAKANなどのプロジェクトに携わる。現在はNY、ロサンゼルス、アジア諸国のレストラン、個人住宅、コンドミニアム、ホテルなどを手掛ける
「Morimoto」
www.morimotonyc.com
88 10th Avenue (bet.15th and 16th Street)
212-989-8883